上海総合指数、今後の動向を読み解く鍵は「中国農業銀行が上場後に成功するか否か」
いま「上海総合指数」は、年初来安値近辺にあります。正確には、年初来安値を更新してきていたものが、さらに7月に大きく下落し、その後少し戻したという格好です。では「7月に何故大きく下がったのか?」を見てみましょう。
いま中国では新規上場する企業が多く、今回中国の大銀行である「中国農業銀行」が上場することになりました。このメルマガをお読みの方の中にも、新規上場(IPO)株を買われたことのある方がいらっしゃるかも知れませんが、IPOを申し込むためには当然その株を買うお金が必要ですよね。
ここで現金資産を持っていない投資家は、マーケットでいったん何かしらの持ち株を売って換金し、その購入資金を作らなければなりません。結果それが、一時的にマーケットから資金を吸い上げることに繋がってくるわけです。
中国農業銀行は上海総合市場で上場する中でも最大級と言われる大手銀行ですから、今回これだけの換金売りに繋がり、上海総合指数の下落を誘ったのではないかと言われています。ですから「換金売りが一旦止まれば、上海総合指数も下げ止まるのではないか」と、今のところ見られていますが、それが本当に事実なのか否か、その後の動きを投資家はウォッチしておく必要があるでしょう。
また、中国農業銀行のIPO後、その株価がうまく上がっていくか否かも、その後の株価動向に影響します。もし株価がうまく上がらなければ、資金が逃げていくこともあり得ますし、上場すれば時価総額も大きくなると同時に、投資家の数も圧倒的に多くなるはずなので、幅広い売りが出てくる可能性もあるでしょう。したがって「中国農業銀行が上場した今、その株価がきちんと上昇軌道に乗るかどうかによって、上海総合指数に再び影響が及ぶ」ことに、注意していただきたいと思います。
注)中国農業銀行は上海市場に上場した翌営業に香港市場にも上場していますが、株価動向に対する見方は上海市場でも香港市場でも同じです。
■7月の中国ビザ緩和による観光客者数増が、オリエンタルランド逆行高の要因
中国国内でのこうした事態に加え、日本国内でも一つ、中国に絡んだ株式市場の動きがありました。それがオリエンタルランド株の上昇です。
4月まではパフォーマンス的にそれほど目立たなかったのに、そこから7月はじめまで、TOPIXとは間逆、クロスするような逆行高状態となりました。理由として挙げられるのは、これから夏のレジャーシーズンですから来場者数も見込めるだろうというのが一つですが、それ以上に大きいのが、今年7月から中国から入国する人たちのビザ(査証)の申請基準が緩和されたことにより、中国からの観光客が増え、観光客が増えると見込んでいるということからの上昇です。
マーケット全体に目覚しいところがない分、こうしたトピックがあるところに投資家の関心が集中したのでしょう。さらに上昇トレンドがなだらかであることや、魅力的な株主優待なども手伝って買いを集めている(人気化している)理由の一つなのかもしれません。
一方で売られた銘柄ですが、やはり輸出関連株ということで、海外で生産したもの・販売したものが円に換金された時に、収益が目減りしてしまうと言ったマイナス要因として考えられているようです。
「為替動向(ドル/円、日足)」を見ると、特に6月下旬にかけて円高が大きく進行しているのがわかります。
この理由ですが、輸出関連企業など海外の売上比率が高い企業は、最終的には円を買って日本に送金、その円買いの動きが四半期ごとの月末近くに起こります。
米国の金利が低下していることに加えて、こうした日本企業の資金需要が円買いドル売りに拍車をかけた可能性があるのではないかと思われます。
このレパトリエーションと呼ばれる動きは、日本企業が海外比率を増やせば増やすほどよく起こると考えられますので、四半期ごとにそういった動きが顕著になること、また、その企業の円買い(ドルから円に換金)の動きが円高の圧力になる可能性があることを、投資家として覚えておいて欲しいと思います。
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