2013/03/21(木)「リーマンショック後の日本一人負け要因とは?(武者陵司)」資産形成力養成講座

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リーマンショック後の日本一人負け要因とは?(武者陵司)

リーマンショック後の日本一人負け要因とは?

 

 世界の株式時価推移を見ていくと、リーマンショック後に約半分まで落ち込んだ株式時価はV字型の回復をし、大底から約2倍になり、ほぼリーマンショック前の高値まで戻りました。一方各国の株価指数の推移を見てみると、世界の株式市場がリーマンショック前の近辺まで戻したのに対し、唯一の例外が日本です。日本だけはリーマンショック後の底を這っていました。

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 この日本の低迷状態が妥当なのか、異常なのかという議論は従来からありました。多くの人々は低迷している日本の株が普通であり、アメリカなどの上昇は偽りの夜明けだと説明していました。異常な金融緩和と、空前の財政出動というカンフル剤で元気づけしているだけですから、問題を先送りしているだけでメッキがはがれればいずれ落ちてくるというのが理由です。白川日銀総裁も諸外国の上昇は偽りの夜明けであり、異常な金融緩和を行ってもむしろ危険であるとするスタンスを取っていたように見えます。

 しかし現在のアメリカなどを見てみると、偽りの夜明けとは言えないほどの力強い経済となってきました。つまり、明らかにリーマンショック後のV字回復は世界のトレンドなのです。ではなぜ日本だけが低迷していたのでしょうか?

 リーマンショックやユーロ危機は日本にとっては対岸の火事とみられていました。むしろ、アメリカもヨーロッパも不良債権で銀行部門は滅茶苦茶でリスクを取れないが、日本はリーマンショックの遥か前に金融不良債権の処理は終わっているため、これからは日本が有利になると思われていました。

 白川総裁も、日本の金融不良債権の処理は終わっており、この経験を教えてあげますということを誇らしげに言っていました。結論から言いますと、経験を教えてあげますという姿勢自体がむしろ問題だったと言っていいと思います。

 各国の中央銀行はどれほどの金融緩和を行ったでしょうか。グラフは中央銀行総資産のGDPに対する比率を表していますが、リーマンショック以降の主要中央銀行の金融緩和の動きを示しています。それによると、イギリスの中央銀行はリーマンショック以来、4倍の金融緩和をしました。イギリスの中央銀行はバランスシートを膨張させて大胆な緩和をしたのです。また、アメリカは3倍、ヨーロッパは2.3倍です。それに対して日本は1.4倍。世界の中で日本の金融緩和がいかに小規模かということがよくわかります。

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 こうして金融緩和が遅れたことにより、日本の金融は他国と比べて、相対的に引き締め状態にあったということになります。それによって直ちに起こるのが円高です。

 韓国ウォン、インドルピーは、リーマンショック以降、円に対して半分まで値下がりしています。その他、ユーロもドルも円に対して3割値下がり、人民元ですら2割値下がりし、円はリーマンショック以降の4年間、独歩高でした。このように急激に円が強くなったということは非常に大きなダメージを日本に与えました。

 一つは、円が強くなり、日本にデフレがまた戻ってきたということです。円が2倍になると日本人の給料が他の国と比べて2倍になることを意味します。世界は完全に一つの経済に統合されているので、日本だけが生産性も変わらないのに給料が2倍になるということは許されません。従って、円が2倍になり給料が2倍となる時、倒産しないために企業ができることは、2万円の給料を1万円に下げて競争力を維持することです。

 つまり、円高は直ちに日本企業のコスト引き下げ努力をもたらすことになるのです。ウォンが円に対して5割安くなった時、日本の企業は韓国企業に対して人件費を半分に減らさないと競争にならないのです。そしてそれにより、デフレが起こるのです。

 そして、もう一つ円高によって起こったことは、日本企業の競争力の劇的な悪化です。特にエレクトロニクス、機械など、アジアの台頭著しい産業は、日本企業が競争力を大きく失ったわけです。

 このように見ると、リーマンショック後の日本の一人負けの最も重要な原因は、日本の金融緩和が遅れたことであり、それが不必要な円高をもたらし、日本企業と日本の物価に本来不必要な追加的なダメージを与えたと考えられるのです。結果として日本の株と日本経済は一人負け状態になります。これは日銀不況と言ってもよいでしょう。


金融政策の重要性

 

   金融政策が経済に与える影響について、歴史を振り返って考えてみましょう。今起こっていることと全く同じことが、攻守入れ替えて80年前にも起こっていました。1930年代の大恐慌の時です。

 ウォール街の大暴落を起点として大恐慌が起こり、結局は相手国の非難合戦に結びつき、結果として1940年代の第二次世界大戦をもたらしたとすら言われています。大恐慌は経済のみならず、人類に大変な悲劇をもたらしたのです。そのような悲劇を繰り返すまいと、大恐慌研究は依然として経済学者にとって重要なテーマの一つとなっています。その大恐慌研究の最大の権威である学者が、アメリカの金融の総司令官、バーナンキFRB議長です。

 1930年代に何が起こり、主要国やマーケットがどのようにして立ち直ったのか、振り返ってみましょう。1929年にNYの株が大暴落し、そこから大不況が起こりました。主要国は相次いで政策を転換し金融緩和をしましたが、一番早く金融緩和をした国の一つが日本です。

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 日本は1931年の後半、ウォール街の暴落が起こってから2年後に金融緩和をしました。当時の日本の大蔵大臣は高橋是清で、金本位制を放棄し、円の価値をドルの半分まで切り下げたのです。こうした金融緩和と通貨の切り下げによって日本経済は急激に復活しました。株は1931年を大底にして5割まで下がったものが3年後には元のピークを超え、生産も危機が起こってから4年後には過去のピークを超えるような増加が定着しました。つまり、1930年代の大恐慌の傷跡は、主要国の中で日本は非常に小さく済んだのです。

 一方、最も深刻なダメージを受けたのがアメリカです。アメリカは1933年まで大不況になってから4年間、金融引き締めが続いたのです。当時のフーバー大統領は、バブルや投機をもたらし、そもそもの混乱を作った金融機関を整理しようとムチの政策をやり続けました。大不況でムチの政策をやるので景気がどんどん悪化しました。

 結局アメリカが金融政策の転換、つまり金融緩和をしたのが1933年、ルーズベルト大統領が就任してからです。したがって4年間のこの引き締めがアメリカ経済を深刻な危機に陥れたのです。株価も89%暴落し、その後も低迷が続き、この高値を更新するのに20年以上かかっています。生産もわずか3年で5割落ちこみ、長期にわたって低迷しました。

 このように大恐慌のときには、アメリカが大きなダメージを受け、結局それが世界全体に大不況をもたらし、戦争という悲劇の大きな原因にもなったのです。そして、このときの顛末をもっともよく知る人が、リーマンショック時のアメリカにおける金融政策の総司令官になったわけです。

 バーナンキ議長は、今回の危機を受けてまずやらなくてはいけないのは壮大な金融緩和だと考えたのです。直ちにバランスシートを膨張させて金融緩和を開始し、QE1、QE2、QE3と従来にない量的金融緩和を実施、壊れていたマーケットを完全に立ち直らせたのです。これはまさしく1930年代の歴史を学んだバーナンキ議長が自らリーダーシップを発揮し、断固として実行したことなのです。これにより1930年代当時最も回復の遅れたアメリカが、今回は最も早い回復を見せているのです。


講師紹介

武者 陵司

ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ
資産形成力養成講座 講師

武者リサーチ代表
ドイツ銀行グループアドバイザー

武者 陵司

3月11日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

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