●エマージング・マーケット・ボンド
現在欧米諸国を中心に世界中で問題が起きていますが、株式市場だけを見ていても全体像は見えません。そこで見ておきたいのが、米国株式市場に上場する上場投信「EMB」(エマージング・マーケット・ボンド)です。新興国の国債価格の推移を表しているため、ブラジル、フィリピンなど新興国の信用力の総和と見ることができます。
これは100ドルを起点としているグラフですが、現在111.92ドルとなっています。
では、リーマン・ショック時と比較すると、当時は実に75ドルまで落ちてしまいました。ということは、分かりやすく言えば100の新興国の社債が組み入れられていたとして、そのうち25カ国はつぶれてしまってもおかしくないと投資家は評価していたということです。
他にも、アメリカの債務上限問題が叫ばれている中、新興国の信用力には飛び火していないということは、アメリカに対して、デフォルトする可能性は極めて低く、信用力の崩壊が伝播する可能性は極めて低い、と債券投資家は判断していたことが伺えます。(筆者注*放送時点後に飛び出した米国大手格付け機関S&Pによる米国債格下げについては、筆者が代表を務める「きのしたてるのぶ事務所」ホームページにて各種情報をお伝えしています。詳細はこちらから (http://terunobu-kinoshita.com/ )
株式市場だけですべてを考察するのではなく、例えば債券市場ではどうだろう?など様々な角度で見て行く必要があります。
●中国・上海株式市場
アメリカでは中国に対して非常に弱気な投資主体が登場しているようです。例えば、あるファンドマネジャーは来年の国内総生産(GDP)の成長率が5%程度に下がると言っています。弱気の理由は大きく分けて2つ。1つは地方政府の資金調達の仕組みの不透明さやバブルの様相も呈する不動産相場、もう1つは銀行のバランスシートへの不安といった中国の抱える「構造問題」です。
中国は金利の引き上げなどいろいろ施策を打ち経済成長をコントロールしてきましたが、8%、9%あった国内総生産が仮に5%に停滞してしまうとなると、中国はダメになってしまうということなのでしょう。また、中国の地方政府の中には無計画な運営をしている主体があることを理由に、不良債権が膨大に出てくるのではないかというセンチメントになっています。
実際に、香港ハンセン指数も膠着状態になっています。去年の9月並みの水準から何も変わっていないことが見て取れます。通常の投資家であれば膠着状態が続くと弱気になってきます。しかし中国など多くの国の株式市場は停滞していますが、個別の銘柄を見て行くと大きく伸ばしている企業があります。私は中国の成長に対する確信度を高めるためにも、個別の銘柄を選定し、株価も数年かけて2倍に成長するようなところに投資していこうとする姿勢を持つ事が大切だと考えています。
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●知的労働の重要性は増している
かつては仕事を一生懸命して、貯金を5.5%の郵貯で回し、12年で倍になるということが一番魅力ある投資行動だったわけです。これはある意味目の前のことにまじめにコツコツ取り組めば結果的にお金を生むという時代だったわけです。
しかし残念ながら我々はそういう時代は生きていません。頭を使い世の中の予測をする、どういう時代が来るのかということまで分析することが必要です。さらにどんな時代が来ても大丈夫なようなスキル、メンタリティ、いざとなったときの健康に対しても準備をしておくことが非常に大切です。
そのために大切なことは"海外に関心を持つ"こと。海外に眼を向けることで自然といま世の中で起こっていることに対して敏感となり、自ずと時代の流れに関心を持ち始めると思います。
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