●製造工業生産予測
製造工業生産予測では、2月の時点ですでに3月の予測値はマイナスになっていますが、ある調査機関が調べたところでは、3月の実績値は、この表の下限にあたる、マイナス15%まで行くのではないかと言われています。リーマンショックのときは、マイナス12%でした。リーマンショックのときは、お金が回らなくなって、資金繰りの問題でいろいろなところが発注を止めたわけです。しかし今回は、そもそも工場が被災をしているので、もしかすると落ち込みは15%より大きくなるかも知れません。
なおかつ、いわゆるサプライチェーン、部品や部材の供給の問題があります。たとえば、自動車は、一台作るのに、数万点の部品が必要ですが、一つでも欠けると自動車は作れません。一つの部品が欠けても、生産に大きな影響を与えるので、サプライチェーンの問題は時間の経過とともにさらにクローズアップされてくる可能性があるでしょう。
そういう意味で、生産の落ち込みが長引くかどうかも問題です。リーマンショックの時は、生産の落ち込みが4ヵ月くらい続きましたが、その後急反発しています。今回、落ち込んだ後に同じように急反発すれば、景気回復、株価も底打ちとなると思いますが、横ばいとなると、厳しい展開になるでしょう。企業業績に与えるマイナスインパクトが大きいので、今後、実績値がどうなっていくか、注目しておく必要があります。
●マネーストック
市中へのお金の出回り具合を示したものが、マネーストックです。流動性(青線)が出回っているもので、M3(赤線)は、郵貯を含めた残高です。これを見ると、これまで流動性は若干戻し歩調でした。残高はやや下向きから横ばいでした。株式市場にとっては、流動性、残高ともに上がるのがベストですが、中でも、流動性が上がることが重要です。逆に、過去に見られたように、流動性が急に落ちてきて残高も同時に落ち込むのは、非常によくありません。キャッシュを手元に置いているという状況になってしまうからです。3月の数字がどうなるのか、見ておく必要があります。
また、今回日銀が被災地の中小企業向けに一兆円規模の融資枠を作ることが、今回の政策決定会合で発表されました。ただ、借りられない人もいる可能性がありますし、さらに金利が上昇すれば、低い金利で借りられる人は限られてきます。そうすると、資金繰りの悪化から、倒産や、倒産の連鎖が起こる可能性も考えられます。日銀はそれを考慮して融資枠を作ったわけですが、その恩恵に預かれないところも出てくる可能性があるので、注意が必要だと思います。
●金利動向を振り返る
長期金利がこのように上昇してきています。4月5日までのグラフですが、震災後、上昇傾向です。3月11日は一度低下していますが、これはリスク回避の動きで、株を売って債券を買う流れでした。債券価格が上昇して、利回りは低下しました。ところがその後、やはり実態を見てみると、もしかしたらインフレになるかもしれないということから、金利が上昇し始めています。
債券が売られ、金利が上昇するかもしれないという理由の一つに挙げられるのが、赤字国債の発行です。今は日本国内でほとんどが消化されている状況ではありますが、消化できないということになりますと、さらに金利が上がってくる可能性があります。そうなると、お金の借り手にも影響が出てきますし、住宅ローンの金利にも上昇圧力がかかってきます。ですので、金利の状況にも注目しておく必要があります。
ここまでのところ、1.3%が直近のピークになっていますが、この水準を上回ってくると厳しくなります。過去10年間の金利の状況を見てみると、1.25%がだいたい底でした。ところが、アメリカの金融緩和、QE2によって日本の金利も低下し、一時1%を割り込みました。ただ、そのあとは急上昇していますので、金利の動向は上昇局面にあります。なおかつ、今は1.3%ですから、10年間のピークである1.5%を超えてくると要警戒です。
株式市場との関係では、過去、ライブドアショックの2006年までで重要と思われる金利の水準は、2%前後です。2%まで近づくと株価は上昇しなくなりました。これから先、株価が上昇して、金利も上昇すれば良いのですが、金利が2%に近づいてくると、景気の回復度合いが成長に移っていない場合には、株価は頭打ちになる可能性があります。
|