●ヨーロッパを中心としたソブリンリスク
今週ヨーロッパ問題は一段と次々に波及していく段階に入ってきました。主要国のソブリン格付けをみると、赤字で記された国々がネガティヴウォッチで、かなり下がってきています。アイルランドが格下げとなり、スペイン、イタリアも要注意で、日本と同じAaではいられなくなってきています。ギリシャがCですが、その下はD=債務不履行なので、現在は下から2番目のカテゴリーということになります。
そして、次のグラフはPIIGSといわれている、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの経済規模と財政状況です。イタリアはやはり経済規模が大きいです。政府債務残高も日本と比べると半分以下ですが、この中では極端に大きく、GDPに対しても119%と、日本ほどではありませんが、ヨーロッパの中では、ギリシャの143%に次いで、イタリアが注目を集めています。
アイルランドは経済が弱い上に、東欧がEUに入って来たために、EUの中でルーマニアやチェコへなどへものがどんどん移っていき、特にビジネスプロセスアウトソーシングという外注産業が移り、アイルランド経済がかなり弱くなってきてしまったことから、今回はかなりネガティブウォッチとなっています。
従って、ヨーロッパは引き続き目が話せない状況です。いわゆる10年債利回りがリスクファクターのようなものですが、ドイツとのスプレッドがギリシャ、アイルランドは10ポイント以上と差が出てきてしまっているのが現状です。
●アメリカの債務問題
アメリカの債務上限問題は、いくら何でも共和党がこれ以上ブロックすると、米経済そのものがネガティブになりAaaから落ちてしまうということで世界中に大激震が走るので、共和党もぎりぎりまでやった上で自分たちの言い分を入れて、オバマ大統領と妥協していくことになると思います。普通ならもう夏休みですが、そうも言っていられない状況です。最後にトリガーを引くのは格付けかも知れません。
オバマ大統領はもともと大きな政府という民主党の中でもさらに左寄りなので、かなりばらまきをやるタイプで、アフガンの戦費も膨らんでいることもあり、アメリカの財政は非常に悪化しています。それがここに来て結局、国家債務の上限天井をヒットしてしまったということです。このままではアメリカ政府が破綻し、国家運営ができなくなり、国のサービスもかなりの部分止めなくてはならなくなります。
かつてそういうことは2、3回あったのですが、今回の場合は、シーリングそのものにぶつかって、このままだと大幅なカットが必要となり、オバマプランそのものが破綻するわけです。そうすれば、来年の選挙で共和党が有利になるので、ぎりぎりまでオバマのばらまきを批判するでしょう。国家をこうした危機に陥れるのはいつも民主党だ、カーターもそうだったように、という具合です。
そして、やはりいいのはレーガンだということです。クリントンは民主党ですが、当時経済が良くなったのは実はレーガン革命のおかげだと言われています。共和党は、カーターとオバマを重ね合わせ、大きな政府はこのように破綻するのだと言いたいがために、こんなにも粘っているというわけです。
それからBusinessweek紙で、アメリカ人はかなり大きなクレジットを返済してきているととりあげています。アメリカはクレジット社会と言われていましたが、今では統計的には、日本よりも貯蓄率が上がっている上に、一般消費者のクレジットも急速に返してきているというのです。従ってアメリカ人もその気になればやれるというのですが、ただ、一方で銀行の方が貸してくれないのでこうせざるを得ないとも言えます。
また、ハウジング関係については、まだ住宅価格は上昇せず、ケースシラーも非常に悪く、住宅の新規着工も低迷しているということで、想定よりも実態は悪いとも書かれています。新規住宅着工件数のグラフを見ると、1960年代から見てもかつて例がなかった30万戸ほどに落ちています。競売に出されているものがかなりあるので、新規の住宅は作る必要がなく、極端な落ち込みが続いています。
こうしたヨーロッパとアメリカの状況を踏まえて、この週為替は3月の高値を思い出させるしんどいところまで行きました。ただ、その後は一旦戻っていますし、このスランプから戻るとは思います。
日本も想像以上に悪く、復興のためにさらにお金を使うので、結局悪さ比べで、アメリカで共和党と妥協したということになったり、アイルランドくらいまでの救済策が出てきたりすればまた戻ってくると思います。このような円高が今後も続くかというとそうは思えません。
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