NY大幅下落を招いた「ドイツ空売り禁止」も、本質的解決策にはならない|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/6/2(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第148回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
NY大幅下落を招いた「ドイツ空売り禁止」も、本質的解決策にはならない

空売り禁止ではなく、ヘッジファンドへの資金提供を止めよ

ドイツ連邦金融監督庁は18日、ユーロ圏16カ国の政府が発行する国債の空売りを禁止すると発表しました。これを受けた18日のニューヨーク株式市場は大幅反落。金融市場の規制の強化で投資マネーの動きが鈍るとの見方が広がり、幅広い銘柄が売られました。

このドイツによる「空売り禁止」の発表はあまりにも唐突でした。おそらくこのドイツの対応に一番驚き、嫌悪を感じているのは英国でしょう。英国は「空売り禁止」のような措置はとりたくないと考えていると私は思います。

以前から私は主張してきましたが、単に空売りを禁止するのではなく、ヘッジファンドに資金を提供している銀行に働きかける方が重要だと考えています。

この問題の本質は、倍率をかけて空売りを仕掛けてくるヘッジファンドに、銀行が資金を貸してしまうという点にあります。例えば、ヘッジファンドは100億円くらいしか資金をもっていないのに、銀行が900億円を貸してしまうのです。そして1000億円に膨れ上がった資金に対して30倍の倍率で空売りを行えば、3兆円規模の取引になります。これが問題なのです。

こうした取引をしているヘッジファンドに資金を提供した銀行は、いざ金融危機になってヘッジファンドが窮地に立たされても「絶対に救済しない」と宣言させるべきです。これを実施しようとすれば、現実的に銀行からヘッジファンドへの資金の貸出しはなくなるでしょう。そうなれば「空売り」の威力も激減します。これを一刻も早く実施するべきだと私は思っています。

政治家は実務家ではないので、ことごとく解決策は空理空論になってしまっています。だから、いきなり「空売り禁止」となるのです。そうではなく、ヘッジファンドに銀行から資金が提供されているという本質に気づくべきです。

「空売り」自体の良し悪しを議論するのではなく、銀行がヘッジファンドに働きかければ「悪しき空売り」の元凶がなくなる、ということが最も重要なポイントです。


●欧州に規律を取り戻せるか?ドイツに期待

欧州連合(EU)財務相は21日、財政・金融改革作業部会の初会合を行い、EUの財政規律を順守できなかった国に対し一層厳格な制裁を科すことで大方合意しました。

ドイツの議会を通過した法律が、非常に重要な意味を持ってくると思います。そこには、EUで定められている「財政赤字を対GDP比3%以内」「政府債務残高をGDP比60%以内」に抑えるなどのルールを守れない国には厳しい制裁を科すと述べられています。

例えば、今後ブリュッセルから拠出している補助金を受けられなくなる、あるいは、財政再建のプランが提出されない場合には最終的にユーロから追い出すという可能性まで含まれています。

ドイツのメルケル首相は国民に嫌われ始めているようです。あれだけ優秀な政治家が疎まれてしまったのは、ギリシャ救済策の決定などによってドイツもかなりの資金拠出をすることになれば、「ドイツ自身も持たなくなるのでは?」と国民が思っているからでしょう。実際、65%のドイツ国民がメルケル首相は「やりすぎだ」と感じているとのことです。

「規律を守れない人に対しては、厳しいペナルティを科すと同時に欧州からの援助を止める」という姿勢は、ドイツ議会の非常に強いディスプリン(規律)の現れだと私は思います。欧州を1人で支えるという厳しい状態に追い込まれている、このドイツの気持ちはよく理解できます。

フランスのサルコジ大統領はポピュリスト(大衆迎合主義)ですから、ドイツのような規律を求める行動はとらないでしょう。私としては何とかメルケル首相に持ちこたえてもらって、ドイツを筆頭に欧州に規律を取り戻してもらいたいと思っています。

EUによるヘッジファンド規制の原案が出来上がってきています。EUは18日、当地で財務相理事会を開き、金融改革の一環としてヘッジファンドなどの投資ファンドに対する規制や監督を強化することで合意しています。



「登録制から認可制へ」「情報の開示」「自己資本規制」「レバレッジ規制」「第3国ファンド」「販売相手」などの項目について、それぞれ厳しく定めています。この項目を見る限りはかなり厳しい規定だと思いますが、一方で、それでもヘッジファンドは「抜け道」を探し出してくるだろうと、私は読んでいます。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 学長
大前研一

5月23日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第148号、いかがでしたでしょうか。

海外旅行好きの友人が「ここ数年は本当に、どこに行っても中国人観光客を見る」と言っていたのを聞き、そういえば確か、一昔前は日本人もそう言われていたのを思い出しました。

よく買っている物はやはり貴金属やブランドバッグだそうですが、私のオフィスがある東京秋葉原では、家電製品を買いに早朝から観光バスで訪れる中国人の集団をたびたび目撃します。

皆さんもご存じの通り、家電販売のラオックスは一年前に中国傘下となり株価急騰、そして直近では東証一部のレナウンが中国企業と資本提携し、その影響でここ数日株価ストップ高の様相。

私たち個人投資家が、アメリカ以上に中国を意識して投資判断する日も、すぐソコなのかも知れません。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み