●日経平均、topixの推移と背景
世界の株式市場が軟調な推移をする中、東京のマーケットも右肩下がりです。日経平均株価の一年間の推移を日足で見ると、震災時の安値を割り込んでしまっているのがわかります。3月15日に8227円をつけた時には、前後の1週間の平均出来高が50億株以上になっています。15日は福島原発の水素爆発のニュースが流れたことで商いが一気に膨らみ、出来高は一日で過去最高の57億株となりました。それだけ商いが膨らんだところに8227円という安値がつきました。
その後の戻し歩調から再び下落してきたわけですが、8月からの下落の時点ではアメリカ国債の格下げがありました。それにより、ドルが売られて日本株が円高を嫌気して売られるという流れとなりました。さらに9月に入って今度はユーロ圏、特にギリシャが発行した国債の償還時期となり、資金調達が難しいのではないかというデフォルト懸念の影響で、日本株も軟調に推移しています。ただ、こうして見ると、国内要因ではそれほど悪い話は出ていないということは頭に入れておくとよいでしょう。
また、topix(東証株価指数)も3月の取引時間中の安値を割り込みました。ここを割ると、今度はリーマンショックの時の安値を意識する必要も出てきます。3月の安値の際は商いが膨らんだので、割り込むためにはそれなりのエネルギーが必要となるわけですが、割り込むと売りが一気に出る可能性もあるので注意が必要だと思います。
●短観(想定為替レート、経常利益)
では、実際の国内景気はどうなのでしょうか。9月調査の日銀短観の結果を見ると、大企業製造業のDIは足元では+2で、予測値と同じでした。また先行きは+4で、予測値を上回る値となっています。足元はあまりよくないとしても、株式市場の動きが景気の状態を正確に表しているとすれば、おそらく経営者の見方も先行きは悪化となるはずですが、それとは逆の結果が出ています。
前回の6月調査では足元が-9、先行きが+2でしたので、前回からもはっきりと改善を示しています。一方、非製造業では足元、先行きともに+1と、予想値の+2を下回りました。ただ足元から先行きは横ばいなので、やはりマーケットの動きとは差があります。
ではマーケットは何を見て下げているのかということですが、短観の中に目安となる数値が他にもあります。それが想定為替レートです。2011年度の通期の企業の想定レートは、6月調査では82円59銭、今回9月調査では81円15銭でした。実際のドル円の水準とはずいぶんずれています。
企業側はこの円高を吸収できないのではないか、つまり利益の下方修正があるのではないかという見方があると思います。6月、9月と流れを見ても、企業側は円高をあまりマイナス要因として反映していないように見えます。これが、ひょっとするとマーケットにとって読めない部分であり、リスク要因としてとらえられているのかもしれません。
さらに、それが経営者の希望的観測なのか、あるいは実際に為替の影響を受けない自信があるのかを見極めるために、短観の中にある経常利益の数値も見てみます。大企業製造業では、5月当初、年度の計画では前年度比-0.3%という見方でした。それが今回、修正率が-0.7%と出ています。下方修正ではありますが、僅かな下げ方です。
非製造業に関しては、5月当初には前年度比-7.2%、その修正率は今回-1.2%となっています。5月は、本決算が終わって次の期の収益計画を出す月ですが、その時点の数値に、今回短観で出た数値の修正を加えるわけで、経営者はあまり落ちないのではないかと見ているのがわかります。一方、5月からの株価の値下がりを単純に日経平均で1万円から8千数百円とすると20%近い下げとなるので、やはりマーケットでは不透明要因の為替レートを意識しているのでしょう。
ただ、私の過去の経験では、トップラインと言われる売上高が落ちていなければ、円高でも企業側はコスト削減で吸収している例が多くあります。さらに最近では日本企業は海外進出をしているので、海外の工場で生産しているケースも多く、そのため、ある企業では円高の影響はプラスマイナスゼロだとしています。
ですから、円高により輸出関連企業が全てマイナスになるかというと、今の対ドルで5円近くの乖離を悲観しすぎていると言えるかもしれません。ただし、対ユーロはどうかという点では注意が必要かと思われます。
今月は決算発表が相次ぎますが、円高でもある程度利益を確保できるというのが希望的観測なのか、実力なのか、それが確認された時点で日本株自体の見直しも始まるかもしれません。そういう期待がまだ残っているのではないかと思います。
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