日銀は29日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の導入を5対4の賛成多数で決定しました。中国経済の減速や原油価格の下落で世界経済の先行き懸念が強まり、国内景気や物価に悪影響が及ぶリスクが高まったためで、銀行が日銀に預ける当座預金の一部に2月から-0.1%の金利を適用する方針です。
今、日本の銀行は日銀に国債を売り、その分のお金をもらっています。そのお金を日銀の当座預金に入れています。それについて0.1%の預かり料を取るということですが、1兆円預けていたら10億円ですから、飲み込んでしまえという銀行もあるでしょうし、それなら自分の銀行に移しておいて貸し出しに使うという銀行もあるでしょう。
ただ、貸してくれという人が非常に少ない現実において、これが本当の市場にどのくらい貸し出しや設備投資として出てくるかというと、他の政策と咬ませない限り無理だと言えます。銀行も、とりあえず預けているだけであって、それを自分の銀行に持ってきたところで貸して欲しいという人が少ないのでそもそも無理ということなのです。
マイナス金利は、1年半ほど前にドラギ総裁がヨーロッパ中央銀行でやりました。ヨーロッパの場合は、銀行がヨーロッパ中央銀行に預けている分が少ないので、今のところあまり効果は出ていません。
勘違いしている人も多いようですが、我々が預けている銀行の預金がマイナスになって、保管料を取られるというわけではありません。金融機関が日銀当座預金にそのまま置いてある分について、マイナス金利になって保管料を取られるということなのです。ただこのまま、この政策だけで経済が上向くことはないでしょう。
しかも黒田総裁はこういうことをやりながら、2%の物価上昇率の達成時期はさらに一年先になると言っているのです。使える手段は全部使うと言いながら、全部使ってみたところで目標は先送りなのです。さらに目標達成が先になることについて、原油安などのマイナス要因があると言っていますが、それだけではないことをみんな知っています。アベノミクスがいかに破綻したか、政府や日銀は、まずその評価をやることが重要ではないでしょうか。
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