米スティール・パートナーズの作戦ミスがなければ、勝てたかも知れない
サッポロホールディングスの株主総会が先月30日、東京都内で開かれ、筆頭株主の米スティール・パートナーズが提案した取締役選任案が否決されました。
一言で言えば、この結果はスティール・パートナーズの作戦負けだったと私は思います。私ならば「アデランス」や「ブルドッグソース」の事例を具体的に述べて一般の株主にも分かりやすい話を展開したでしょう。そのような話をせずに、サッポロの経営陣の問題点を指摘し、自分たちが推薦する経営陣ならば大丈夫だと話してしまった点にスティール・パートナーズの敗因があったと私は思います。
一般の株主にとっては推薦された経営陣は馴染みがないということもあったでしょう。その上、スティール・パートナーズと言えば乱暴な投資家というイメージもあり、「サッポロがかわいそう」「今後も今まで通りヱビスは飲み続けたい」といった感情的な部分が判断基準になってしまいました。
こうした感情論に対しては、1つ1つ具体的な事例を出して分かりやすく話をするべきです。
例えば、アデランスではスティール・パートナーズが推薦した経営陣に代わったことで業績が回復したということ、逆に提案を受け入れなかったブルドッグソースは未だに低迷し続けているという事実を、具体的な事例として話せば、かなり印象は違ったはずです。
また「ヱビスが飲めなくなる」という意見に対しても、本当に「ヱビスビール」が市場に求められている商品であれば、経営者が変わろうともなくなることはないはずですから、その点を具体的に説明するべきだったと思います。
私に言わせれば、現在のサッポロの業績を見れば、今回サッポロ側が勝つことが「おかしい」ことであり、勝つに値する正当な理由はなかったと思います。日本人的な感情論に対して、スティール・パートナーズ側が絡み合わない議論を展開してしまい、ミスを犯したということだと思います。
●野村にとって、ヤマハはハウステンボスの二の舞になり得る
ヤマハ発動機は2日、5月上旬までに公募増資などで最大761億円を調達すると発表しました。同社は欧米での2輪車の販売不振などで09年12月期に2161億円の連結最終赤字に転落。自己資本比率が低下したことから増資で財務を改善するとともに将来の開発資金を確保する狙いです。
常識的に考えると、2000億円以上の赤字を計上し、かつ経営者が頻繁に入れ替わっているような状況で、760億円もの増資が簡単に実現できるはずもありません。しかし今回の場合には、野村證券が公募増資の主幹事に加えて、第三者割当増資の割当先にもなっていますので、意外と集まってしまうかも知れません。
おそらく、すでに銀行は貸してくれない状況になっているのではないかと私は思います。だから野村自身が資本を引き受けるという選択になったのでしょう。
ヤマハ発動機の資本を最大で22%も引き受けると聞くと、私としては心配してしまいます。かつて野村グループは、野村プリンシパルを通じて「そごう」や「ハウステンボス」へ資本を入れた結果、かなり痛い目にあっています。また同じことを繰り返す羽目にならないことを願うばかりです。
●強い円のうちに他の通貨を買っておくのは、王道
外国為替市場で個人が高金利通貨への投資姿勢を強めています。金融危機後の世界経済の回復を見込み、オーストラリアドルや南アフリカランドなどの資源国通貨を買う動きが目立ってきています。ギリシャの財政不安の沈静化を背景に、いったん為替リスクを避けて円に戻した資金を再び外貨に振り向け始めた形です。
日本の投資家もさすがに銀行に預けていても面白くないので、高金利通貨に目を向け始めたということでしょう。あまりに乱暴なデリバティブではなく、シンプルに金利が高いオーストラリアドルや南アフリカランドに流れているという状況だと思います。
実際、最近の為替の動きを見ていると米ドルを買い戻し、円が安くなるという動きが見られます。ドルが動き始めているので、まだ「強い円」のうちにオーストラリアドルや南アフリカランドのような別の通過を買っておくというのは常道・王道だと思います。
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