●米国債の一段階格下げ
格付会社スタンダード&プアーズは5日、アメリカ国債の格付けを一段階引き下げました。これを受け、世界の株式、為替市場、債券保有国に動揺が広がっています。アメリカの財政赤字がおよそ1294億ドル、およそ10兆円に達したと発表。2011年会計年度の累計赤字は1兆1000億ドルを超える見通しです。
多くの人の意見では、8月2日の共和党、民主党の最後のせめぎ合いで最終的な合意に達するだろうと言われていました。私もそう申し上げていましたが、予想通りの予定調和、妥協という結論に達しました。しかし実際アメリカの財政赤字というのはもっと深刻な状況でして、合意をしたにも関わらず格付けを下げられました。
S&Pに対する大きなプレッシャーが米国政府からも来ていますが、長期的に改善する兆しがあるわけではないということで格下げにつながったわけです。これが株の乱高下につながりましたが、リーマンショックの時と同じように1日当たり数百ドル動く展開となりました。地震の震度計が動いてしまったという状況です。
各国の債務残高を考えると、日本は約13トリリオン、アメリカは約14トリリオンとありますが、日本は経済規模がアメリカの半分と考えると、日本は使いすぎている状況が伺えます。今他に問題になっているギリシャやフランスと比べても日本の非常にまずい状況が伺えます。
アメリカの14トリリオンの債務うち、6トリリオンを政府、3.8トリリオンをFRBをはじめアメリカの組織で持っています。他に持つ中国・日本が文句を言い始めると、問題が表面化するという実態があります。
アメリカのビジネス誌において、アメリカの現状についての報告が上がってきていますが、日本もこのままいけば、引退世代が4人に一人という時代が来ます。この世代は働かず税金を納めないだけではなく、社会保障を受け取らないといけない。
こういう時系列のもと現在価値に計算し直し、歳入と歳出のギャップを見て行ったときに日本は更にひどい状況になるのではないかと思います。予定されている収入はなく、特に1000兆円に迫る公的債務がありますので、返す当てがないということも明確化してしまうのではないかと思います。
●国際通貨
円高が進んでいますが、これも錯覚だと思います。日本国債を国民が買っているんだから問題ないに違いない。ダメだったらネズミだって船から逃げ出すわけですから、逃げ出していないということは問題ないだろうというロジックです。
今回のように問題が起こると、ドル、ユーロから回避する方向で、円だ、スイスだ、北欧だという流れができています。円は年頭に対して5.7%上がっていますが、スイスフランなどは18.5%上がっています。北欧についても同様に上がっている状況です。
そんな中でフロンティア市場というものも上がってきています。実際小さなバケツで沸騰させる市場ができている状況があります。これまで目もくれない通貨が実際強くなってきています。徘徊しているホームレスマネーがどこに向かっているかということです。
スイスはついにユーロペッグ制を行おうという議論が出てきています。これによりスイスフランが落ちてきています。行き場がないマネーを注視していくべきでしょう。
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●中国インフレ
私も去年の12月に世界には4つの地雷原があると提言しました。日本、中国、ヨーロッパ、アメリカの4つです。これらが連鎖する可能性が高いということを言いましたが、8ヶ月経ってみて、問題が次々に露出してきています。爆発まではいっていませんが、地雷原に火がつきそうな状況が来ています。
中国の問題は不動産バブル崩壊から発生します。バブル崩壊の兆しというのはインフレから来ることが多いですが、最近は消費者商品に移り、国民の不満が出てきています。特に肉類は前年同月比で3割4割上がっています。これにより不満が高まっています。
中国元は米ドルに対して8.2からスタートし、今6.3くらいまで来ています。日本も360円からプラザ合意時の235円、その後76円、77円まで来ています。このプロセスを今中国が経ています。こうなると香港が困ってしまいます。香港は中国経済とのドッキングをしていますが、中国元が米ドルに対して強くなり、米ドルとペッグしている香港元が弱くなっています。
香港が安い理由がない中で、ドルペッグをはずそうかという議論が出てきていますが、2国間協定では1997年か50年間有効です。今後の状況次第では、2国間協定を変える必要にもなってくるかもしれません。
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