エネルギーとしての原油は環境に優しい天然ガスや風力・太陽熱等の再生エネルギーなど、代替エネルギーの開発により、その存在感を小さくしている。また中国やインド・米国の発電エネルギーは、より安価な石炭に負うところが大きくなっている。したがって原油需要の伸びはもっぱらガソリンなどの輸送用エネルギー需要の増加に頼らざるを得なくなっている。先進国ではもはや飽和状態に近いため、もっぱら新興諸国のモータリゼーションが今後の原油需要の増加の担い手となっている。まだまだ車は売れ続けているが、新興諸国の景気が減速すれば、世界の原油需要の増加は自ずと減速し始める。
これらを背景に原油価格は40ドルを切る事態となっているが、このような状況が長く続けば、GDPや国家歳入に対する石油依存度の高いロシア、ベネズエラ、ブラジル、マレーシアなどの産油国の経済が悪化し、石油企業の破たんや、産油国のデフォルト懸念による債権の値下がり、政府系ファンドの投資引き上げなどから世界経済に負の影響を与える恐れがあるので原油安はガソリンが安くなったと喜んでばかりはいられない。
今後3つの理由で全般的に下押しされている商品価格が一時的に反発する可能性がある。
1つは、16日に米国FOMC(公開市場委員会)で利上げが決議されれば、利上げを見込んで買い進まれてきたドルが売り戻される可能性がある。ドルは昨年から2割以上高くなっており、少し異常だと思われる。一時的にせよドル安局面が現れればドル建ての商品価格は上がるだろう。
2つ目は、金と原油に対するファンドの売り残が積みあがっていることだ。何かの拍子で価格が反転すれば、それを見て空売りが買い戻される可能性がある。こうしたことは、それほど長続きするものではないが、一つの反転上昇のきっかけにはなるだろう。
3つ目は、商品全般に割安感が出ていることである。さらに売り込むよりは、安値を拾う感覚が広がるだろう。中国人やインド人は金の価格が下落しているときは傍観しているが、価格が底を打ったと認識すると安いうちに買い漁る傾向がある。どこまでも下がる雰囲気の中では買いは膨らまないが、反発し始めれば待っていた投資家が商品を買い始めることもあるだろう。
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