財務省は、次の年度に発行する国債を1年早く発行する「前倒し債」の上限額を、2016年度は48兆円に引き上げる方針を固めました。2015年度の当初の計画に比べると16兆円の増加で、過去最高となるものです。日銀の異次元緩和で市場に出回る国債が減り、需給のひっ迫で金利が乱高下するのを防ぐということです。
今は国債で流動性を確保しているのですが、それが足りないということです。国債の需要そのものはあるわけですが、国債を出すということは国の債務を増やすということなので、それをやるのは禁じ手中の禁じ手だと思います。しかしそうした錯覚があるのには、国債に対する別の考え方があることも一つの理由です。
現代ビジネスは先月28日、「『日本の借金1000兆円』はやっぱりウソでした」と題する記事を掲載しています。これは、元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏が国のバランスシートを分析した結果を紹介。財政破綻を煽る通説はバランスシートの負債側しか見ていないことや、資産として政府内の子会社を連結していないなどの問題点があるとし、それらを仔細に見ていけば日本の財政はマスコミや学者が言うように悪くはないと指摘しています。
高橋洋一氏は20年以上こう言っています。しかしそれが一銭も借金返済に使われていません。もし特別会計などにそれだけの余裕があるならば、為替の特別会計もそうですが、いざという時のリザーブとしてあるもので、財務省が握っているわけです。それをパクればよいというのですが、実際はそれを取っておいているわけです。国が強い決意でもって、財務省が支配しているその部分を裸にしてしまうとすればよいのですが、そうではありません。
マーケットの方は、債務は債務で1300兆円だとして、その数字を見て崩れます。格付けも債務の数字を見ながらどんどん落ちてきているのです。そう考えると、特別会計でリザーブを取ってあるので、格付けがここまで下がったらリザーブから幾ら持ってくるという具合に国の格付けが落ちないようにするためのルールを、法律で決めていくべきなのです。特別会計があると言っても使えないものは役に立たず、マーケットもあるとは見ていないので、リザーブのままになってしまうのです。
日本人全体も同様に、死ぬ時に貯金がこんなに残るなら使えばよかったと言いますが、やはりいざという時のためにという意識があるのです。高橋氏の言うことは、日本人がそうしているように、日本国もいざという時のもリザーブを蓄えているので、実際はそれほどの借金はないという見方なのです。しかし、彼は20年以上同じことを言っていて、元財務省の立場から、天下り確保のために財務省が崩さないことなどを盛り込んで、話としては受けるのですが、いい加減にそれを引っ張り出す方法を考えてほしいものです。その方法がないなら、机上の空論ではないでしょうか。
格付けがここまで下がったら引っ剥がしてくる、その時こそがいざという時だとして動かさないと、実際には出てこないお金です。生活が苦しいと言いながら3000万円を残して死んでいく人がいるわけですが、そういう国になってはいけないと思います。
上から見てこうなっていると言うだけではなく、実際それを動かさないことには意味がありません。その方法がない限りはマーケットは使えないものだと判断するでしょう。マーケットがどう判断するかが重要なので、そこで役に立たないことを言ってもらってもあまり気休めにはなりません。
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