EPSはその後も基本的にはコツコツと右肩上がりに推移し、また期越えで少し増え、ピークは去年11月30日に1275円70銭を付けています。もともと600円だったEPSが2倍になったので、日経平均もその期間で2倍以上になったのです。ですから、アベノミクスはバブルではないと言えます。企業業績がそれだけよくなったから株価は上がり、2万957円を付けたのです。ただし、そこからはEPSは下がってきています。1091円20銭まで右肩下がりに落ちてしまいました。これはやはり企業業績の悪化に加え、様々な企業の特別損失が出たことから下がっていったということです。
そうして5月6日までは下がったEPSですが、5月13日には1191円90銭まで回復、16日時点では1197円台まできているので、170円落ちたところからほぼ100円上がったわけで、グラフの右端のところで急上昇しています。これは足元、株価のプラスの動きにつながると思います。
なぜEPSがこのように上がったかというと、実はある特定の銘柄だけで上がったのです。それは去年特別損失を出した会社です。例えばシャープ、東芝などは不祥事を起こし何千億円もの特別損失を出しました。2社合計では1兆円の特別損失になります。
他に、例えば出光興産やJXホールディングスといった資源関連企業があります。こうした企業は原油を備蓄しています。戦争などの事態でいきなりタンカーが通れなくなるなど不測の事態に備えて、何百日分かを蓄えているのです。この備蓄は国が買い取っているわけではなく、民間に備蓄するように義務付けているので、その分は石油企業の持ち物になるわけです。その備蓄を多く抱えているということは、年間の売上高に匹敵するほどの原油を持ってしまっているわけです。高い時に買った原油や安いときに買った原油、いろいろあるものの、それを期末に評価していくらか定めるのですが、これが前年から比べて今年3月末は原油価格が大きく下落していたために、ここで特別損失が発生していたのです。
さらに、総合商社です。三菱商事、三井物産、住友商事といった大手総合商社は、三菱商事、三井物産に関しては赤字まで行くような大きな損失を出しました。やはり原油など資源関連の、投資していた様々なものの価格が下がってしまい、投資したものの価値がなくなったことにより減損処理をしなくてはならず、特別損失につながりました。
こうした特別損失が約3兆円に上り、前期の業績に影響を与えました。この特別損失は、企業がいわゆる事業で儲けたお金である、営業利益、経常利益と違い、もう一つ、投資など様々なことによって特別に利益が出たり、損失が出たりという場合のもので、これを合わせて純利益になります。
今年は円高が影響し、経常利益ベースではやはり厳しいところがあります。円安に支えられて今まで企業業績が上がってきたわけですが、その状況が変わったことは大きく影響します。日経新聞には全体として経常利益は3%ほどの増益と出ていましたが、実はそこには電力会社が入っていないのです。電力会社は去年原油が下がったことで大変儲かっていて、今年は原油価格が戻ってきているので今期はマイナスになるのですが、その電力が含まれていないのです。それで全体は増益というのは少しおかしいと思います。トヨタが7000億円、営業利益で4割の減益と言っているので、そういう意味では今年の業績自体はよくないのですが、特別損益の差によって、EPSはプラスになっているのです。
今の想定為替レートが自動車関連は105円、電機機械関連が110円と見ているので、やはり110円が分水嶺かと思います。110円以上に円安が進めば、かなり上方修正される可能性があります。もともとの予想が、今はかなりコンサバティブに見積もっているので、上方修正含みということになります。
トヨタに関しては4割の減益、為替要因が1兆円と書かれていますが、よく見ると様々な引当金などを充てて、かなり保守的に見積もっているように思います。想定為替レートも105円としているので、109円ぐらいであれば上振れ余地があるので、為替が110円を越えていけば、日経平均のEPSは11月の高値である1275円を抜ける可能性もあると思います。しかし、110円を越えなければそれほど増益はできないと思われるので、その場合は1200円ほどで、結局今と大して変わらない水準でいくのだろうと思います。
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