●欧、米、日、中の金融当局が検討する欧州財政危機国デフォルト
欧州危機に対応するため、IMFが資金を出すわけですが、EUの共同債という形で一つのファンドを作り、そのお皿にIMFがお金を50兆円貸し出すということが考えられていました。ところがもともとEUでは共同債の発行には、15ヵ国中4、5ヵ国が大反対をしています。赤字国はさらに赤字国債を発行することを嫌い、このEU共同債は賛同が得られず、幻に終わる可能性が高そうです。そこで、EFSFの組織、あるいはEUの構造基金にIMFが50兆円をつぎ込むということが考えられています。
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ただ問題は、その時期が間に合うのかどうかです。12月には先進国だけで国債の借り換えの金額が60兆円近くになります。その時にイタリアの国債の借り換えもあります。イタリアの銀行や国債を持つ欧州の銀行が危険な状態であれば、ヘッジファンドがイタリアの国債を売りまくることになります。イタリアの国債利回りが7%、8%となればイタリア政府は払えず、部分デフォルトが起こってイタリアが厳しい状態になってしまいます。
したがって、遅くとも11月末までには銀行の危機は回避されなくてはいけません。ところが、今までブラジル、アルゼンチン、韓国などに対してIMFが資金を出す際には、お金を集めて投入するまでに2.5ヵ月が必要でした。つまり11月末にはとても間に合わないのです。
そこで、協力すると思われるのがFRBです。FRBはすでに、欧州の金融機関に対して、年末の中継ぎ資金が足りなければ無制限にECBを通じて貸し出すと表明していますが、それだけではありません。さらに今回、IMFを手伝うと思われます。IMFの資金供給が間に合わない緊急事態のために、ブリッジファイナンスとしてFRBが資金を出すのです。その証拠に、前回のFOMCで欧州危機がアメリカの景気下ぶれ懸念の最大のリスクであるということをわざわざ言っています。
FOMCの議事録というものはそもそも、1929年にFRBができた時に、議会に対してFRBの状況を報告するためにできたものです。つまり、前回の議事録によって、FRBは欧州を救わないとアメリカ景気は下ぶれるとして、欧州を救うことを示唆し、議会は何も言わなかったことで、FRBが何らかの資金供給をすることを了承したと考えられるのです。
さらに、その議事録が出た当日に、IMFの欧州局長がヨーロッパの金融機関のうちの4割がすでにバーゼル3の基準を満たせていないという発言をしています。貸し出せる金額が限られて欧州の金融システムが成り立たなくなってしまう状況を回避するには、20兆円以上の資本増強が必要だと言ったのです。FRBとIMFの近い関係を考慮すると、この発言も20兆円が足りない場合にはFRBが出すことを示唆したものと言えます。
IMFの対応が間に合わない場合にはFRBが動き、最悪の事態は回避できる可能性が高いと思ってよいでしょう。
●ヘッジファンド売りで世界株式下落へ
11月始めから半ばにかけて、世界のマーケットは下落する可能性があります。2007年3月のベアスターンズショックから正確に5ヵ月おきに、世界のマーケットは出来高が増えては暴落というパターンを繰り返してきました。そのサイクルは、実は今年3月半ばの暴落まで続いていました。東日本大震災の下落はそのサイクルにちょうどはまったので大きく落ちたと言えます。
その後状況は悪化しています。というのはそのサイクルが5ヵ月から3ヵ月に短くなっているのです。5月2日にマーケットが下落、6月17日に下げ止まり、8月2日頃からまた下落し9月27日まで17%下げています。3ヵ月ごとに下げ、しかも下落率も同じなのです。下落率が縮小するならよいのですが、大きな下落が続いている状況です。
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刻々とリーマンショックに近づいている可能性が高いと言えます。3ヵ月サイクルですから、11月2日に下落ということが予想されます。 EUの10月23日のミーティング後、急に下落する可能性もあり、11月初めの状況は良いとは考えにくいのです。
ただ、これは単なる経験則です。もう一つの下落の要因はヘッジファンドです。一年間で一番ヘッジファンドの売りが大きいのが11月15日なのです。決算月の45日前までに解約を申し出る45日ノーティスというルールがあり、これは3ヵ月に一度に来ますが、一年間に一度しか解約しないヘッジファンドもこの11月15日には確実に解約するのです。
世界でも有数のヘッジファンドの社長に話を聞きましたが、今年は20%以上儲かっていて顧客の評価も高いそのファンドも11月には3000億円の解約が出るという話です。また他にも、ヨーロッパ、アジアのヘッジファンドはすでに解約90%というところもあります。そこが今回11月にはもっと解約で売られると言われています。ヨーロッパ株や韓国台湾などのアジア株のヘッジファンドが大きく売られてくると考えられるのです。
こうした動きから見ても、世界的に株が下がらないわけはなく、11月半ばにかけて日本株も再び日経平均で8300円の攻防があると見ておいた方がよいでしょう。
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