2012/03/14(水)「揺れる欧州問題の現状を探る」資産形成力養成講座

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揺れる欧州問題の現状を探る

 

揺れる欧州問題の現状を探る

 

 今回のギリシャ支援の決定は非常に意外な決着となりました。金融機関の50%以上のヘアカットは、ヨーロッパのトップが集まって決めてしまったものですが、個人の持っているギリシャ国債は、この対象外だと思われていました。この機会に、逆に一儲けしようと言う人たちが、3分の1程度の値段に安くなっていたギリシャの個人国債を喜んで買っていたのですが、この人たちがうっちゃりをくらったわけです。

 個人まではヘアカットはないだろうと、スペキュレーターの人たちがギリシャ国債を買っていたので、個人も同様となり、ある意味、気持ちのいい決定となりました。債務全体からみると額も小さく、手続きの煩雑さが考慮されたためか、サムライ債は対象外となりました。日本の投資家にとっては救いですが、この後、ギリシャがサムライ債の償還をできるのかというと、疑問の余地も残ります。いつ満期になるのかということも含めて、今回のヘアカットの対象にはなっていないというだけで、まだ安心とは言えない可能性もあります。

 ギリシャ問題はこれで解決したわけではなく、さらにいろいろな追加支援が必要になってきます。今回はひとまず安心してユーロも小康状態を保っていますが、そのあと、ポルトガルとかスペインなどがどうなってくるかにもよります。一応、アイルランドや、欧州外ですが、アイスランドも回復の方に向かっているので、その意味では、最悪の事態は脱したと言えますが、もう一度、第二波、第三波があると思われるので、安心はできません。

 もう一つ、非常に重要なことは、今後の対応です。メルケル独首相とサルコジ仏大統領は、財政に問題がある国に対して、とにかく緊縮バジェットをしろと言っていますが、アイルランドなどの例では、緊縮財政だけではダメで、やはり成長戦略がなくてはいけないと言えます。つまり、削減だけではなく、成長というものに対してもっと真面目に取り組まねばならないというフェーズに移ってきているのです。

 イタリアのモンティ首相は、メルケル独首相やサルコジ仏大統領が、カットばかり訴えているのに対して、そうではなく、新しい産業を作っていかないと、イタリアももたないとして、成長の方にも力を入れ始めています。これからは、今まで講義をしていたメルケル氏とサルコジ氏に、モンティ氏が教える番ではないか、という記事がビジネスウィークにも出ています。

 日本でも、債務削減のためには無駄なものは大幅なカットをしなくてはいけませんが、新しい産業を呼び起こさないとだめだという点は、まさに中心的なテーマです。アメリカは、放っておいてもシリコンバレーなどで新しい産業が興ってきますが、他の国は国が一律カットすると皆で暗くなってしまいます。

 ユーロ圏も、実は成長率が2012年、マイナス0.3%と、見るたびに下がってきています。各国の予想経済成長率を見ると、ポーランド、リトアニア、ラトビア、ルーマニアなどの東ヨーロッパ系統は高い成長率ですが、ギリシャはマイナス5%以上です。今問題になりつつあるハンガリーはほぼ0です。

欧州各国の予測実質経済成長率

 また、ポルトガルやイタリアなどが大きく落ちています。つまり、カットによって落ち込む分が大きく、将来に希望が持てないようなカットにつながることが問題です。モンティ氏は、それを蹴り返しにかかっているということなのです。

 また、今後の成長の一つのキーとして、移民があります。ヨーロッパには、移民がある程度必要だという認識があるのです。既存の人たちだけでは、新しい成長のエネルギーが出てこない、しかし入れすぎると、今度はその人たちを賄っていくのが大変になり、その国の人たちが雇用を奪われ、失業が増え、社会コストが上がるというのが移民です。

 実は、1999年からどのくらい外国人が増えたかというと、スペインでは700%、つまり、昔いた外国人の人数の7倍以上が入ってきているのです。フランスでも30%、ドイツでも27%などとなっています。スウェーデン、ノルウェーなどは86%、フィンランドでも82%などとなっており、外国人の増加は、成長には欠かせないことなのです。その人たちが、底辺の、安いコストの労働力になり、場合によっては新しい技術を持ち込んでくれるということなのです。

 ドイツでは、2050年までに、今の経済を維持するために、外国人を1100万人入れないともたない、イタリアでさえも900万人入れないとダメだと見られています。日本でも、今のGDPを維持するためには、以前から私が計算しているように、年間39万人の外国人を入れていく必要があります。10年間で400万から500万人になりますが、それだけ入れないとダメなのです。

 少子高齢化により衰退国になるのを反転させるためには、子どもが増えないといけませんが、フランスのようにいろいろな制度を作って子どもを増やすと、そのためのコストが多くかかります。手っ取り早いのは外国人を入れるということなのです。外国人が新しい労働力になってくれると、即効性もあります。

 ドイツではそうした考慮をして計算し、1000万人となるのですが、日本では全くやっていません。介護士などでやってはいますが、非常に難度の高い試験に合格しないと日本では働けなく、全く話にならない状況です。

 ヨーロッパの支援に話を戻すと、ECBがユーロ圏の銀行に対して約57兆2千億円の資金を供給することになりました。同様の長期資金供給は昨年12月に続き2度目で前回の4892億ユーロを上回り、欧州中銀の1回の資金供給としては過去最大を更新しました。

 欧州債務危機で財務基盤が弱っている銀行を支援し、域内の国債購入や企業への融資に資金を回らせるのが狙いです。つまり、日本や中国と同じくらい、中央銀行の持つ役割が重要になり、必要な時には貸し出しや通貨防衛も堂々とできるようになります。

 ECBは、制度的に、理事会を開いて決めないといけないので、機動的な決定できないという問題点はありますが、このような取り組みはヨーロッパは安定化に向けてかなり強い武器を得たということになると思います。

 

日本の金融機関に試算提示を要請

 

 IMFが日本の金融機関に、金利上昇による損失の試算を要請しました。日銀が以前に、金利が1%上がると負担が何十兆か膨らむとした試算を出しましたが、そうするとさらに金利が上がるという悪循環になります。今のところ、そういう兆候はなく、1%近辺で推移しています。これが、ヨーロッパ並みに、4%、5%となってくると、警戒水準ですが、その場合には日本の金融機関は、日銀も含めてほぼ即死してしまいます。

ドル相場と貿易収支、経常収支

 当然IMFは、それが分かっているので、銀行に試算を出せと言っているのです。IMFにとってみると、欧州よりも日本の方が状況は悪く、危機に対する抵抗力がないと証明したいという意図が見て取れます。これは、学者が試算することも可能で、隠すべき資料でもないですが、国民がこれを知らないということが一番の問題です。また、政府がこれをひた隠しにしていることも問題だと思います。

 いずれにしても、IMFが試算を要請してきているので、当然、金融関係者の知るところとなり、トレーダー達が知るところとなります。トレーダー達が資料を見て、空売りから入ってくるという、嫌なシナリオが予想されます。IMFのラガルド専務理事が、そのシナリオの入り口に、意図的に持って行っている、ということがなきにしもあらず、と言えそうです。


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