2012/08/29(水)「国際収支統計を見る意味(西岡純子)」資産形成力養成講座

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国際収支統計を見る意味(西岡純子)

経常収支バランスの赤字の多い国は、欧州財政危機問題の中心国が続く

 

 経常収支は、国の中にどれだけお金が余っているのかを示します。経常収支が黒字の国は、貿易やサービス取引、金融投資を行った結果、利益が国の中に戻ってきていて、それが余っている状況にあります。出て行くより入ってくる分が多い状況です。一方、赤字の国は、国が一気に閉ざされてしまうような状況になると、国全体で見てお金が足りなくなり、外からお金を借りないとどうにもならなくなります。

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 各国の経常収支バランスを見ると、赤字の多い国は、ギリシャ、キプロス、ポルトガル、スペイン、イタリアと、欧州財政危機問題の中心国が続きます。日本も財政問題では困難な状況に直面していますが、欧州ほどはクローズアップされません。欧州ばかりが、大幅な金利上昇や通貨下落に見舞われているのは、まさしく、この経常収支が赤字だからこそ、危機が危機を呼んでいるのです。国の中にお金が足りない状況なので、外からお金を調達しないと回らないわけです。

 一方、黒字の国々は、シンガポール、マレーシア、台湾、さらにタイ、中国など、アジアが多くを占めていますが、これらの国はずっと昔から黒字だったわけではありません。90年代後半は赤字を経験していた国です。アジア通貨危機は、当時タイの経常収支が大幅に赤字だったことに目を付けたヘッジファンドが、タイバーツに売りを浴びせたのが発端でした。赤字だったタイは通貨が急落し、アジアの各国に波及したわけですが、結果的には、通貨の下落により、アジア諸国は競争力が強まり、輸出主導で経常黒字を取り戻したのです。

 欧州諸国も、今後は緊縮財政で低成長を余儀なくされますが、経常収支が赤字である限り、資金流出懸念、ファンディング懸念はつきまといます。しかし、一旦、通貨が調整をすれば、輸出競争力が戻り、ドイツなどが牽引することで、ユーロ圏全体の成長率は上がります。結局、最終的な調整主体は為替であると言えるのです。

経常収支が悪化することが持つ意味

 

 経常収支が悪化することはどんな意味を持つのでしょうか。為替との関係をグラフで見ると、80年代半ばから、日本の経常収支は上がったり下がったりを繰り返し、その後90年代後半からは一貫して上がり続けました。新興国経済が非常に強く伸び、日本も輸出主導で成長していたからです。輸出による利益が大きく伸びた時期でした。しかしその後、リーマンショックが起き、経常収支は大きく下がりました。赤字には至らずに戻したものの、2008年の水準には届かず、2011年3月の東日本大震災を経て、一旦赤字に転落、その後は小康状態を保っています。

 80年代、90年代には、この経常収支の動きと、為替の動きに一定の相関関係がありました。為替は、経常収支の動きに対して、やや後を追うような形で、同様の動きをしていました。経常収支を支えていた輸出が黒字になるということは、事後的には通貨が上昇する要因となり、為替が後から追いかける形で動くのです。逆に経常収支が悪化する時は、通貨が安くなるので、輸出競争力が回復して、事後的に経常収支が改善するというサイクルが生まれます。

 ただ、詳しく見ると、2000年から2008年頃にかけては、相関が崩れる時がありました。経常収支が上がり、一方で通貨がどんどん下がったのです。この時は、新興国経済が拡大により経常収支が上がり、本来ならば通貨も上がってくるはずですが、後ろでは日銀による量的緩和政策の徹底や、円キャリートレードの拡大があり、円安が進んでしまったという異常な時期だと言えます。理屈として考えると、経常収支と為替の間には相関があるので、今後も経常収支が悪化するという思惑が出てくる局面では、通貨の減価リスクを併せて考える必要があるでしょう。

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 さらに金利との関係も見てみましょう。先程述べたように、経常収支とは国の中にどれほどのお金があまっているかということです。経常収支が悪化すると、最終的に国の中に残るお金が減るので、国債の安定消化が難しくなるという懸念が考えられます。

 日本では財政問題が非常に大きなテーマですが、年間で44兆円近く新規に国債を発行しています。それをどれだけ上手く国内で安定的に消化させるかということが重要視されています。もちろん、海外の投資家に持ってもらうことは悪いことではありませんが、安定的な消化を考えると、国内の投資家にいかに多く保有してもらうかということが重要です。

 経常収支が赤字になるということは、いわば、国債発行が44兆円に対して、それを賄う部分の余剰資金がないということになるので、国債価格が下がって金利が上がるという懸念を思い浮かべることになります。

 そう考えると、今後、経常収支がさらに悪化すると、金利が上昇することを想定しておかなくてはいけませんが、ただ、経常収支の悪化が、為替の円安につながることはあっても、かならずしも、金利上昇にすぐつながるということではありません。経常収支の悪化は為替に対してはダイレクトに影響します。決済通貨ドルに対する需要と供給のバランスが逆転するわけなので、まさしくドル高、円安要因になるはずです。

 しかしながら、経常収支がフローベースで赤字になった時に、即座に金利上昇になるかというとどうでしょう。日本の投資家、主に銀行部門が、保有していた日本国債をすぐに売却するかというと、必ずしもそうではないと思われます。むしろ安定的な投資対象として国債を保有し続けるだろうと考えると、経常収支が悪化しても、金利は上がらないと捉えるべきだと思います。

 現在、経常収支はかろうじて黒字ですが、2010年代後半までは、黒字は維持されるだろうと思います。フローベースで黒字が維持されれば、その余ったお金の投資される対象が、例えば外国債や海外企業の買収の場合、対外資産がどんどん増え、ストックとしての資産が増えて行くことになります。そして、それ自体がソブリンリスクに対する緩衝剤にもなると考えられ、やはり、経常収支が赤字になることが展望されてしまった場合でも、すぐに金利上昇にはつながらないだろうと考えます。

 経常収支は、グローバルで見ても、ソブリンリスクを考える上で非常に重要な指標です。ましてや日本では、人口高齢化で経常収支が悪化するとう貯蓄投資バランスの問題、東日本大震災以降、輸出が伸びなくなってしまったという事実、輸入金額も増え、貿易赤字が定着してしまったことから、日本が国として金融立国になって行くという大きな流れがあります。これまで以上に、国際収支統計・経常収支の位置づけ、重要性は飛躍的に上がっていると思います。


講師紹介

西岡 純子

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師

アール・ビー・エス証券会社 東京支店
リサーチ・ジャパン チーフエコノミスト

西岡 純子

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