2020年度まで悠長に構えている暇はない
政府は先月、中長期の財政健全化に向けた財政運営戦略を閣議決定しました。これは国と地方のプライマリーバランスを2020年度までに黒字化する目標を掲げ、2011年度から3年間は国債の元利払い費以外の歳出を横ばいで据え置くことなどが盛り込まれたものとなっています。
2020年度までに黒字化する見通しということは、それまでは「悪化し続ける」ということを意味しています。極端なことを言えば、「国債の利払いはしません」となれば大きな影響は出るでしょうが、今のままでは期待できません。
また財源不足分の金額は「消費税で換算すると8%~9%相当」と言われていますが、正確に言えばこれは間違いだと私は思います。この金額では、今すでにある借金の返済は考慮されていません。それらも全て返済するということを実現するためには、この程度の金額ではとても間に合わないのです。
さらに消費税率の発表について苦言を呈すると、「消費税で換算すると8%~9%相当」という表現は非常に誤解を招きやすいと思います。この表現だけを見ると、「消費税率を現在の5%から8%~9%へ引き上げる」と解釈してしまう人もいるでしょう。しかし、財源不足分を埋めるために「現在の5%に加えて8%~9%」という試算です。すなわち、消費税率は13%~14%程度になることを意味しています。
財政運営会議はこのような点について、ややいい加減に過ぎると思います。たとえ国民に言いづらいことであっても、「消費税率は13%~14%」にならないとダメなのだときちんと伝えるべきです。そして、それも財源をこれ以上悪化させない最低限のレベルであって、これまでにある借金を返済することはできないという事実も明確にするべきだと思います。正しく、分かりやすく国民に伝えるということを念頭に置いて欲しいところです。
●日本の貸借対照表の資産価値は間違っている
負債が資産を上回る「債務超過額」は07年度に比べて34兆7000億円増え、317兆4000億円となりました。08年に発生した25兆8000億円の財源不足を埋めるための国債増発で負債が膨らんだうえ、円高で外貨建て資産が目減りしたのが響いたとのことです。
まず、今回財務省が発表した国の貸借対照表が「2008年度」であったことに不満を感じました。企業には2ヶ月で開示しろと指示しているのに、翻って自分たちが数字を発表する際には、このタイミングで2009年度の数字を出せないというのは怠慢だと思います。
そして財務省の発表では、2007年度から2008年度にかけて資産が減ったため、「債務超過額」は317兆4000億円になったとのことですが、私に言わせれば実際の「債務超過額」は財務省発表の数字を超えているのではないかと思います。
というのは、算出されている負債の金額は「数字」として正しいものですが、資産についてはそうではないからです。例えば、国の資産として計上されている「国有林」、「東京大学」などをいくらで試算しているでしょうか?
財務省が発表しているのは「資産価値」であって、本当に今売却しようとしたときに同じ金額になるかは大いに疑問です。もしかしたら、殆ど価値がないと判断されるかも知れません。資産について計上されている「数字」は財務省が適当に当てはめた数字に過ぎません。
そんな日本の国債ですが、意外なことに外国からの信頼は高くなっており、日本国債に投資マネーが流れ込んでいます。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは7月に1.1%を割り込み、2003年8月以来、約7年ぶりの低水準をつけました。
日本の財務状況の悪さから考えると不思議なことです。理由として考えられるのは、そうは言っても「日本国民の金融資産が国債をカバーしている」ので、他に比べると「マシ」だと思われているのでしょう。
日本の場合、国民が国債を買っていて、外国に借金をしていません。米国や欧州が危険な状況にあり、中国もバブルがはじけたらどうなるのか先行きが不安という状況に比べれば日本は安全に見えます。それゆえ、逃げ場をなくした投資マネーが日本に入ってきているということだと思います。
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