6,000億ドルものFRB巨額介入による株高は、市場にとって健全なのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/11/24(水)  
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6000億ドルものFRB巨額介入による株高は、市場にとって健全なのか

バーナンキFRB議長の株価上昇肯定発言は正しいのか、それとも・・・


ウォール街には、「FRBには逆らうな」という格言があります。これを日本風に言い替えるならば、「国策に売りなし」と言うことができるでしょう。つまり国が向かっている方向に合わせた投資をすることが、リターンを稼ぐ・享受するためのいちばん重要な考え方であるということです。その根拠となるのは、6000億ドルに上る米国債を買うことを11月初旬に発表した「量的緩和策」にほかなりません。その決定を行ったFRB(連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長は、「(副作用への)懸念は行き過ぎている」とワシントン・ポスト紙に寄稿し、自分が行ったことは問題がないと発言しました。

私が特に重要だと思ったのは、同寄稿中の「株高は消費者の富を膨らませ、自信を回復させるだろう。それは消費に結びつくはずだ」という部分です。この追加緩和策の狙いの一つが「株高」であることの意味を、私たちはもっと深く真剣に考えるべきです。 もちろん株価の上下も非常に重要ですが、実は今回のバーナンキ議長発言はとても怖いものなのです。

私の好きな言葉に「天才は天災を引き起こす」という言葉があります。株式市場はいろいろな投資家たちが参加しており、お金を投資してもらう企業の側もさまざまな人たちがいろいろな形で議論をしたり、新しい研究開発を試してみたり、あるいはうまくいかないと思って落ち込んでみたり、これからの時代がどのように動いていくのか、どこに経営資源を配置すればいいのかなど、さまざまな人間ドラマがすごい勢いで動いています。

しかし今回の状況は、バーナンキ議長という一人の天才が6000億ドルという天文学的なお金を市場にドーン!と投入することで「株高にするぞ!」と言ったに等しく、それはもう「神の領域」であり、株式市場の自然な動きとはまったくかけ離れた状況になってしまっているということなのです。

確かに過去に日本でも、政府の株式市場への資金投入で株価を上げようとする「プライス・キーピング・オペレーション」を行った時期がありました。しかしまったく機能しなかったどころか、日本の体力をさらに弱めてしまうという結果になりました。今回の米国の例でも6000億ドルで実際に株高にしたわけで、影響力は素晴らしいということになるのかもしれません。しかし、それは本当に「健全」な状況なのでしょうか?

世界で最も知識や情報を持っているトップの立場の人が、「株高にするために自分は6000億ドル使ったんだ」という状況は不健全極まりないと私は思います。短期的には株価がグっと上がるかもしれません、そして実際に上がっています。上昇のペースが速かったため、より短期ということになれば効果があるかもしれません。しかしそれは破滅に向かって時限爆弾をセットしたのと同じことではないでしょうか。

実際に、中国人民銀行総裁が「米国の金融緩和策は、世界経済に副作用だ。グローバルな観点からは、必ずしも優れた選択とはいえない」と非難しています。それは膨張したお金に対して追加緩和を行い、しかも株価が上がるような時にはインフレが起こるからです。経済を疲弊させ、冷やしてしまうインフレは、新興国の経済や世界経済全体にとってやはりネガティブです。米国の立場で見れば、「物の値段が上がる以上に、株価が上がればいいじゃないか」ということになるのでしょうが、逆に中国から見れば、「米国はインフレを起こそうとしている。それは中国経済にとってマイナスだ」として米国を攻撃しているというわけです。


●バーナンキ・ラリーは続くのか? ニューヨーク・ダウは、このまま上昇を続けるのか!?

このような状況を踏まえると、今の株式市場はバーナンキ議長が企てた長期株価上昇策、いわば「バーナンキ・ラリー」だと言っても過言ではないでしょう。今ニューヨーク・ダウは年初の株価を超えて来ていますが、この局面から株価はさらにどんどん上昇していくのでしょうか?


すでにインドが過去最高値を更新しており、それをさらに超えてくる可能性があります。ですから最終的には、ニューヨークも「過去最高値水準まで上昇してもおかしくはないだろう」と私は思います。

では次に、「株価の上昇局面で投資をしたほうがいいのか、そうではないのか」を考えてみましょう。私自身のファンドマネージャー時代の経験からも、上昇局面での投資にはいい成功例の記憶がありません。不動産を例に考えてみると、皆さんが不動産を買わない時には、不景気で銀行がお金を貸してくれず、もし投資できたとしても上物を建てて売却する時に買ってくれる人がいないかもしれないから、投資に対して逡巡(ためらい)することになります。それとは逆の状況で私も欲しい、僕も欲しい、みんなが欲しいとなった時には、より高く買ってくれる人に売ることができる、お金がどんどん動いていくと結果的に高値つかみになる可能性があるわけです。

だから上昇局面では、私は投資をしません。誰もが「株価が上がらないのではないか?」と思っている時にリスクを犯し、投資をするから、その後のリターンが得られるのです。それこそが、株式投資で最も重要な売買行動だと思います。そう考えると、いまこのタイミングで投資をするのは少し慎重に考えたほうがいいでしょう。

一方で、もう一つ重要なキーワードがあります。それは「大局観」です。これは、「そうは言っても、現実にリーマンブラザーズショック直前の株価を回復するほどの勢いを見せている」という事実です。世界の株式市場時価総額を見ていただければ、それがお分かりいただけると思います。


株式市場や株価は、今日の株価が「正義」です。将来、違う株価になるかもしれず、上がるか下がるかは正直言って誰にも判りません。いずれにしても今日の株価が、確実に歴史に残る正しい数字であることは間違いない事実です。そこをポイントに、大局観による売買の心構えで考えた場合、現状が高値であったとしても「今日の今日、今の今、買ってもいいと思えるか否か」という軸での投資判断があります。

この大局観をもって、「バーナンキ・ラリーは続くのか否か」を考えてみましょう。短期的には上がるかもしれないし、下がるかもしれません。確かに下がった時に買ったほうがいいに決まっています。しかし、もしも「1万1444ドル」という現在値が、1万4000ドルという過去最高値に並ぶと確信が持てるのであれば、1万1444ドルで買って、それが一時的に1万ドルに下がったとしても最終的に1万5000ドルになるのであればいいわけです。

投資において一番重要なものは「今日買っても将来的には上がる、もしくは今日売って将来的には下がるという確信」を持てるか否かです。その場合は一時的に逆方向に動いたとしても、更なる買い場(または売り場)と捉え、そこで追加投資することも可能ですから、より大きなリターンを狙いやすくもなります。株式売買のタイミングを計るためにはチャートなどいろいろなテクニックがありますが、最も重要なものは「1万1444ドルという、今のこの価格でも買うのか否か」をしっかり自分自身に問いかけてみる「メンタリティ」だと私は考えています。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「巨大バブルがやって来る!~金融危機終息後の「モラトリアム相場」の読み方~」 小学館 (2009/7/30)

11月10日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第171号、いかがでしたでしょうか。

お店に行って、売られているものや流れている音楽から「もうそんな季節か・・・」と気付かされることがしばしばあります。

ひと月前は今年大豊作だった松茸が激安価格で売られているのを見てそう思い、昨日はお店にジングルベルが流れているのを聞いて「もうクリスマス商戦!?」と、妻と顔を見合わせていました。


アメリカでも、今週末は「ブラック・フライデー」。

クリスマス商戦の始まりを受け、小売店がにわかに黒字化することからそうネーミングされているようですが、この時期の売り上げは年間の3割とも4割とも言われる米国小売業界。今年も経済回復に苦しんだ米国ですが、2010年最後の商戦、果たしてその勢いはいかに?

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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