銀行間のサービス競争への期待したい/日本郵政はやはり国債買取機関なのか
インターネット専業銀行の住信SBIネット銀行は先月29日、12月28日時点で預金残高(外貨預金の円換算なども含む)が9000億円を突破したと発表しました。2007年9月24日の営業開始から約2年3カ月で達成し、特に2009年に入っての伸びが急で、08年末時点の約5520億円から大幅に上積みしています。
住信SBIネット銀行は、その名の通り、住友信託銀行とSBIホールディングスが共同で出資している銀行です。住信SBIネット銀行の業績推移を見ると、2008年の半ば以降、口座数を伸ばし、預金残高も1兆円に近づき、ソニー銀行を追随する動きを見せています。
さすがにSBIホールディングスが絡んでいるだけあって、非常にアグレッシブな姿勢を見せています。例えば、別荘購入の際にも良い条件で貸出をしてくれるなど、ターゲットを絞って需要を掘り起こす、他の銀行に見られないアグレッシブな銀行だと私は見ています。
ソニー銀行もアグレッシブな銀行だと思いますが、この両者が良い競争をしてくれることを期待したいところです。巨大都市銀行には期待できませんが、銀行がサービス競争を繰り広げてくれるのは非常に良いことだと思います。
日本郵政の斎藤次郎社長は先月28日の定例記者会見で、郵便貯金の預入限度額(1000万円)について「利用者の観点からもう少し緩やかにしてほしい」と述べ、政府に見直しを求める考えを示しました。
いよいよ予想通りの行動に出たものだ、というのが私の正直な感想です。西川前社長を解任し、政府の新規国債発行額44兆円相当分の預金を使って、日本郵政を国債買取機関として機能させようとしている、と私は以前から指摘していました。
預入限度額の1000万円という天井を外してしまうことで、他の金融機関から日本郵政に預貯金が流れる仕組みを作ろうとしているだけのことでしょう。斎藤社長の考えていることは手にとるように分かります。
国債を買う忠誠心に溢れているようですが、私としてはそこまで国家機関になりきってしまったのかと非常に残念な気持ちです。
●米国は日本と同様、失われた10年を経験することになる
米連邦準備理事会(FRB)によると、11月の商業銀行の融資残高は前年比6.2%減の約6兆7900億ドル(約617兆円)と、4カ月連続のマイナスとなりました。
何度も米国は日本の轍は踏まないと主張していますが、見事に日本と同じ道を辿っていることが分かります。
・10以上あった巨大銀行が、3つ~4つに減少
・金利ゼロ施策を実施
・事業会社に対する貸出は減少
・クレジットも減少
・一般消費者が利用できるサービスの減少
どこから見ても日本と同じ道を歩んでいるのに、未だにニューヨーク・タイムズやエコノミストなどで「日本の失われた10年を回避するために・・・」などという記事が掲載されることがあり、非常に驚きます。正直、もっと勉強して欲しいと感じます。
今、目の前にあるのは、新しい経済の摂理であって、それに対して「金利をゼロにする」などという旧来的なアプローチをとっても効果はないのです。金利をゼロにすれば銀行は国債を購入するだけです。そして1%利ザヤを抜けば、それだけでやっていけるからです。
結果、銀行は国の方を向いて仕事をするようになり、ユーザーの方に目を向けなくなります。まさにかつての日本が陥った状況そのものです。
実際、米商業銀行融資残高の対前年同月比の推移を見ても、リーマンショック以降、見事に落ち込んでいます。2009年夏頃からはついにマイナスに転じ、それでも勢いは加速しています。ポールソン効果で落ち込んで、ガイトナー氏もそれを加速しただけで終わったということです。
私は2008年11月頃からこのような結果になる危険性について、様々なところで書いてきましたが、結局こうなってしまいました。日本の轍は踏まないと言い張る米国には残念なことでしょうが、日本と同様、「失われた10年」を経験することになると思います。GMACが国有化されたことなども、その始まりだと私は感じています。
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