急騰する欧州10年債! 世界に波及するアイルランド危機|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/12/8(水)  
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急騰する欧州10年債! 世界に波及するアイルランド危機

日本も中国もアイルランドも、同じくバブルで感覚が麻痺した

財政難に苦しむアイルランドは11月21日、EUに対して金融支援を要請しました。報道によると、支援はIMFと合わせて850億ユーロ、日本円で約9兆4000億円にのぼります。EUはアイルランドを早い段階で救済することで、財政危機がポルトガルやスペインなどに広がることを防ぎたい考えです。

アイルランドの場合、図に乗りすぎた銀行部門が過剰融資を受けてひっくり返った形です。これはアイルランドだけの責任とは言えず、英国・ドイツなどの銀行から押し寄せて積極的に投資をしたとも言えると思います。

まさに世界経済が国境を越えて動く「怖さ」がここにあります。行き過ぎてしまうと実力以上に膨れ上がってしまう、いわゆる「バブル」経済です。バブル経済になると感覚が麻痺してしまい、普通に考えれば「おかしい」と気づけることに反応できなくなります。

80年代の日本は誰が見ても典型的なバブル経済でした。東京の土地だけで米国全土が購入できる、あるいは皇居だけでカリフォルニア州を購入できるというレベルまで日本の土地の値段が上がっていました。普通に考えれば「あり得ない」ことですが、それでも「東京は世界の情報が集まる中心地としての価値があるから」などという理屈がまかり通っていました。野村證券なども日経平均株価は6万円台に達すると発表していて、誰しもが感覚を麻痺させていた時代だったと思います。

今の中国が非常に似た状況にあります。年収の20倍~40倍もの家を購入する人が続々と出てきているとも言われています。バブルがはじけたら大変な事態になる、と言われても当時の日本人と同様に感覚が麻痺していますから全く聞く耳を持ちません。どこかのタイミングで「裸の王様」よろしく真実を叫ばれた時に、一気に落ち込んでしまう事態を迎えるでしょう。

アイルランドもまさにこの道を辿ってしまったわけです。ただし、将来必ず「戻ってくる」タイミングがあります。例えばアジア通貨危機の際、サヤ取り業者であるヘッジファンドなどによる通貨の空売りによってタイ・バーツは大きく下落しましたが、今では正常値に回復しています。

アイルランドにしても同じことが起こると思います。今は「悪いもの」を吐き出して大人しくしている時期です。誰もアイルランドに資金を貸さないという時期が5年~10年ほど続くでしょうが、それ以降また元に戻って良い経済が復活してくると私は見ています。そういう意味でこれから半年は重要だと思います。


●アイルランド支援と英国・ドイツへの影響/ユーロの動き

アイルランド国債については警戒感が高まっています。今年8月にS&Pが長期ソブリン格付けを「AA-」に引き下げたこと、10月にドイツのメルケル首相が「アイルランド国債が債務不履行になったときに民間投資家にも負担させるべき」との厳しい発言をしたことが影響しています。

アイルランドは米国企業の呼び込みのために、法人税率を12.5%に設定しています。金融危機を経て、欧州委員会からは「法人税率を25%にして他国に同調するように」指導されていますが、今回の経済対策でもアイルランドは12.5%を据え置いています。この辺りのアイルランドの姿勢について、憤りを感じている国は多いと思います。



とは言え、アイルランドを支援することには変わりありません。ユーロ圏16カ国、IMF、スウェーデン、英国、ドイツがそれぞれ支援体制を発表しています。実際のところアイルランドに万一のことがあれば、アイルランド向けに多額の貸付を行なっている英国やドイツなどは大きな影響を受けると思います。特に、英国の与信残高は約1500億ドルもあります。それゆえ、国内で厳しい緊縮財政を実施しながらもアイルランドに対して、EUとIMFの支援が決定する前に110億ドルもの支援を発表したのです。



こうした一連の動きを受けて、11月23日の欧州市場でアイルランドの大手銀行株が一時、前日比2~3割の大幅下落をし、スペインなど各国の銀行株も下落しました。銀行救済に伴う公的資金の注入で株主責任を問われかねないとの懸念が広がったものです。またこの日のニューヨーク外国為替市場でも、ユーロを売って円を買う動きが加速することになりました。

今問題になっているバンク・オブ・アイルランドの株価の騰落率推移を見ると、今年になって株価が「激しく」乱高下を起こしているのが分かります。対前日比で10%の動きは珍しくなく、時には50%近い下落を記録しています。



加えてこの2010年を遡っても、ユーロの動きは、対円ではほぼ一貫して円高ユーロ安になっている状況がうかがえます。


●アイルランドに続く、スペイン・ポルトガルに注意

南欧国債への警戒感の高まりから、11月26日にはスペインの国債10年物利回りが5%強と2002年以来の水準に上昇。ポルトガル国債10年物も7%強と通貨ユーロ導入以来の最高水準になりました。



アイルランドの10年債利回りが9%に達し、高利回りにしなければ資金調達が出来ない状況に陥っていましたが、ここに来てスペイン・ポルトガルがそれを後追いする形になっています。唯一ドイツは3%を切る利回りになっていて、欧州全体の安定剤として機能しています。

ポルトガルはともかくとして、スペインは経済規模が大きいため、万一のことがあれば大変な事態になってしまいます。スペインへの貸付が大きい国である、ドイツ・フランス・イタリアなどは大きな影響を受けることになるでしょう。その意味で、特にスペイン経済の動きには注意して見守っていきたいところです。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 学長
大前研一

11月28日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第173号、いかがでしたでしょうか。

調べ物をしている傍ら、統計局の「年代別貯蓄・負債データ」を目にしました。

それによると、60歳以上の方が持つ平均貯蓄額は2千万円強、さらにはその8割以上が現預金や保険という内訳でした。

セカンドライフを充実させるために、日本人はもっと資産運用を!とは前々から思っていることですが、もう一つ、これからセカンドライフに入る人が「この金額で足りるのか」と、最近は感じることがあります。


確かに2千万円はそのままでも大きな金額ですが、年金受取額減少や高齢者の税負担増は日々、緊縮方向に見直しがかかる上、ケースによっては住居の賃貸費用やリフォーム、更には介護施設入居費など、老後においても金銭的負担の大きいイベントは幾つもあります。

数十年後、日本がどれだけ今の財政状態を維持、または回復出来ているかは分かりませんが、これからは経済負担増に備えるための手段としても、資産運用や海外分散投資の実践が不可欠なのかも知れません。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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