●米ドル実質実効レートの下落
これに関しては、確かに歴史的な安値ではあるのですが、ユーロは高かったのでドルが下落して、円に対してもドルが下落してしまうということで、金曜日は逆にユーロの方が大分下落しましたので、円だけが少し高いという状況です。
実質実効レートというのは、二十数カ国の通貨全部を加重平均したもの、交易量に応じて平均したものなのですが、しかし、今のアメリカのドルの使い方、そして米国民自身がドルに対してあまり信頼していない、米国債もそれほど買っていないと言うこところから見て、このままずるずるいってしまうということになると、世界的には大きな問題が起こります。
また、BRICsの国々というのは、お互いの決済をお互いの通貨でやろうということも決めていますので、ドル依存、ドルの必要性というのがますます世界的に減る可能性があります。そういう点で、日本は非常に困ると思いますね。まだドルもたくさん持っていますし、ドル依存決済というのが結構ありますので、日本もそのうちに、BRICsだけではなくて、他のところも含めて、決済をお互いの通貨でやりましょうというところまで踏み込まないといけなくなってくる可能性もあります。
●EUの労働市場
完全実行ということで、新たにヨーロッパに入った東欧圏の人たちの間では労働の移動というのが、ちょっとおかしなときにはすぐに防波堤が作れるようになっていたのですが、これが完全に取り除かれたということです。ということで、人の移動が自由になったわけですが、あまり移動していません。
やはり、住めば都ということで、チェコやスロバキア、スロバニアなどから、賃金の高いドイツにみんな来ると思っていたのですが、行ったのはほとんどイギリスで、ほかのところには行っていないんですね。いろいろな問題があって、イギリスの方が住みやすいとか、外国人でも受け入れてくれるとか、そういうことがあるのです。
意外にフランスとかドイツなどには行かず、ましてや、ヨーロッパの北方の方が豊かなのですが、そちらにも行っていません。フランスにも人は来ていますが、どちらかというとアルジェリアなど、EUではないところから来ています。
結局、移動の自由はある程度できるようになったものの、実際に自由には移動していないということです。バケーションでは行っていますが。ですから、恐れていたほどの労働の移動というのは起こっていないということです。
●ポルトガル財政
ソクラテス首相が辞めて、ポルトガルは、野党も与党も、非常に緊縮予算ですけれど、それを認めているということなので、ここでもう支援を決めてしまいました。そのくらい猶予ならない事態になっているわけです。実は、欧州向けの債務というのは、邦銀の融資残高が、欧州に対して、7兆円あります。これは結構大変な状況です。
PIIGSと言われているポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインという5ヵ国ですが、具体的に見ますと、フランス、ドイツ、英国あたりは、イタリアとスペイン、そして、アイルランドに貸し込んでいるんです。そして、ギリシャに貸し込んでいるのは、どちらかというとフランスなんです。他のところはギリシャにはあまり貸し込んでいません。
それから、アメリカは、アイルランドですが、これはアイリッシュのアメリカ人が多いということもありますが、割合に少ないですね。オランダはどちらかというと、スペイン。かつて競ったオランダ、スペインですけれど。それからスペインは、ポルトガルに貸し込んでいます。こういうパターンが非常にはっきりしています。
日本はどちらかというと、イタリアとスペインとアイルランドが多く、ギリシャにはほとんど貸し込んでいませんし、ポルトガルも微々たるものです。また、イタリアは、どういうわけかスペインに貸し込んでいます。こういった、ヨーロッパの金融のお互いの勢力図というのは非常にわかりますよね。
そして、フランス、ドイツ、イギリスは、この3ヵ国が倒れたら大変なことになるというお金を貸し込んでいますから、早いうちに、これが連鎖反応しないように、PIIGSのところで止めてしまおうという話です。事始めにポルトガルを救済しましょうと、こういう話が出て来たというわけです。
●中国経済
こういう記事というのは、非常に読みにくいと思うんですが、実は購買力平価というのは、極論すれば、まやかしなのです。購買力平価というのは、一人当たりGDPが低いときには、当然のことながら、購買力平価で直すと高くなるわけです。そのお金で何が買えるかという数字だからです。
実際には、二つの国の一人当たりGDPが近づいてくると、購買力平価の差がなくなるので、逃げ水のように、それがどんどん落ちていくわけです。ですから、今の購買力平価で換算すると、中国は2016年にはアメリカを抜くといいますが、実際にはそういうことは起こらずに、一人当たりGDPが増せば増すほど、アメリカと中国の購買力平価の差がそれほどなくなってきて、だんだんとこのグラフが寝てくるというわけです。
ですから、こういう数字を読むときには、皆さんもぜひ注意していただきたいです。中国がアメリカを実際に抜くのは、2025年以降になると思います。
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