欧米金融不安は、金価格をどこまで高騰させるのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/10/20(水)  
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欧米金融不安は、金価格をどこまで高騰させるのか

ニューヨーク金価格は、10月13日1370.50ドルと史上最高値を大幅に更新しました。7月28日の1155.6ドルからほぼ一直線に上伸し、約3カ月で214.90ドル2割近く上がっています。この上昇の理由を一言で言えば、米国のドル安政策に起因します。



オバマ大統領は9月16日国家輸出戦略に関する報告書を発表し、5年間で米国の輸出を倍増させると宣言しています。バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、11月2日~3日に開催されるFOMC(米公開市場委員会)で追加金融緩和措置を採る可能性が高く、中長期国債を5000億ドル~1兆ドル購入するのではないかと市場は見ています。それはドル通貨発行量の増大を意味し、インフレを招来することになります。

野村総合研究所リチャード・クー氏は、インフレには二通りあり、年率数百%のハイパーインフレを起こすのは簡単だが、年率数%のマイルドなインフレにすることは難しいと述べています。ヘリコプターベンの異名を持つバーナンキ議長の悩みは、景気を回復するために、金融緩和により市場流動性を高くしても、それが企業の投資資金の借入や個人の消費の伸びに結び付かず、経済活動を活性化する役に立つかどうかが不明瞭な点にあります。追加金融緩和でマネーが生み出されても「国内では企業や銀行の手元に積み上がり、海外の新興国や商品市場に向かっているだけ」(ジョンズ・ホプキンズ大のハンケ教授)との指摘も無視しにくくなってきています。

一方、ドル安政策は、各国通貨当局との通貨戦争にも発展しつつあります。中国と日本は自国通貨高に対する対抗措置を、為替介入という形で採っていますが、アジアをはじめとする新興諸国もドルの一方的な通貨安に対処せざるを得なくなりつつあります。

金に話を戻すと、金価格高騰の裏には、米国の金融不安の影と欧州のソブリンリスクによる金融不安の影が未だ尾を引いているという背景があります。 米国では今年初めから10月1日までに145行の金融機関が倒産し、2009年の140行を抜いて史上最高の倒産件数になっています。ちなみに、2008年は26行、2007年は3行、2006年は0でした。米国住宅ローンの返済遅延が増加し、住宅の差し押さえが増加、一般の中古住宅在庫と同じ量の住宅を銀行が担保流れとして抱えている状況です。そのため住宅価格は一向に上向かず、担保価値が下がっているので、金融機関の資産が担保割れした住宅や商業不動産資産により目減りしています。

この傾向はいっこうに収まりません。その最大の不良債権を抱えているのがファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)とフレディーマック(米国住宅金融抵当金庫)という二つの政府系住宅金融機関(GSE)です。両社の赤字額は減少しているとはいえ第2四半期で前者が12億ドル、後者が47億ドルであり、両社とも債務超過であるが上場廃止となっただけで倒産はしていません。倒産させると両社が発行している債券を世界中の中央銀行や金融機関が保有しているため、つぶすにつぶせない状況に陥っているのです。米国政府はすでに1500億ドルに上る財政支援を行っており、巷間では青天井と言われており、米国政府の財政赤字の約3分の1がこの債務負担が原因となっています。

一方欧州のソブリンリスクは収まったかに見えますが、底ではまだ火が噴いています。アイルランドは、不動産バブルの崩壊によりアングロ・アイリッシュ銀行が多額の負債を抱え、アイルランド政府は同行に対し、500億ユーロを超える資金を投入しています。これはアイルランドのGDPの20%を超え、アイルランドの財政赤字はGDPの32%と巨額に上っています。

ギリシャでさえ8%、日本は10%弱という状況を考えれば、いかに巨額であるかがわかるでしょう。同様な危機に陥ったアイスランドは、ユーロの通貨同盟に加入したかどうかの差があります。ユーロ通貨同盟に加盟していないアイスランドは通貨クローナが大幅に下落し、危機前の約3分の1になることで、調整が図られています。しかし、ユーロ圏内にあるアイルランドの場合は、こうした調整弁が働きません。従って財政規律を厳しくし、倹約財政を敷き、かつ産業を活発化してGDPを引き揚げるしか手が無いのです。

ギリシャやスペインも同様の状況に置かれており、IMFからの資金の返済期限が来る3年後までに体制を立て直すことができるかかなり疑問です。こうした金融不安が、通貨安を呼び、インフレ懸念が醸成し、資産家は一部の資産を通貨や株式による保有から、金や商品による保有に切り替えているわけです。

金に関する調査会社、ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ(GFMS)のポール・ウオーカー最高経営責任者(CEO)は13日、日本経済新聞の取材に対し「金価格は年内に1トロイオンス1400ドルまで上がる可能性がある」と述べました。「現在の高値を維持するには継続的な投資マネーの流入が必要です。今後1年程度は上昇傾向が続くとみているが、その後は世界景気回復に伴う金融引き締めなどをきっかけにマネー流入が止まるのではないか」といいます。

ただし、「鉱山生産量から宝飾品などの実需を差し引いた金の需給は供給過剰の状況だ。マネーの新規流入が止まれば、大幅下落する可能性もある」とも述べています。つまり、現在の金の買い手は金融資産家であり、実需ではなく投資需要なのです。金投資はその金利も配当もつかないので、時々反対売買をして手仕舞い売りをしなければ利益が確定しません。ファンドは、10月5日時点で28万3462枚の金のネット買い残がある。これは史上最大のことです。



この水準まで買われると、いずれ売り手仕舞いがされることは容易に想像できます。中期的には金価格は上昇するとしても短期的には10%程度の値下がりは十分あると、私は見ています。



講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学 株式・資産形成講座講師
株式会社 コモディティー インテリジェンス 代表取締役社長
近藤 雅世

9月29日放送
「金融リアルタイムライブ」の内容より抜粋し、一部再構成したものです
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第167号、いかがでしたでしょうか。

先週の連休明け火曜から、ヘラクレスとジャスダック、ジャスダックNEOが統合された新ジャスダック市場がスタートしました。

日本の市場統合は聞き慣れませんが、今回の統合直前には、新市場ならびに新市場を代表する全20銘柄で構成された「JASDAQ-TOP20」の対象銘柄に、「ご祝儀的な資金流入が起こる!」と期待を集めたようです。

市場の活性化ということに関して言えば、この他にも最近の動きとして、東証での昼休み廃止や取引時間延長の議論も聞かれます。

経済同様に低迷する日本の株式市場、こうした活性化に向けた施策や試みは、今後もぜひ継続的に検討実施して欲しいものです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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