菅首相の「一体改革」、その狙いは民間黒字の取り込みか!?|株式・資産形成講座メルマガ

  2011/2/23(水)  
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菅首相の「一体改革」、その狙いは民間黒字の取り込みか!?

日本の債務超過の現状は危機的だ

内閣府が先月31日にまとめた統計によると、国と地方自治体が抱える借金総額が、保有する道路や土地などの資産総額を2009年末で約49兆円上回っていたことが分かりました。また、国民経済計算で家計の状況をみると、資産から負債を差し引いた正味資産は2009年末時点で2039兆円となり、前年に比べて0.8%減少。1988年以来、21年ぶりの低水準となったことが分かりました。



どちらもかなり心配な事態になりつつあります。国と地方自治体の借金が資産総額を上回ったとのことですが、本当の意味での資産価値はもっと低いはずです。国家の公共資産とされている林野などは、資産台帳に記載されている簿価ベースで計算していますが、実際には「その価格では売却できない」からです。実態よりも過大に計上されている資産総額で見ても、さらに負債が上回ったというのですからひどい状況だと言わざるを得ません。

家計の資産・負債の状況を見ると、全体が縮小しているので負債額が膨らんではいませんが、資産総額は88年頃をピークにしばらく横バイが続き、近年下降の傾向が見えています。家計の場合には未だに資産過剰の状況ですが、こちらにしても今後の少子高齢化を考えると、減少傾向が予想され、問題だと言えるでしょう。

また私はかねてから資産課税へシフトするべきだと主張してきました。その資産課税対象になる不動産や金融資産を含む資産総額約2000兆円については、これらが段々と目減りしてきている点が非常に気に懸かります。しかし給与所得も減少していますから、資産課税へ切り替えるべきという主張に変わりはありません。

最後に企業の資産と負債を見ると、企業の場合には事業を展開する上で比較的大きな借入を行うことが多いので、正味資産はそれほど大きくならないという特徴が見て取れます。



●一体改革という名のもとに政府が狙っているのは?


財務省が発表した、2011年度予算案の一般会計と特別会計をあわせた総予算の歳出は、前年度比2.4%増の220兆2754億円となったことが分かりました。また菅首相は1日、社会保障と税の一体改革について「4月に社会保障改革の中身、6月には税を含めた内容を提示する」との考えを示しました。

一般会計の歳出と歳入を見ると、税収約40兆円に対してそれを上回る公債を発行して全体として92兆円の歳入を見込み、それをベースにして歳出も92兆円でバランスさせています。常識的に言えば公債などの公的な借金は税収よりも低く抑えるべきですが、民主党政権は「削る」ということを知らないのでしょう。



さらに一般会計に加えて、国債整理基金・年金・交付金・財政融資資金など約400兆円の特別会計があります。これは国としての予算の外側にあるものですから、非常に恐ろしい状況だと思います。

この一般会計と特別会計の重複分等を除いた総予算の内訳を見ると、「国債利払・償還費」が37%、「年金・医療・介護給付」が29%と大きな割合を占めています。このうち年金・医療などでは「税金」という形態に加えて、「保険料」という形で徴収している点に特徴があります。



菅首相が言う「社会保障と税の一体改革」とは、税金という形ではなく給与明細から天引きされているようなものを全て「税金に統一」していこうというものです。これは北欧諸国で多く採用されている方法です。この場合、租税負担率は50%近くに達すると思いますが、日本人は税率の上昇を嫌いますので大きな反発が予想されます。

ここで大切な事は「一体改革」などという言葉に惑わされず、本当にどちらの方法が良いと思うのかを我々国民がしっかりと考えることです。これまでのように健康保険、企業年金などが見える形が良いのか、それとも全部税金に一本化する方が良いのか。

その上でさらに補足すると、「税金で一本化」という方法をとるなら「2階建て」の構想にしなければいけないということです。つまり、1階部分を最低限のレベルとして税金でカバーし、2階部分は個々人が自分の計画に沿って自由に選択できるようにするということです。

税金でカバーすべき1階は、年金で言えば生活保護と同レベルの保障、保険で言えば健康保険レベルの保障です。これらの最低レベルに加えてさらにサービスを受けたい場合には、個々人が判断して2階部分で自由に運用してもらえば良いでしょう。

今、政府が狙っているのは「一体改革」という名のもとに全部を一緒にすることで、民間で貯めている黒字の取り込みだと私は見ています。例えば、国民健康保険の財政状況は厳しい赤字ですが、大企業が加入している健康保険組合は相対的には余裕があります。つまり、民間の健康保険が抱えている黒字を取り込むことで国民健康保険の救済に充てることができます。同じようなことが、年金などについても当てはまります。

うっかり「一体改革」を受け入れてしまうと、これまで民間で一生懸命積み重ねてきた貯蓄を、全て国に吸収されてしまう可能性があると私は思っています。耳当たりが良い「一体改革」という言葉に惑わされず、そもそも税金で一本化するべきかどうか、税金で保障するとしたらどの程度までか、企業や個人が自由に選択できる幅を持たせるかどうか、という点を考えることが重要でしょう。ぜひ、この点にまで議論を進めてもらいたいと思っています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 学長
大前研一

2月6日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第182号、いかがでしたでしょうか。

「将来の目的のために、または理想の生活のために資産運用をしている」という方は、当メルマガ読者の皆さんの中にも多いと思いますが、その実、具体的な目標金額までしっかり定めていらっしゃるでしょうか。

マネー雑誌などで「魅力的」とされる、国内外の様々な金融商品を取り入れたポートフォリオ(資産構成)を組むことは悪いことではありませんが、まず大切なのは「何をする目的で、いつまでにいくらの運用額を作るのか」と、それを最も安定的に達成する方法という視点でポートフォリオを組むこと。

運用益はあればあるほど嬉しいのは誰もが同じですが、具体的なライフプランとマネープランの無い投資で大きな結果を狙い、過剰なリスクを取ってしまうことだけは避けたいものです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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