優良ファンド契約破棄問題、その裏に潜む金融危機第二幕|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/12/9(水)  
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優良ファンド契約破棄問題、その裏に潜む金融危機第二幕

商業用不動産の下落は、金融危機の2番底

米国最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金カルパースは、世界有数の資産運用会社ブラックロックと結んでいる不動産投資顧問契約の破棄を検討しているとのことです。カルパースはブラックロックからの助言に従った投資で資産を大幅に減らしており、契約破棄の公算が大きいと指摘されています。

カルパースは、ニューヨーク市マンハッタンの高級住宅プロジェクトなど、ニューヨークの巨大な開発を手がけ、巨額の資金を投じました。その後これらの不動産価値が暴落し、カルパースの不動産向け資産は約40%も減少しています。ただし、カルパースの運用資産の中で不動産向け資産が占める割合は全体の7%程度です。



カルパースと言えば、手堅い運用で有名であり、世界の資産運用会社の模範的な立場にある会社です。一方のブラックロックも、昨年の金融危機を乗り越えた優良会社と言われていました。今回の問題で注目すべきことは、単に両者のいさかいということではなく、「商業用不動産が問題を持ち始めてきている」ということだと私は思います。

商業用不動産の価値が半減してくることで、そこに貸付をしている銀行に大きな問題が広がる可能性があります。住宅ローンからスタートしたサブプライムショックから立ち直りつつある欧米の銀行が、商業用不動産価格の下落で再びひっくり返るような「2番底」も大いにあり得るでしょう。

FORTUNE誌やBusinessweek誌などを見ても、この商業用不動産の崩壊によって次はどの銀行がひっくり返る可能性があるのか、米国内でも関心が高まってきているのが伺えます。1度は金融危機から浮上した銀行が再び海に沈められそうになっている、という非常に危険な状況になりつつあります。

また商業用不動産の崩壊は、欧米の銀行への影響だけに留まりません。例えば今ドバイで起きている信用不安なども同じ問題として捉えるべきだと私は思います。


●商業用不動産下落の影響を受けたドバイ

先月25日、中東のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国政府は、政府系の持ち株会社のドバイワールドと、傘下の不動産開発企業ナキールの債務の支払いの猶予を債権者に要請する方針を明らかにしました。これを受けてバーレーンに拠点を置くサウジアラビア系のガルフ・インターナショナル・バンクは26日、近く予定していたドル建て債券の発行を延期すると発表しました。

全体としては、ドバイワールドやナキールなどドバイ政府系企業の債務を全て足し合わせると、ドバイ政府が抱える債務は約5兆円になります。代表的な幾つかを下の表に列挙しましたが、これらドバイの信用不安を受けて、まず欧州に影響が出始めています。HSBCやBNPパリバなどドバイに貸し込んでいる金融機関が多く、株式市場の時価総額4~5%ほど下落しています。



今後、こうした影響が米国・アジアへと世界的に広がっていくという不安もあると思いますが、私はそれほど心配していません。というのはアブダビ政府がドバイの負債を抱えてしまえば、それで問題は解決するからです。アブダビ政府にとっては、5兆円くらいの金額であれば数日分の石油で賄える規模ですからそれほど痛手でもないでしょう。

アブダビもドバイも同じアラブ首長国連邦に属していながら、これまでは犬猿の仲でした。アブダビから救済を受けて傘下に入るというのは、ドバイにとっては屈辱的なことだと思います。しかし今は、それを受け入れるしか道はないでしょう。

ドバイの産業別GDPに占める割合を見ると、小売業(約35%)・製造業(約15%)・不動産関連業(約15%)で、石油採掘業は5%にも満たない割合です。今はもうかつてのようには石油が出ないのです。だからこそ石油に依存しない状況を作ろうとして準備していたのですが、残念なことに橋を渡る前に落ちてしまったという状況です。あと数年あれば何とか形になったかもしれませんが、その前にサブプライムショックを受けてしまったのですから、不運といえるかも知れません。



ドバイの産業状況から判断してもアブダビからの救済が最も現実的ですし、世界経済への悪影響を考えても今のタイミングでアブダビからの救済を受けるべきだと思います。今回のドバイ政府の発表は、単に支払いを来年の5月まで延期してほしいという程度のものです。しかし過去にアルゼンチン政府のデフォルトなどを経験している世界経済は、過剰に反応している節がありました。それもアブダビ政府による救済検討の発言で落ち着きを見せているわけですから、この流れに素直に従うべきだと私は思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

11月29日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第120回 『今回の金融政策は「量的緩和」なの?』

先週、日銀は新しい「金融緩和策」を考案し、実行しました。政府や世間は「量的緩和」を期待していたので、少し「がっかり」という感じではありましたが、市場では円も少し安くなるなど一定の評価をしていると考えらえます(まぁ、円安は米雇用統計の影響ではありますが・・・)。

今回の日銀による金融政策は「無担保コール翌日物」ではなく、いわゆる「ターム物」といわれる「3か月物金利」を0.1%に誘導しようという政策です。つまり、「金利」をターゲットとする政策なので、伝統的な金融緩和政策と同じです。しかし、「翌日物」ではなく、「3か月物」というところがミソであり、より長い期間の金利を誘導することができるという点で優れているといえます。

そもそも日銀の金融政策は「純粋期待仮説」という学説を想定しているので、短期金利を誘導することにより、それがより長めの金利に徐々に波及し、長期の金利を誘導できると考えています。現実的か否かは議論の分かれるとことではありますが、今の中央銀行システムは、どの国でもこのような考え方によって政策運営を行っています。したがって、学説通りであるとすれば、量的緩和のようなデメリットの多いやり方よりも、今回のやり方の方が効果的といえます。

また現状、年末や年度末を控えて、資金が取れない事業者へ効果的に資金供給を行うためにも、この「3ヶ月」というのが効果的ということなのだと思います。とはいえ、少し穿った見方をすれば、現在、補正予算論議が活発化している中、財政規律が乱れるかもしれないということで、より長めの金利についても低め誘導できるのか否かを確認したいという意向があるのかもしれません。

もし、そうだとすると、日銀の考えは「いささか甘い」ということなのでしょう。10年新発国債の利回りは12/1に1.190%だったものが、週末には1.290%と約0.1%上昇してしまっています。まぁ、これは「量的金融緩和を期待していた反動」という感じなので、この「ターム物の金融政策が効かない」という意味ではないのでしょうが、財政的なバラマキを金融政策で何とかしようしても無駄ということを如実に表しているといえます。

今回の金融政策は「量的緩和」とは違い、あくまでも「金利政策」ですから、(藤井蔵相は否定していますが)補正予算を赤字国債によって行おうと考えている政府の目論見はうまくいかないと考えた方がいいでしょう。3か月物金利が0.1%を下回っている状態においては、それ以上、日銀は買いオペを行わなくなるので、10年国債利回りが上昇しても、日銀は理論的には動けないことになります。

量的金融緩和の場合には、ターゲットが「金利」ではないので、10年国債が上昇した状態においては「量」を増やす決定さえすれば、市中銀行から国債を買い取ることができるので、10年国債利回りを低下させることができるということになるのです。

この違いは大きくて、実質的に「量的緩和みたいな政策」といっても、「金利政策」を続ける限り、政府としてはこれ以上の国債増発は難しくなると思われます。

とはいえ、ある意味、「金利政策」が正常なのですから、私は今回の日銀の決定には賛成です。量的金融緩和は政府の財政規律を弱めるだけでなく、いわゆる「ホームレスマネー」の増発にもつながるわけですから、今後の世界経済に多大な悪影響をもたらすことになると思っています。

そもそも金融政策は「(景気の)ブレーキ」にはなり得ますが、「(景気の)アクセル」にはなり得ないということは理解をすべきです。おカネをジャブジャブにしても、経済は良くなりませんし、悪い経済状況の時におカネがジャブジャブであれば、必ず、どこかでバブルが発生してしまいます。

その意味で、日銀は精一杯のことを行っているわけであり、ここからは財政政策ということになるのでしょう。政府として自由に使えるおカネのない中、財政規律を守りながら、しかも、景気刺激を行うという非常に難しい課題ではありますが、日銀の政策を有効にするためにも、是非、(単なるバラマキではない)有効性の高い財政政策を行ってほしいものです。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第126号、いかがでしたでしょうか。

とある事情で、最新設備のある近所の大型病院に足を運んだのですが、その大きさと綺麗さに驚きました。

その病院からは全く感じませんでしたが、病院経営と聞くと、診療報酬引き下げなどによる経営難の実態が、しばしば新聞やドキュメンタリー番組で取り沙汰されています。


そういえば数年前、全国の病院が保有する不動産投信が出来るという話を聞いたことがあります。

病院は投資家から健全経営や規模拡大などの資金調達をすることが出来ますし、投資家には情報開示しなければならないので、病院資金の透明性にも繋がるというものでした。

農業ファンド、レストランファンドなど、ちょっと変わったファンドの話しは以前にもこのメルマガでしたことがありますが、これからもいろんなグッドアイデアファンドが出て来て欲しいものです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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