それではお札を擦り続ける中央銀行の異常な政策は、一体いつ終わるのでしょうか。非常に興味のあるテーマだったので私もいろいろと調べてきましたが、ついにその分析が出ました。日銀の先輩にあたる田幡氏がIMFから依頼を受けて、政府、中央銀行がどのくらいのタイミングで緩和政策を止めることができるのかを分析し、結果を発表したのです。これは日経新聞の経済教室にも掲載されましたが、かなりショッキングな内容で私はこれを非常に重要視しています。
分析によると、日本についてはもしかしたら20年かかるかもしれないとしています。つまり正常化は2035年です。アメリカ、ヨーロッパも10年ほどかかり、2025年頃としています。もちろん日銀出身の田幡氏はマーケットのこともよくわかっていて、学者のようにただ数字だけを分析したのではなく、どのようにオペレーションをするかも考えて、現実的な分析を行っています。それによると、おそらく今後の経済は、景気循環で悪くなることもあるので簡単には正常化できず、むしろ緩和を続けなくてはいけない局面もあり、トータルするとこのくらいかかるということなのです。
バランスシートでメガバンクの資産サイドにあった国債は日銀に渡され、その代わり現金をもらうわけですが、それを日銀当座預金に振り替えているということで、それが今200兆円あるのです。今後4年分の赤字国債のファイナンスができたとして、さらに今ある200兆円の当座預金で国債を買うとしたら5年分になるので、一応9年分の赤字国債が吸収できるということになります。これをどう捉えるか、意見は様々だと思います。
日本はあと20年、ゼロ金利が続くことになるのです。財政破綻はないと思っていますが、財政が改善するかというと厳しいので、今後もゼロ金利で国債をずっと発行していって、ほとんどコストがかからないものの、歳出の40%は利払い費になっていきます。そうした中、金利が上がってしまったらあっという間に歳出は膨らんでしまい、それこそ財政破綻の一因となってしまいます。それを防ぐにはゼロ金利を続けるしかないということなのです。私自身、後5年間は今の政策が続くだろうと思っていて、2020年、東京オリンピックまでは今の政策で、財政破綻もないということをコメントしてきましたが、今回の田幡氏の分析はさらに強烈な内容だったわけです。
世界ではデフレが続き、ゼロ金利が続き、良くない言い方ですが金利では商売できないという状況が続きます。このことは、逆に言えば、金利ゼロという世界観が長く続くことを考えていかないといけないということでもあります。ハイパーインフレだなんだと煽るのは簡単ですが、その方向に全てベットしてしまい、もし5年、10年に渡って逆の姿が出てきたとしたら、大きなミスということになるわけです。今回の分析は、世界の金融市場において非常に大きなインパクトのある結果だと思います。
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