●海外投資家による買越額 19兆7911億円
今年に入って8月末までの海外投資家による日本株や国債の買越額が19兆7911億円に上っています。こんなにお金が入り込んできているということで、円高の一つの原因かと思われます。
リーマンショックの後には、一時、日本から逃げ出していくという局面がありましたが、今度は日本に逃げ込んでいるようです。他に良い逃避場所がないということでしょう。グラフをみると、外国からの資金の流入は非常に激しい月次のアップダウンがあることがわかります。累計でみると19兆円ということですから、かなり大きな額にはなりますが、必ずしも買い越しのコンスタントな傾向があるわけではないのです。
こわごわ投資しながら調整して、場合によっては円高になったところでもう一度利食いをして、ということが起こるので、統計はグラフのようなジグザグになってしまうということです。ただ、ならしてみると19兆円という結構大きな数字だったと言えます。
●2011年GDP伸び率 前年比1.7% ~米政府見通し~
アメリカ政府が今年のGDP伸び率が前年比1.7%に止まるという見通しを出しました。また雇用統計では8月の非農業部門の雇用者数は前月から横ばいとなって、11ヵ月ぶりの低水準ということです。
アメリカは景気の2番底が心配されていますが、やはり景気低迷の兆しや、伸びない雇用など、オバマ大統領の悩みは深いと言えます。米GDPの8月修正のグラフを見ると、2月の見込みと比べてかなりずれてきています。また雇用も失業率が9%台のままで、オバマプランでどんどんお金を使っていますが、なかなか上手く行かない状況です。
ただ、この失業率9%も実態を正確に表しているとは言えません。ブルームバーグビジネスウィーク紙の記事では、アメリカでは「ワーキングマン」が減ってきていることが紹介されていました。これは、失業率という意味ではありません。失業率は職業安定所に行った人のうち、何人が職を得られているかということから計ります。最初からあきらめて職業安定所に来なかった場合は、働いていなくても失業しているという統計には入らないわけです。
実は、記事の中に、今年の7月時点では81.2%の勤労適齢期の25歳から54歳までの男性が働いているというデータがあります。つまり大学の影響を避けるために25歳からにして、早い定年の影響を避けるために54歳までとしていますが、その年代では、実に18.8%の人が働いていないというのです。
パートもアルバイトもなにもやらず、全く働いていないのです。ですから、失業率が9%という問題ではなく、実は18.8%の男性が働いていない、またそのうちの半分くらいは職を求めに職業安定所にも行っていない、という現状なのです。
過去のデータをさかのぼると、40年ほど前の1969年には、同様の年代では95%の男性が働いていました。そこからこの数字が減ってきた背景の一部には、女性が働き始めたので職を取られたということもあります。しかし、データを見ていくと、ここのところ、オバマ政権になってから、この就業割合を示す数字は特にガクンと減っているのです。
かつては95%もあった数字がここまで下がり、さらに失業率が9%で推移しているということは、職業安定所に来ない人がいるから、つまり職を探すこともあきらめているわけです。一方女性は、この年齢層はかつては5割以下しか働いていませんでしたが、今では6割くらいが働いています。ですから、女性が入ってきたことは確かです。
特にIT関係や21世紀型の職業は女性の方が適応力があるので、就業者が増えていると思われます。男性はどちらかというと、サブプライムの時に家をたくさん造ったというようなものがやはり男性の仕事で、そういうときには実際にデータ上も就業者が増えていますが、現在は労働市場の状況がかなり変化してきているわけです。このように、非常にシリアスで大きな労働の地殻変動が起こっているという問題も抑えておく必要があるでしょう。
|