中国版ナスダックは好調に推移
深セン証券取引所のベンチャー企業向け市場「創業板(中国版ナスダック)」が開業1周年を迎えました。上場企業数は上場第1陣の28社から、1年間で134社まで拡大。市場規模は6112億元(約7兆4000億円)に膨みました。創業板企業の大半は民営企業で、国有企業が牛耳ってきた中国経済の新たなけん引役として期待されています。
ジャスダックの時価総額は8.52兆円・上場企業数は1005社ですから、創業板はまだ及ばない状態です。しかしその成長は著しいものがあり、韓国の新興市場KOSDAQに迫りつつあります。上場企業数ではKOSDAQの約1000社には届かないものの、時価総額ではKOSDAQの6.01兆円にほぼ肩を並べています。
中国の新興市場・IPOの調子は非常に良く、次々と面白い企業が登場しており、株価も軒並み高い値段がついています。中国版ナスダックは好調に推移していると見て良いと思います。
●南米、欧州に見る証券取引所の統合
南米のコロンビア、ペルー、チリの証券取引所は9日、各国の株式市場を統合した「ラテンアメリカ統合市場(MILA)」を創設することで正式に合意しました。今月22日から試行に入り、来年1月中の本格的な取引開始を目指します。上場企業数ではサンパウロ証券取引所を上回って中南米で最大の市場となる見通しです。
3市場の上場企業数の合計は562社となり、メキシコ証券取引所やサンパウロ証券取引所をも上回ります。ただし時価総額では市場を統合しても約6000億ドルですから、サンパウロ証券取引所の約1兆5000億ドルには届きません。サンパウロ証券取引所の時価総額は圧倒的だと言えます。
証券取引所の統合の例では、北欧の「OMX」も非常に参考になると思います。OMXはストックホルム証券取引所(スウェーデン)、ヘルシンキ証券取引所(フィンランド )、
コペンハーゲン証券取引所(デンマーク)などを傘下におさめる証券取引管理会社です。
特徴的なのは、正確に言うとフィンランドやデンマークの証券取引所は統合されておらず、それぞれ存在していますが、「システムが統一」されていることです。フィンランドやデンマークには証券取引所は昔どおりに存在しています。しかし、そこにはシステムがありません。システムはスウェーデンにあり、モニターを見ている人はスウェーデンにいるという状況になっているのです。このような事例は日本も証券取引所の再編を考える上で、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。
ところが残念なことに、日本の証券取引所は未だに「昼休み」が必要か否かなどという問題を議論しているのですから、情けない限りです。
●未だに昼休みにこだわる東京証券取引所
東京証券取引所は10日、市場運営委員会(取締役会の諮問機関)を開き、株式取引の昼休みを現在の1時間30分から1時間に短縮することでほぼ一致しました。アジア市場の値動きを反映できる時間を増やし、取引を活性化するのが狙いで、来年5月の大型連休後からの実施を目指す方針です。
新聞記事などに東証の斉藤社長の見解が掲載されていますが、私は全く賛同できません。斉藤社長曰く、『昼休みの撤廃・短縮に反対する意見として「昼休み前後の板寄せによる売買機会がなくなることで、むしろ利便性が低下する」という意見があった』と言うことです。しかし、それが事実ならば「1時間に10分ずつ休みを取ればいいじゃないか」と私は言いたくなります。
このような愚にもつかない理由で「昼休みを正当化」するのはやめてほしいと思います。「今あるシステムや習慣を敢えて変えたくない」。「だから昼休みの撤廃は望まない」という人が証券会社にも数多くいるのでしょうが、そのようなことを述べている場合でしょうか?
世界の証券取引所から取り残されないためにも、日本の証券取引所として何をするべきかを世界標準の視点で考えてもらいたいと強く思います。
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