東証の存在感の低さ、台湾の台頭
東京証券取引所から姿を消す上場企業が増えています。年初から9月28日までの上場廃止は予定分も含め58社と、4年続けて70社を超える可能性が強まってきています。自社や親会社が自ら上場廃止を申請する例が多く、東京市場の地盤沈下がいっそう進みそうです。
昨年、東京証券取引所に上場した企業は20社ほど、一方で70社以上が上場廃止になっていますから、1年で50社以上も上場企業が減っている計算になります。東京証券取引所に上場している企業数は2008年の約2400をピークにして下がり続け、今では2300を割り込んでいます。
日本が低迷する中、中国・台湾は活況です。中国には上場予備軍が6万社もあると言われていますし、台湾にも上場予備軍がとなる急成長企業はたくさんあり、例えば、会計事務所のデロイトが発表した2009年版アジアの技術系急成長企業の調査によれば、ベスト10のうち4社は台湾企業が占めるほどです。
中国だけでなく台湾も見逃せない存在になってきている点に注目するべきだと思います。「中国民営造船大手の揚子江船業ホールディングスが、中国大陸企業として初めて台湾証券取引所に台湾預託証券(TDR)を上場させた」というニュースを見ても、今後の中台の経済交流の活性化と共に、一層台湾の存在感が大きくなる見通しを強くさせるものだと感じます。
それに比べて日本では上場する企業自体少ない上に、上場した企業の多くは大企業の子会社で、ゼロから起業家が創業したものは殆どありません。このままでは東京証券取引所は衰退するばかりです。まさに惨憺たる状況だと言えるでしょう。
●中国向けの輸出をしている企業に注目する
中国のGDP(国内総生産)は2010年上半期に約11%という非常に高い伸びを見せたにもかかわらず、上海総合株価指数は今年、世界の主要株式市場の中ではギリシャに次いで2番目に悪い成績にとどまっています。このため、中国に投資したい投資家が代替的な投資手段を模索し、銅・鉛、石炭やとうもろこしなど中国の輸入品に注目が集まっています。
上海総合株価指数のピークは2007年10月の約6000ポイントで、その絶頂期は終了しています。今後は中国国営企業のオーバーハングの問題があり、政府系企業が売り出す動きを見せるでしょう。こうした動きが2009年以降の上値が重い状況を作り出しているのだと私は思います。
では中国で儲けるにはどうすればいいのか?と言うと、その答えの1つが「不動産」でした。ところがこの不動産もピークを迎えていて、今後はどこまで「落ちる」のかという段階です。ゆえに、次々とリスクヘッジをかける必要が出てきています。
一説によると、現在、中国では約7000万戸のアパートが空室状態になっていますが、これは購入したアパートに住むのではなく、それを抵当に入れて、もっと大きなアパートを買うという状況によって生み出されています。
つまり個人が大きなレバレッジをかけて、ちょっとでも抵当余力があるなら2つ、3つと不動産を買っているのです。これが架空需要を生み、不動産価格の上昇を助長してきました。このサイクルが上手く回らなくなったら「地獄」を見ることになりますが、近い将来それが実現してしまうかも知れません。
おそらく金融機関が少し「貸し渋り」をするだけでも、大きなレバレッジをかけているために、あっという間に資金余力の限界に達するでしょう。そして「すぐに資金を用意できなければ、不動産を剥奪される」という状況が待ち構えています。まさに米国のサブプライムと同じ事態が、再び中国で起こる可能性があると私は見ています。
こうした状況もあって株式市場は上がりにくくなっています。ゆえに、今注目されているのが、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアなど、中国に対して鉱物やとうもろこしなどを「輸出している企業」です。こちらへの投資はまだ健全なレベルで行われています。実際にコモディティを投資対象としているのではなく、コモディティを中国に輸出している「企業に投資をする」という姿勢を見せているという点がポイントです。
この投資方法ならば、万一中国市場に何かしらの事態が発生しても、最悪の事態は避けられます。おそらく中国以外の新興国で同じようにコモディティを必要として、輸入してくれるところはあるでしょうから、最低限の底が見えているという安心感があるのだと思います。
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