ギリシャ危機はEU全体の危機へ、更に日本への波及は起こるのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/5/19(水)  
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ギリシャ危機はEU全体の危機へ、更に日本への波及は起こるのか

ギリシャ危機は、日本にとって他人事ではない

EU16カ国は2日、IMF(国際通貨基金)と協調しギリシャに対して3年間で総額1100億ユーロの融資を行うことを決定しました。これに先立ち、ギリシャ政府は財政再建策を閣議決定。今後3年間で支出を300億ユーロ削減する方針を明らかにしました。一方、首都アテネで5日、2大労組連合による24時間ゼネストが実施され、デモ行進では死者が出る事態となりました。

ギリシャの問題は複雑です。というのは、単純に経済が破綻したという事実に加えて、これまでギリシャ政府が嘘をついて数字をごまかしてきたという背景があるからです。アテネオリンピックも赤字をごまかし、財政赤字は対GDP比3%だと言い続けてきました。しかし、蓋を開けてみたら実際には対GDP比で10%を超えるまで赤字が膨らんでいたのです。

計算して発表する度に数字は悪化したのも非常に心証が悪く、ギリシャ政府そのものの信頼性に大きな問題が生じてしまっています。

ユーロに加盟したころは慎ましやかにしていたギリシャでしたが、提供される補助金などを使いながら、甘えた政策を取り始めました。日本で言えば、「亀井式」の政策です。政治家は甘い政策の方が楽をできます。そのうちに政治家にとっても国民にとっても甘い政策を打ち出した政党しか選挙で勝てなくなり、結果として「年金」「(日本で言う)子ども手当」などの支出が膨れ上がりました。

今回の事態を受けて、そうした支出をバッサリと切り捨てろと急に言われ、困惑した国民がゼネストを実施したということです。ギリシャはこうした大々的なゼネストは経験したことがありませんから、非常に苦しい状況を迎えていると思います。

ただ、日本にとっては他人事ではありません。日本も70年安保以降、ゼネストのような運動は経験していませんが、ギリシャと同じ運命を辿る可能性も十分にあります。日本でもギリシャと同じくらい緊縮せよと言われたら、公務員をばっさりと削減し、事業仕分けどころか独立行政法人は全部潰すくらいのことが求められると思います。なし崩し的に予算がついている道路工事にしても、5年間は完全凍結となるかも知れません。

今回ギリシャの破綻だけでこれだけ大きな問題に発展していますが、まだ先も考えられます。それが、PIIGES(ポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシャ・イギリス・スペイン)の各国です。

これらの国への対応まで考えると、ECB(欧州中央銀行)とIMFが協力して何かしらの「仕掛け」を作っておかないと間に合わないと思います。先日、欧州のトップが会合を開きギリシャに対するEUの緊急支援基金の設立を決定したそうですが、こうした連携は非常に重要になってくるでしょう。



●ドバイから始まった波は、欧州、さらには日本を飲み込むか?


ギリシャ問題から波及して、これから起こることとして何が考えられるでしょうか?その答えの1つが5月9日号のBusinessweek誌に掲載されていました。それは「Now It's a European Banking Crisis」、欧州の銀行破綻です。リーマン・ショックが米国の銀行破綻へと続くプロセスになったわけですが、今度は欧州の銀行へ波及するということです。

その根拠として、ギリシャに対する欧州の金融機関の貸付額が約20兆円にものぼることが示されています。

主な欧州金融機関が開示したギリシャ国債保有額を見ると、1位:ピポ・レアル・エステート(79億ユーロ)、2位:BNPパリバ(50億ユーロ)、3位:コメルツ銀行(31億ユーロ)、4位:ソシエテ・ジェネラル(30億ユーロ)と続いています。



この順位と金額を見ていて気づくのは、これら上位の金融機関だけでは2兆円程度で、ギリシャへの総貸付額の約20兆円には全く届かないということです。ドイツでは小さな保険会社などがギリシャ国債を買い込んでいるという話も耳にします。実際のところ、開示されていないものがまだまだ隠れているのでしょう。

BNPパリバやコメルツ銀行の株価が下がり始めているのは、まさに欧州銀行の破綻へと続く第1歩となってしまうかも知れません。今後、ギリシャから拡大してPIIGESにまで広がってしまったら、もはや手遅れです。

私は昨年11月から述べていますが、ドバイショックの恐ろしいところは、ドバイだけに留まらず、そこからPIIGESという欧州へと広がり、そして最後には日本にまで影響してくる可能性があるからです。

こうした状況に対して、経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は先のBusinessweek誌の中で「ギリシャ危機の本質はエボラ熱のようなもの」と語り、「ギリシャをEUから切り離すべき」という意見を述べていました。

OECD事務総長にある人がこのような発言をする意図が私には理解できません。ギリシャに続いて、アイルランド・イタリア・スペインなどが同じような状況になったら、それらの国もEUから切り離すというのでしょうか?残されたドイツとフランスだけでEUの帳尻を合わせるのでしょうか?

英国はすでにユーロには参加しないと表明していますが、キャメロン新首相のもとEUからの脱退という可能性も出てきています。グリア事務総長の言うようにエボラ熱を切り捨てるという選択をするなら、EUそのものが崩壊するという可能性も十分にあると私は思います。

EUの崩壊はユーロを抱えている世界経済に多大な影響を及ぼします。ドバイから始まったリーマン・ショック第2弾の波は、EU・欧州の崩壊、それとも日本の崩壊を招くのでしょうか、あるいは双方ともに崩壊してしまうのでしょうか。いずれの可能性も残されていると思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 学長
大前研一

5月9日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第146号、いかがでしたでしょうか。

最近知り、良く観るようになったテレビ番組に、勝間和代さんが出演されているBSジャパンの「デキビジ」があります。

日曜夜8時と、自宅にいることが多い時間帯であることも理由の一つですが、一番の見どころは勝間さんとゲストスピーカーとの対談コーナー。

勝間さんの「テレビだからといって決して遠慮しない、ゲストへの鋭い質問」はなかなか面白く、先週のゲストには伝説のトレーダー、藤巻健史さんが出演され、日本経済や個人投資家について、互いにその考え方を述べ合っていました(途中twitterを使った視聴者からのリアルタイム質問もあり)。


「テレビでは他のスピーカーなどに配慮し、言いたいことが制限されることがある」という話を聞いたことがありますが、確かに視聴していてそう感じることもしばしば。

昔は「朝まで生テレビ」を夜通し観たりもしましたが、今はその体力も無いので、私の中では毎週ちょっと楽しみな番組の一つになっています。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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