リーマンショック前と、大きく構成が変わった形態別実質家計消費」を検証する
株価の動向を考える時には、よくGDPとその指標を中心にその構成要素がどうなっているのかを検証します。例えば2009年、10―12月期の実質GDPは、前期比1.1%、年率で+4.6%で、これは4-6月期に次ぐ高成長を記録しています。そして市場予想が+0.9%だったのに対して、それを上回る1.1%なのですからまったくケチの付けようがありません。ただ、いくつか気になるポイントがあるので、「形態別実質家計消費」、「労働力需給」、「地域別輸出数量」の3つの指標について解説していきましょう。まず最初は「形態別実質家計消費」です。
ここで注目すべきは、消費は確かに戻ってきていますが、その「伸びの内訳がリーマンショック以前とは違ってきている」という点です。大きな違いは前の時期と比べて、耐久財の消費だけが急増していること。何故こんなに耐久財が大きく伸びたのかというと、エコカー減税や補助金、エコポイントなど、政策が生産を引っ張り上げてしまったからではないでしょうか。加えて言えば、耐久財を買うためにサービスや半耐久財の支出を削ったのではないか、とまで考えられます。
こうした景気刺激策による効果は、政府がそれをずっと続けていれば、その分だけこの状態が続く可能性があります。今は住宅もエコポイントなどをやっていますが、こうした政策による意外なプラス効果は、今後もありうると考えることができるでしょう。
しかし、これはあくまで一時的な「カンフル剤」に過ぎないことも事実です。そのあたりも踏まえた上で、先を見据えた投資判断をしなければなりません。
■「労働力需給」指標で着目すべきは、「一番最後に改善する指標」であるということ
次は、「労働力需給」です。よくGDPの伸びが好調な時に、テレビのニュース報道などで必ず「でもね、...」という材料で出てくるのがこれです。
投資家として知っておくべきなのが、「労働力需給は一番最後に改善する指標」だということです。一番最後なのだから、だいたい悪い。投資家的発想だと逆に「これがよくなってきたら、株価は天井だな」くらいに考えておいて下さい。好況で人手が足りないくらい景気の頂点にある時は、その頂点の前に株価が天井を付けるからです。投資家の感覚としては、それくらい早い見方が必要です。このような点から、株価そのものは、完全失業率や有効求人倍率を材料には動いていないということが分かります。
■株価が戻りに転じたその理由は、「株価がアジア圏・米国向けの『輸出』を織り込んだこと」
3つ目のポイントである「地域別輸出数量」を見ると、株価の動きと同じように急回復をしていることが判ります。ですから、「地域別輸出量を織り込んで、株価は戻りに転じた」のだという見方ができるということです。「株価は、投資家が動かしている」のですから、投資家がどこを見て株の売買をするかによって株価が決まってきます。しかし「どこを見るか」は必ずしも同じではありません。ある時は、もしかしたら消費中心だったかもしれません。しかし今はデータから、「株価は、輸出を十二分に意識している」のだということが見えてくると思います。
その中身を見ていくと、まずアジア向け、そして伸び率という意味では米国向けの2つが輸出を支えていると言えるでしょう。特に注目すべきがアジアであり、中国を中心とする新興国が引っ張っているということが読み取れます。そうすると中国への輸出が激変することがない限りは、マクロのほうから株価が下がっていくということにはならないと思います。そして急にそういう状況になれば、おそらく株価が先に反応します。こうした統計は全て遅いので、もし株価の動きを検証するならば、(繰り返しになりますが)注目すべきはやはり「株価は何を気にして動いたのだろう?」ということであり、今はそれが「輸出」だということになります。
いま中国にしても米国にしても、財政出動を一生懸命にやっています。そうなると中国や米国の財政出動や経済対策が、日本の株価対策になっている、そういう風に繋がってきていると考えることができます。これは、良い悪いという話ではなく、日本の株式市場が、いわば中国や米国のデリバティブのような感じになっているのだと知っておいて下さい。
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