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クルーグマン氏「流動性の罠」検証の結果は!?(田口美一)2015/12/16(水)

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今回のテーマ

クルーグマン氏「流動性の罠」検証の結果は!?(田口美一)

クルーグマン氏「流動性の罠」検証の結果は!?

 ノーベル賞を取った大物経済学者、クルーグマン氏が直近レポートを発表しています。2015年10月20日、ニューヨークタイムズで、「Rethinking Japan」、日本再考というタイトルでコラムを書いたのです。このコラムは難しく、ややこしい英語をたくさん並べたものなので、わかりやすいように私なりに意訳して解説します。

 まず、このコラムは自分の自慢話から始まります。自分は1998年に論文「流動性の罠」を発表、これは自分が書いた中でも相当な傑作だったと言っています。はっきりものを言うクルーグマン氏らしい表現です。しかしこの論文は間違っていたかもしれないというのがこのコラムの展開です。

 この「流動性の罠」は、日本のデフレからの解決策を提示した論文とも云うこともでき、日本は当時、失われた20年の前半、ちょうど7~8年目の頃です。日本は経済成長も政治も良くなく、非常に苦難の中にありました。そのときに、論文では、日本について「現在成長率は低いが今後高くなる」と指摘したのです。ただし、どうすれば高くなるかが問題で、それは金融緩和でお金をじゃんじゃんと刷って、マネーを増やすことによって景気に刺激を与えることであり、そうすれば必ず景気は良くなり、全てはバラ色に変わるだろうというのがこの論文の内容でした。要するに、普通の金融緩和ではダメで、大量にお金を刷り、刺激を与えることをしていけば変わっていくということだったのです。

 しかし今回、いろいろな検証をしてみたところ、今の日本は一人当たりのGDP成長率はアメリカやヨーロッパよりも高いという結果が出ました。つまり、日本は一人ひとりのパフォーマンスで見ると、アメリカやヨーロッパよりも充分良くなっているのです。それなのに一人ひとりを集めた国全体のグロスの数字では、GDP成長率が0.5%ほどしかないのです。そもそも日本の潜在成長率は0.5%で、それは達成しています。一人ひとりは頑張っていて、パフォーマンスはとてもよいのに、国全体としては小さな成長にとどまっているわけで、それはなぜなのでしょうか。

 それはつまり、人口が少ないからだというのです。一人ひとりは頑張っていても、その人数が少ないので、アメリカやヨーロッパよりも成長できていないということなのです。結局、日本の経済が良くならないのは労働人口が減っているからで、これは人口統計を見ても今後も減っていくことが明らかになっています。そのため今後も日本は苦しい状況が続くという論文は、すでに日本国内でも出されていて、日本の問題は人口の問題だという、まさにそのことをクルーグマン氏は改めて述べたにすぎないのです。そのことは、私たちは以前からわかっていたことです。だからこそ、今回のアベノミクス第2弾では出生率を増やすことが目標とされているのです。

 クルーグマン氏は、検証の結果、日本の問題は労働者が少ないことでしたと今頃言い始めたのです。17年前に書いた自らの傑作とする日本に関する分析は間違っていたと謝っているのです。日本は異次元緩和を続けているにもかかわらず、成長率は低く、自然利子率も依然としてマイナスが続いていると思われます。今回クルーグマン氏は、今後もこの状況が続くと言っています。日本だけではなく、FRBもECBもとってきた緩和政策の理論的バックボーンの一つが、以前のクルーグマン氏の分析だったわけですが、それが今回、労働者の減少が問題だったと言い換えられたということなのです。

 インフレ、物価はマネーの現象とみる人たちをマネタリストと言い、マネタリストはお金を刷れば物価は上がると考えます。そして、さらに伝統的な範囲を超えてどんどんとお金を刷るべきだとクルーグマン氏は言っていたわけです。実際、日銀は異次元緩和で国債を買いまくり、日銀の勘定にある現金と当座預金は大変な勢いで積み上がり、340兆円、2.4倍にも上りました。お金を刷ればどんどん世の中にお金が出回り、物価が上がるというのがマネタリストの主張で、クルーグマン氏も異次元緩和を推奨していたわけです。

 ところが、実際今、日本に出回っているお金であるマネーストック、企業と家計によって流通しているお金は1227兆円で、前年比わずか2.9%しか伸びていないのです。マネタリーベースを増加させれば、マネーストックが増えると言っていたはずですが、そうはなっておらず、「異次元緩和は失敗だった」のではないか?ということが読み取れるのです。

日本国債発行残高 2030年にはGDPの300%へ!

 このコラムについては、日本ではあまり取り沙汰されていませんが、海外では非常に広く知られています。結局クルーグマン氏はどう結論付けているか、ここが注目されます。

 日本は金融緩和をして、GDPに対する国債発行残高、つまり借金残高の比率が、このままいくと現在の240%から、2030年には300%に膨らみます。この赤字を解消するにはやはりインフレにする必要があり、4%から6%のインフレ率が必要になるとクルーグマン氏は言っています。現在、2%でも苦労しているところを、そこまで上げないと赤字は減らないということなのです。

 そして、そのインフレ率を実現するための日本の選択は二つあり、一つは、日銀総裁が「CPIが2%を達成しても異次元緩和をやめない」ことだとしています。論理にかなり矛盾がありますが、今の緩和政策は失敗と思われるので、逆にその目標を過ぎてもやめない、というかなり乱暴な提案だと言えます。そしてもう一つは、「金融政策で物価上昇が見込めないので、逆説的に、財政拡大を加速化すること」だと言っています。つまり、今でも財政が膨らんでいるので、さらに膨らませることで、個人や企業は相当驚いて、よく言うハイパーインフレになってしまうのではないかと思うことで、インフレ率上昇を達成できるのではないかと言うのです。

 この辺りの例え方が、物理学用語などを使って非常に難しいのですが、ロケットが地球から大気圏を抜け出て宇宙に向かう、違う次元に向かって突入する経験をするような、とんでもない対策を打つことが必要なので、日本は頑張ってくださいというような結論に至っているのです。ここから読み取れば、こうした対策はほとんど不可能なことで、クルーグマン氏はかなり厳しい匙の投げ方をしていると感じます。

 クルーグマン氏は表現や例えがうまいので、振り子が片側に振れていると思えば、行き過ぎた部分もあり、そのままを受け止めるべきではないかもしれません。ただ、この話を元に、もう一度黒田バズーカ砲の内容を振り返ってみる必要があると思います。

 黒田バズーカ砲第二弾では、人々の「期待」に働きかけるとしていました。潜在成長率はクリアしていて景気は悪くなく、物価も徐々に改善しているものの原油価格の下落などの影響でデフレマインドが転換するには時間がかかりそうだとして、消費者や企業に期待インフレを持ってもらいたいというのが狙いでした。黒田総裁は、この期待を持たせるためにバズーカ砲を打っていると明確に示しました。そのために株を買ったり、不動産リートを買ったりして資産価格を上げることで、期待インフレが生じ、デフレマインドが変わり、景気もさらに良くなるというシナリオだったのです。しかし、肝心要の期待インフレが起こっていないわけです。これはやはり、メカニズムが作用していないので、変化を起こせていないということなのです。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
金融経済アナリスト
前クレディ・スイス証券副会長
田口 美一
12月2日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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