去年11月、最初はGDPの統計はマイナスでしたが、新しい法人企業統計で設備投資がより良い数字が出てプラスになりました。ゼロを挟んで-0.5と+0.5などという話は、大きいといえば大きいですが、ゼロ前後のことなのです。日本の成長は今、ほとんどゼロであり、プラスだマイナスだと議論をしても仕方ないのです。
黒田総裁も二回目のバズーカ砲を打つ時、もう景気は心配していない、問題なのは気持ちだとはっきり言っています。20年間日本はデフレにいたのでみんながシュリンクして、誰もリスクプレミアムのあるような商品に投資しない、景気の良い企業活動もしない、それが問題だと言っているのです。現実にCPIが落ちてきてしまったので、そうしたマインドのシュリンクを止めるために、二回目のバズーカ砲を打ったのです。つまり、GDPはもう限界まできているのです。
賃金は、波はあるものの横ばいです。これがプラスになってくると良くなってくるかもしれないという期待はあります。業況判断は一時大きく盛り上がりましたが、そこからは横ばいが続いています。企業もほとんど貯め込んでしまっています。それはやはり怖いからです。大企業になればなるほど、個人の家計と同じです。テールリスクがあって心配だとみんながわかっているわけで、備えとして貯め込むのは当然です。安倍政権はそれをはき出せと言おうとしているのです。
冷静に考えてみると、日本は急激にグローバルなポジショニングが下がってきています。その現実は受け止めましょう。しばらく前には中国に抜かれると騒いでいましたが、すでに大きな差がついています。中国の統計が信じられないというのは構いませんが、それよりも実際どこまで抜かれているのか、現実を見るべきです。一人当たりのGDPも20位以下に下がってきていて、厳しいところにきているのです。私が社会人になった頃は、日本の政治は二流、三流かもしれないが、経済は一流というところが日本人の誇りだと先輩から聞かされましたが、今はそれが難しくなってきているのです。もちろん規模だけで全ては語れませんが、規模も重要なのです。
アベノミクス第二弾では、GDPを600兆円にする、人口一億人、一億総活躍と言っていますが、すごく良いことで必要なことではありますが、キーとなるのは賃上げです。賃上げがうまくいかなかったら我々も違う対策を考えていく必要があるでしょう。
また、バズーカ砲第三弾については、すでに限界を超えてしまっているのかもしれず、非常に心配しています。黒田総裁は必要であれば断固やります、でも今はやりませんと、訳のわからない発言を繰り返しています。補完的措置というのもよくわかりません。しかし、7月前までには何かやらざるを得ないでしょう。安倍政権の肝は経済、株価だからです。株が非常に厳しくて、政策も打てず、賃上げも思うように進まないとなれば、安倍首相は次の消費税増税を凍結する、もしくはやるべきか民意を問うとして衆参同時選挙をやるというようなことも考えられます。
安倍政権の命綱は偏に株価と経済です。国会のやり取りを見ていても自民党からの応援団は安倍政権になってからの株価の上昇を大げさに取り上げています。安倍首相は基盤を強固にして長期にわたり政界で力を持ちたいと思っているので、選挙前には絶対に日銀は何かやらざるを得ないと思います。日本は、株価など不安材料はたくさんありますが、中国と同様に政策的カードが残っているのです。ポジション的には持っているロングは落としても、ショートは振りたくないと思うのです。
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