ジェイコム誤発注は、そもそもやり直しすべきだった
みずほ証券がジェイコムの株式を誤発注した事件に絡み、みずほ証券が東証に対して損害賠償を求めていた裁判で東京地裁は4日、東証に107億1212万円の支払いを命じました。この事件は2005年、みずほ証券がジェイコム株の売買注文の際に1株61万円の売り注文を誤って61万株1円と発注。複数回にわたって取り消し注文を出したものの東証のシステムが受け付けず注文が成立してしまったというものです。
事件発生時にも述べたことですが、この問題の正しい解決法は「間違いであったことを認めたなら、遡って取引をやり直す」という方法だったと思います。世界的な常識に照らし合わせてみても、これ以外に方法はなかったはずです。
ところが、当時の日本証券クリアリング機構指導の下、みずほ証券は誤発注の弁償として400億円以上の損失を出しました。これが間違いだったのです。今回の東京地裁の決定によれば、みずほ証券は107億円分を東証から弁償されるとのことですが、すでに損失計上されている400億円には遠く及ばない金額です。
また一番の問題だと感じるのは、ジェイコム株誤発注問題で利益を出した証券会社から返済された基金の使い道です。道義的な意味もあり、UBSを筆頭に多くの証券会社が基金拠出を行いました。その総額は約209億円です。
しかしこの209億円は、証券取引所等の大規模システム障害防止の基礎整備などにあてるという目的で、現在プールされている状態です。209億円をみずほ証券への損失補てん目的で東証が受け取っていれば東証のダメージも少なかったはずなのに、返済された資金を別目的のものに摩り替えてしまっているのです。これは完全に前近代的な解決策で、時代遅れの対応だと私は思います。
●厳しい状況に追い込まれ、改革が求められる東証
株式の私設取引システム(PTS)で欧州最大手のチャイエックスが日本に参入し、来年夏をメドに日本株の私設市場を開設することが分かりました。
チャイエックスが日本市場に参入してくるというのは、東証にとって大きな脅威になると思います。欧州主要市場での取扱機関別売買シェアを見ると、チャイエックスの強さがよく分かります。
英国のFTSE100などではチャイエックスは約25%の売買シェアを獲得しているほどで、特にプロの投資家向けの市場に大きな強みを持っています。チャイエックスが参入してくることで、日本でも24時間取引が可能なプロ向けの市場が開設される可能性が高くなるでしょう。
チャイエックスに対抗するためには、東証はもっとシェイプアップした経営をしなければ対抗できないと思います。またシステム面でも、世界の取引所から著しく遅れた今のシステムを改善し近代化していくことが求められます。
チャイエックスは野村證券が傘下におさめている企業です。皮肉なことに東証の斉藤社長は野村證券出身者です。その斉藤社長のいる東証に対して、野村證券がどのような動きを見せていくのか、今後の展開を見守りたいと思います。
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