日経新聞は11日、「世界で長期金利低下」と題する記事を掲載しました。これはイギリスのバークレイズ・インデックスの集計で、世界の国債の平均利回りは0.73%と、史上最低を更新したと紹介しています。世界全体の国債残高の半分近くがマイナス金利となる異例の事態となっており、企業の成長期待が落ち込み、借金をして成長に向け投資する動きが鈍っていることが背景にあるとしています。
これは恐れられていた先進国の日本化です。日本は20年間デフレが続き、アベノミクスだなんだといろいろやってもうまくいっていません。世界のかなりのところがそうした状況になっていて、結局、お金が余っているということなのです。
これについては2つのことを知っておく必要があります。今は世界各国がお金を印刷し過ぎています。その印刷したもので景気刺激策をやろうと思ったわけですが、そんなにいらないという状況になっています。つまりこれが日本化なのです。
そしてもう一つはパナマ文書と関係があります。あのパナマ文書の背景にあるお金というのは、何百兆円にも上ります。アラブのお金をはじめ、世界中のお金が集まっています。つまり、主として先進国が、信頼できる通貨として印刷しまくったお金のかなりの部分がこういうところに隠れているわけなのです。そして、その一部は投資に向かっていますが、このお金は非常にパッシブなお金であり、積極的に運用するという人は非常に少ないのです。つまり、このお金はある意味、ありがたいダンプだと言えるのです。
このお金が全て出てきて世界の市場に行ったなら、どこもハイパーインフレになってしまいます。ですから、ああいうところでお金が眠っていただいているのは、意外にも先進国の通貨政策の失敗、すなわち景気刺激策で刷りすぎたお金が、そこでじっとしていてくれるということであり、実はとてもありがたいことなのです。
お金は世界が必要とする何倍もあるのではないかと言われ、この一環として、騒がれているように長期金利があちこちで下落しているというわけなのです。20世紀は、人、金、モノでしたが、21世紀は人、人、人だと私は考えています。お金はすでに完全にコモディティであり、石油やお金は溢れるほどあるのです。こういう状況であることをよく理解しておかないといけません。
意外にも、パナマ文書にある隠れた効果というのは、お金がじっとしていてくれることであり、そのお金が積極的に投資先を求めてやってきたら、世界は大変なことになるのです。昔のスイス銀行に預けている人たちと同じです。利息を生まなくても、スイス銀行は安全だから預けるということがありました。何もしなくてよく、マイナス金利の時もありましたが、多くの人が預けていました。それが全部市場に出てきたとしたら、世界中が洪水になってしまいます。
世界的に長期金利が落ち込んできているということを聞いた時、皆さんもこうした2つの原因をよく見て理解しておく方が良いでしょう。この問題の元は、すべての国が印刷しすぎているのだということであり、もう少しドイツを見習えということなのです。しかし、ドイツも今はユーロとともにやっているので、ドイツ自身は何とかなっているものの、それ以外のところは垂れ流しとなっているのです。
その中、日経新聞は8日、「三菱UFJ銀、国債離れ」と題する記事を掲載しました。これは、三菱東京UFJ銀行が、国債の入札に特別な条件で参加できる資格を国に返す方向で調整に入ったと紹介しています。日銀のマイナス金利政策のもとで国債を持ち続ければ損失が発生しかねないためで、国債の安定消化を支えてきたメガバンクの国債離れは、日銀の異次元緩和に影を落とすとしています。
これについては、参議院選挙前にこんなことをするなと、三菱東京UFJにはプレッシャーがかかっていることと思います。もともと安倍黒政策により、中央銀行が国債を大量に買い始めたわけですが、誰が売っていたかと言うと、日本の金融機関、郵貯などです。生保などの保険は期間が長いこともあり、依然として少しずつ国債を買い増ししています。
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