その後も2度上昇した局面がありますが、これは少しイレギュラーな理由によるものです。去年12月の上昇は、実は東京電力一社だけであげているのです。日経平均株価採用の225銘柄のうち、東京電力はこの時まで業績予想を出していませんでした。どうなるかわからないという状況で業績予想を出していなかったのです。しかし、国からの補助金などもあり、結局今期は数千億円と言う大きな黒字になると発表したので、日経平均のEPSが跳ね上がってしまったのです。
続いて1月22日にも大きく30円ほど上昇していますが、これは企業業績とは全く関係ない上昇で、日経が計算方式を変えたことによるものです。予想EPS、 1株当たり利益というものは、利益を発行済み株式数で割ったものです。これまでこの発行済み株式数には、企業が自社で持っている自社株も含まれていました。企業はこのところ、株主還元という形で積極的に自社株買いをするケースも増え、それによって株価が上昇しているという状況があります。そうした自社株買いの場合、企業が自分の会社の株を購入した時には、もちろん配当は払いません。なぜなら払うのも受け取るのもその企業になるからです。さらに株主としての議決権もありません。するとその株は無い事と同じになると考えられるのです。
これまでも、企業が買った自社株を償却する際には、発行済株式数が減り、1株当たり利益は増えていました。しかし企業は買った株をすぐには償却しないものです。将来的にもし株価が上がったときには、公募増資と同じように、株を売って資金調達も出来るほか、他社を買収するM&Aの時には、株式交換という形で自分が持つ自社株と交換することもあるので、企業は自社株をすぐに償却せず、保有しておく傾向があるのです。
そうしたことから、日本経済新聞社は、EPSを算出するときの計算方法として、発行済株式数から自社株保有分を抜くということに制度変更をしたのです。それにより予想EPSが大きく上昇したというわけなのです。実際に世の中は何も変わっていないのに、計算の仕方を変えただけでEPSが上がったのですが、それでも株価の上昇につながりました。PERが高い低いという基準があり、それによって株式の割高割安を判断する1つの目安になっているからです。国際的に見ると、計算式によって数値が変わっただけですが、実際は割安に映ってしまうのです。制度変更とは言え、EPSの上昇は株価上昇に大きく影響したというわけなのです。
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