日経新聞は先月30日、「NISA1年、3兆円始動」と題する記事の中で、NISA(少額投資非課税制度)が始まって1年が経過し、一般の家庭でも利点がある資産づくりの手段として浸透しつつあると紹介しました。推計では口座開設は去年末で800万口座に達したとみられ、金額にして3兆円規模の資金が株式市場に流れ込んだとしています。
新聞で大騒ぎして取り上げている割には、その規模は3兆円です。金融資産1600兆円のうちのたった3兆円に過ぎないのです。800万口座で3兆円なのに大騒ぎしすぎだと思います。日本の家計の金融資産1600兆円の中身を見ると、ほとんどが現金預金です。株、投資信託は合わせて242兆円で、それと比べても3兆円は僅か1%でほとんど誤差の範囲です。一方アメリカの場合には、株式・出資金で33%、こうして比較してみると、日本は少し株にシフトしたと言われていますが、全体の統計ではまだまだ一滴に過ぎず、なぜ大騒ぎするのか疑問です。
NISAについては、おそらく金融機関が広告代だけでもかなり多く支払っていると思われます。政府が株を囃し立てるためにやろうとしていると思いますが、GPIFと同様に、株が値上がりし、アベノミクスがうまくいっていると見せるためのやらせです。NISAの残高は、日本は3兆円に対し、イギリスは株式で22兆円と、より多くなっています。アメリカはそうした事は気にせずに株に投資するので21兆円程度にとどまっています。日本の場合、年間の限度額が100万円ということで、実際に株式市場に影響を与えるような規模ではないと言えます。
その中で、日経新聞は先月30日、株価指数等に連動するETF(上場投資信託)の2014年の売買代金は、累計30兆円と、1年前に比べて6割増加し、過去最高を更新したと報じました。
ETFはあまり広告などをしていないのに、NISAよりも大きな規模に膨らんでいます。ETFが大きくなると結局は株に資金が行くので悪くはありませんが、ETFはパッケージであり、個々の会社について興味を持って考えて投資するわけではないのです。ですから、ETFがあまり増えてくるのはいかがなものかと思います。アメリカの場合はもちろんETFや投信は非常に大きいものの、それよりはるかに大きいのが株式です。そうすると、一般の人でも個々の会社について非常によく知っているのです。個々の企業に興味を持ってもらうという点では、手放しで現状を評価するのもいかがかと思います。 |