インフレ懸念を商品価格から考える|株式・資産形成講座メルマガ

  2011/5/11(水)  
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世界の商品価格が高騰している今、金融リアルタイムライブ講師である近藤雅世様よりご寄稿いただいた内容をお届けいたします。マーケット環境を捉える、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

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本文タイトル
『インフレ懸念を商品価格から考える』

●連休中に商品価格軒並み下落。その原因は? 今後の商品価格は?

 商品価格は日本が連休中に急落しました。4月29日から5月6日までの6営業日の間に、米国商品市場で最も値下がった商品はNY銀で、▲27.4%でした。次いで、NY原油の▲14.7%、NY砂糖が▲12.4%です。シカゴトウモロコシも▲9%、大豆は▲4.8%でした。

 商品に対する大口投資家は分散投資をしているので、何かが下がると同じような価格傾向を示すことがあります。今回は何が原因で急落したのでしょうか? また今後どうなるのでしょう?


 商品価格が上昇していた大きな理由は金余り現象です。2009年から続く米国発の世界同時不況を乗り越えるため、世界各国中央銀行は大規模な金融緩和政策を採ってきたことはご存じの通りです。

 その大量にばらまかれた資金は、本来企業の設備投資や雇用資金に充当されるべきものだったのですが、景気回復見通しが、株価の先行程には実態が追いついておらず、余剰資金は金融機関や企業に留まったままでした。ドルや円の安い金利の資金を借りて新興諸国の株式投資、不動産投資、そして商品投資に資金が投入された結果、商品市場ではミニバブルが発生していました。

 商品の価格は本来その商品を必要とする需要家とその商品を供給する生産者の間でやり取りされるものであり、その商品の需給に左右されるものです。しかし、原油は将来足りなくなるという仮説や、銀は需要が膨大になり生産が追いつかないといったイリュージョンが市場に喧伝され、投機家はそれらの商品を買い漁りました。

 多くの人々が買えば、たとえその商品が大量に消費されなくても価格は上昇します。 原油の場合は、OPEC諸国が需要を十分カバーするだけの生産をしていると何度も説明していました。しかし市場は、もしリビアの生産が止まれば需給はひっ迫すると考えました。実際にリビアの生産量は、1月の日量158万バレルから3月には37万バレルまで約120万バレル減少しています。

 しかし、世界の在庫は43億バレルあり、日量1,180万バレルの1年分です。また、OPECの余剰生産能力は日量430万バレルあり、いくらリビアで120万バレルの原油生産が止まろうと、原油需給には響きません。ただ、原油在庫が減少するとか、余剰生産能力にも限りがあるという点において、市場価格が心理的に上昇する余地はありました。

 銀の場合、2010年の鉱山生産が2万2,900トン、スクラップからの供給が6,700トン、政府からの供給等が3,300トン、合計32,900トンの供給がありました。それに対して、工業用需要が15,200トン、宝飾品5,200トン、写真フィルム2,300トン、銀食器1,600トン、コイン3,200トン、合計27,500トンの実物需要がありました。これに投資需要が新たに5,500トン以上増えたので、需給は投資の一部分だけ供給不足という事態になりました。

 投資需要が増大したのは、銀の工業用需要は急増しているという噂によるものでした。確かに、太陽電池や半導体等電子関係の銀の需要開拓は著しいものがありました。しかし、それらの需要はミクロン単位の用途であり、とても数百トン単位になるほどのボリュームはありません。

 しかし、投資家は銀は足りないと思いこみ、かつて1979年ハント兄弟が銀を買い占めた時と同様な価格水準まで銀価格を高騰させました。銀価格の急落の直接的原因は、4月末からニューヨーク商品取引所が証拠金を2回に渡って増加させたためでありました。これもハント兄弟の買い占め事件の時と同じ理由です。当時はまた、世界中から銀食器が鋳直されて取引所に持ち込まれたことも急落の遠因となりました。

 ミニバブルの崩壊による下落商品は、原油、銀、銅、コーヒー、砂糖等だと思います。

 しかし、たとえば4.2%下落した金の場合は、史上最高値からの一時的な揺り戻しだと思っています。なぜなら、ギリシャのデフォルトは時間の問題だし、ポルトガルの総選挙の行方次第では財政危機の再燃があり得ます。

 こうしたソブリンリスクは、これらの国の債権を保有する欧州系金融機関の倒産リスクにつながります。それはこれらの金融機関に預金している人々が争って預金を引き出し、金に換える動きとなることを示唆します。また、ウサマ・ビンラディンの射殺は、テロの終焉にはならないでしょう。9.11の再発が不気味に懸念されます。

 また、9%下落したトウモロコシや12.4%下落した砂糖は、今後の天候次第ではどうなるかわかりません。ことにトウモロコシや大豆は、米国の農地を買う投機熱が出る程、土地を目一杯使って、過去最高の収穫量をもってしても、昨年の需要より3%増を満たすのがやっとです。

 しかし、石油に代わるクリーンエネルギー「エタノール」という新用途が多くの未稼働工場の操業を控えている現状を思えば、今年の天候が非常に好天にめぐまれてようやく需給が満ち足りる状況で、何か天候異変があればすぐ足りなくなる状況です。なぜならコーヒーや砂糖の場合は在庫率が2桁あるのでまだ余裕がありますが、トウモロコシや大豆の場合は在庫率が5%、4.7%しかないからです。

 原油価格が下落したので、インフレは回避されるかというと、恐らく食料価格が下落しないので、インフレ懸念は続くでしょう。インフレ懸念は金をはじめとする商品投資に資金が向きます。だから、連休中の商品価格下落は、それまで上昇してきた商品の手仕舞い売りによる一時的な清算であり、金や穀物等は今後も再騰する可能性はあると思います。

 ただ、銀や原油のように、囃されて上がった商品はまた誰かが叫んでも、またオオカミ少年が来たと言われそうです。


講師紹介
近藤雅世
株式会社コモディティーインテリジェンス
代表取締役社長
近藤 雅世



金融リアルタイムライブ講師 近藤様よりご寄稿



編集後記
 編集後記

グローバルマネー・ジャーナル第191号、いかがでしたでしょうか。

今回ご紹介いたしましたコンテンツ等、経済情勢を踏まえ、資産運用・形成していくことが重要になってきております。

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それでは、来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

株式・資産形成講座
加藤

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