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最近の金価格は、株価と連動した動きをしています。とくに2012年1月から7月までの日経平均株価と東京金価格は、グラフが重なってしまうほど相関しており、その相関係数は0.88と高いものになっています。
東京金価格を予測するのと株価を占うのが同じであれば、今週(7月30日の週)は三つの大きな出来事が控えています。一つは、31日の米国連邦準備制度理事会(FRB)の公開市場委員会(FOMC)で、ここでQE3(量的金融緩和第三弾)が行われるとは思いませんが、バーナンキ議長が、停滞する米国経済や労働指標に対していつどのような手を打つかについてのヒントが与えられる可能性があります。市場がポジティブに受け止めれば株価は上昇し、金価格も上がるでしょう。 二つ目は、2日の欧州中央銀行(ECB)理事会です。ドラギ総裁は、昨年末と今年2月に二度にわたり、3年物資金貸し出しを1兆ユーロ近く行い(LTRO)、それまでの欧州金融機関の倒産リスクを軽減し、ドラギマジックと称賛されました。各国金融機関はECBから借り入れた資金で各国の国債を購入し、利鞘を稼ぐことに成功しました。そうした資金が欧州各国の国債価格を安定させ、利回りを押し下げました。 ところが、その効力が薄れてくるにつれ、再び10年物イタリア国債やスペイン国債の利回りが7%を超え、スペイン国債は、7月第三週には3年~5年物国債の利回りも上昇して一時は10年物よりも高くなるという逆イールド現象が起きました。このことは、スペインやイタリアの国債を買い支えていた金融機関が、保有する国債の価値が減価することを意味しています。そこでドラギ総裁は、7月26日「ユーロを維持するためには如何なることでも実行に移す」と述べました。市場は、ECBが8月2日のECB理事会においてECBが欧州各国の国債を購入する(SMP)と期待を抱いています。 ところが、ドイツのメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党でバイエルン州を支持基盤とするキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー党首は、29日のZDFテレビのインタビューで、「国家に対する支援はECBの仕事ではない。ECBは過去にドイツ連銀が実施したのと同様に、物価安定の維持に向けた政策を追求すべきだ。ユーロ圏各国の責務をECBが果たすべきではない」と言明。「ECBが大規模な国債購入を実施するなどあり得ないことだ」と続けました。 したがって、8月2日のECB理事会で、どのような対策が出されるかが注目され、市場が落胆するような内容だと株価は下落し、金価格も下落するでしょう。逆に、国債購入が実施されれば市場は欧州金融不安や財政不安を楽観視し、株価は上昇金価格も上がるでしょう。 今週の三つ目のハイライトは、8月3日(金)の米労働指標の公表です。6月の米国失業率は8.2%、非農業部門雇用者増加数は8万人でしたが、7月の事前予想は、失業率8.2%で変わらず、非農業部門雇用者増加数は10万人です。これより失業率が改善し、就業者数が多ければ株価や金価格は上昇するものと思われます。
一方、米国の干ばつ状況は、依然として続いており、米農務省は、7月18日全米29州の1,297郡について、干ばつによる災害地区と認定しました。同省発行の干ばつ地図を見ると米国の下半分が真っ赤に染まっています。前回大干ばつだった1988年と違う点は、今年は3年連続の不作だということです。昨年度、米国の大豆生産量は、前年度比▲8.2%で、米農務省は今年8月末の期末在庫率を5.5%と公表していますが、これは需要が前年度比▲5.0%に減少することを前提としています。つまり需要が昨年並みにあるとするなら、今年8月の期末在庫はほぼゼロになってしまう計算です。
トウモロコシはウクライナや欧州等の代替ソースがありますが、大豆の場合は南米の今年の生産が1割以上の減産が確定しており、世界中米国以外にはどこにも供給余力はない状況となっています。大豆の需給はとくに厳しい状態が続くでしょう。
ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ講師 株式会社コモディティーインテリジェンス 代表取締役社長
近藤 雅世
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