修了生対談企画 第二弾!

2017年3月にBBT大学院を修了した浜村圭太郎さんにお話をお伺いします。浜村さんは2018年にLEBO ROBOTICS株式会社を設立、風力発電機のブレードのメンテナンスロボットや、分析・管理を行うAI分析サービスを提供しています。雑誌『Forbes JAPAN』2023年1月号の企画「200 SUPERSTAR ENTREPRENEURS」にも掲載されました。今回の対談ではBBT大学院時代のエピソードはもちろん、起業の経緯や2023年からのドイツへの拠点変更など幅広くお話をお伺いしています。インタビュアーは株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役の柴田巌が務めます。

※こちらの記事はBusiness Breakthrough Ch(BBT Ch)にて公開予定の対談映像を特別に記事化したものです。

人を動かすための武器として、BBTで学ぶ


柴田:浜村さんはBBT大学院の科目「卒業研究」(註1)でビジネスプランを作られて、それが起業の原点になったようですね。まずは在学中のエピソードやその原点が今とどう結びついているのか。そして数々の難関を突破して現在地点に至っていると思いますが、そういったお話も聞いていきたいと思います。それでは最初に入学以前のことをお聞きしますが、MBAで学ぼうと思った理由は?

浜村:MBAを取った理由は、新規事業を進めていくために必要な武器だと思ったからです。新しいビジネスに取り組む際、自分の上司・銀行・コンサルなど、さまざまな人に自分の考えを説明し、納得してもらい、説得して突破していく必要があります。営業には自信がありましたが、ロジックで説明する部分に不安があり、そこをしっかり固めるため、MBA取得を考えました。

柴田BBT大学院のMBAプログラムは実践力が強みですよね。特にRTOCS(註2)は、BBT大学院の特色あるケーススタディですが、今の浜村さんにどのような影響をもたらしましたか?

浜村毎週データを調べ、自分の意見を表現しなければならないので非常に大変でしたが、それと同時に非常に価値のある作業でした。その週のお題が出た時に、その産業をまず調べます。例えば、造船業であれば中国や韓国の売上が日本に比べて大きいことを知って、その前提の中で、自分がその会社の社長であればどういう展開をするかということを考えます。それを毎週、2年間で約100ケース取り組むので考え方の基礎を作れました。

柴田:テキストディスカッション(註3)を通じて得られた力はありますか?

浜村テキストディスカッションは考え方をスムーズにする思考回路を作ってくれました。Face to Faceだと、何となく雰囲気や声が大きいことで説得力が出てしまう部分がありますが、文字に起こすとなると、非常に中身が問われるようになります。言葉の選び方、書き方のわかりやすさなど非常に求められる部分が大きく、大変ではありますが、それを繰り返し締め切りまでやったこと、それを経験したことが、思考回路の形成に役立ちました。

柴田:在学中は仕事も大変、勉強も大変だったかと思います。

浜村:はい、日々やっていることは地味でつらいし、RTOCSでも大前学長の立てた戦略を見て「おお!これかよ」となるのですが、それを続けていくと自然に頭の中に思考の型ができるようになります。日々面倒くさいと思っても、ちゃんとやれば違う世界が見えてくるんですね。なので当時の自分には「しっかりやりなさい」と声をかけたいですね。大前学長が以前、全ての情報が3Cの形で頭の中で整理される、と仰っていたのを聞いて、「ええ!」と驚きました。


(3C・・・3C分析のこと。大前研一学長が提唱した市場環境を把握するためのフレームワーク)

柴田:それは驚愕ですね。

浜村:ええ。私はそこまではいきませんが、ある程度自分の中で「こういう情報はこういう風に整理するべきだ」ということが分かるようになって、情報に溺れることが少なくなってきましたね。培った思考力は宝になります。

柴田:そういう自然体の「思考」という能力を従業員の方にも伝授したいと、経営者としても思われると思いますが、言葉で伝えることは難しいのでしょうか?

浜村:それは非常に難しいと思います。営業の部下が2名いますが、「どうしてこういう判断をしたのか?」と聞いても自分の取りやすい情報だけで判断していることがあります。「こっちはこうなっているけど、どうなの?」と言っても「いや、そこまで見ていませんでした」となるんですね。自分で「考える力」は必要だと思っていても、トレーニングを通じて習得していく必要があると思います。頭のいい人は別として、普通の人はトレーニングが必要だと思います。

編集者註
註1)「卒業研究」:2年次に取り組む必修科目。およそ1年かけ、経験豊富な担当教員との面談を交えながら、実戦で価値を生む新規事業計画を立案するカリキュラム。

註2)「RTOCS(アールトックス)」:「Real Time Online Case Study」の略称で、BBT独自のケーススタディ。答えの出ていない「現在進行形の企業課題」をケースとして扱い、当該企業に関する調査・分析・戦略立案を自ら実施。大前研一学長担当の科目にて、2年間毎週1ケース=合計約100ケースを繰り返し行います。

註3)テキストディスカッション:BBT大学院ではアウトプットの量・質ともに格段に高められるよう口頭のディスカッションではなくテキスト(文字)でのディスカッションを採用している。

命をかけて取り組みたい事業


柴田:御社の事業をご説明いただけますか?

浜村LEBO ROBOTICSは、風力発電機のメンテナンスに特化している企業です。主に3つの事業があります。1つ目は、風力のブレードを、ロボットを使ってメンテナンスする業務。2つ目は、風力発電機の羽根を撮影して、その画像をAI解析してダメージを分析するAI点検サービス。3つ目が、風力発電機の羽根を補修する薬品や補修材料の販売をする業務です。

柴田:卒業研究でそのビジネスモデルを作られていますが、事業内容とどの程度リンクしていますか?

浜村卒業研究は大きなきっかけになっています。在学中は会社員として、風力発電機のブレードの補修材の販売をしていました。在学中に卒業研究で新しいプロジェクトを考えなければならないというときに、現場でお客様に「風力発電機にこうやって塗ってください」と説明している中で、その作業はロボットで行なった方が安全かつ効率的だと考えていたことを思い出しました。この思いを形にしてみようと思い、卒業研究のテーマとして取り組みました。

柴田:その後の卒業研究をもとに起業しますが、修了時はまだ前職にお勤めでしたね。その後脱サラして起業に踏み込んだと思いますが、これはすごいピボットだと思います。安定したパスから、一寸先は闇。ビジネスにはお金も人も人脈・地脈も必要なのに、ベンチャーはそうしたものがないですよね。リスクが想定される中、どういう気持ちで飛び込んだのですか?

浜村:そもそも風力発電の事業に取り組んだ背景は、前職で化学品部に所属しており、再生可能エネルギーを促進する仕事をしたいと思ったことでした。まず化学品の販売を新規事業として開始し、さらにロボット化をすることになりました。東京都やNEDOの補助金をいただいていて、ある程度の形になったところで、会社から「上海に駐在しなさい」という指示があったんです。

柴田:いいところで辞令が下ったのですね。

浜村:そうなんです。そこで「ロボットは誰がやるのか」と聞いたところ、別の人への引継ぎをするように命じられたのですが、大変骨の折れる事業でしたので、このままでは誰も取り組んでくれないのではないか、なくなってしまうのではないかと心配になりました。「この事業に命をかけて取り組みたい」と思い駐在を断ったところ、ではどうするかと言われ、「私が会社を辞めて、この事業に取り組みます」とお伝えしました。

柴田:おおー。それでドアをあけたというか、ページをめくったというか、その世界に飛び込んだわけですね。その時は慰留や考え直しなどはなかったのでしょうか?

浜村下の子どもが産まれた時期だったので、「何をやっているんだ」と直属の上司には言われました。ただある程度大きな会社でいろいろと不満もあったこともあって、腹が決まったところがありましたね。幸い、直属の上司は非常にサポーティブで、最終的には「だったらやってみなさい」と言っていただけました。

柴田:そういったやりとりがあったものの、前職を退職されてから、前職で培っていたビジネスプランや取引先の関係も問題なく率いて、いまに至ったという訳ですね。

浜村:化学品販売を行っている会社は主に3社ありましたが、どれも継続して浜村経由でビジネスをすることができました。AI技術点検はフランスの企業の技術ですが、「浜村でやってよい」ということで日本の総代理店をさせていただけることになりました。ロボットに関しても補助金を引き継ぐことができて、円満に新しい会社をスタートすることができました。

起業直後は怒涛のような日々を過ごした

柴田:起業されたのが2018年で、怒涛のような日々を過ごされたかと思います。立ち上げ当初のエピソードなどをお聞かせください。

浜村これは起業した方共通だと思いますが、お金と人の問題はありました。お金に関しては銀行からの借り入れを想定していましたが、最初は事業を理解していただけず、借り入れができなかったんです。その後、さまざまな銀行さんをまわったところ運良くものすごく共感してくださる方がいて、紐付きなしの借り入れをさせていただくことができました。

柴田:諦めずに足を運んでみるものですね。

浜村それによって事業を進めることができて、さらなる資金調達にも繋がりましたね。採用に関しても四方八方に働きかけるわけですが、これも運良く弊社の技術に必要な技術を持っている方が現れて、2年ほど勤めていただいていますが、2022年12月に取締役に昇格してもらいました。

柴田:よくヒト・モノ・カネ、と言いますが、ベンチャーの成功はヒト・ヒト・ヒトなのかなと思いますね。投資家の方を説得する上で「こういう経営陣と一緒にやっていく」と言えることで天と地の差がありますよね。

代々引き継がれる起業家精神

柴田:その後、新型コロナウイルスの流行によって日本のエネルギーミックス、例えばどういう方法で電力を作り、気候問題やSDGs, COP26/ 27問題、脱炭素などの課題をどう解決していくかがさらに重要化していますね。日本が世界に向けて設定していく、コミットしていく上で風力発電が果たすべき役割はますます大きくなり、チャンスが到来して増えているのではないですか?

浜村:まさに仰る通りで、風力発電は再生可能エネルギーの中でも大きなシェアを占める可能性があり、グローバルに広がっていますし、非常に大きな可能性を秘めていますね。日本では洋上風力発電が非常に注目を浴びています。2022年の夏にたまたま海外電力会社主催”FREE ELECTRONS”というアクセレレーターというプログラムに選出いただき、ファイナリスト15社に残ったんです。それで欧州大手発電会社や風車1万機保有の風力発電会社と商談をさせていただくことになって。

柴田:素晴らしいチャンスを得ましたね。

浜村彼らは「先数年で設置機を5倍にする」と言うのですが、「メンテナンスはどうするか?」と聞かれると苦笑いをするような状況で、世界的にインフラのメンテナンスが課題なんです。我々が危惧していることは、「風力発電ってクリーンでいいよね」と次々に建てた後、メンテナンスが追いつかず、収益が伸びないという考えが広まり、結果的に頓挫してしまうことです。もちろん人の手によってメンテナンスされる部分もありますが、ある程度ロボットと協業することで最適なメンテナンスをしっかり提供できる体制をグローバルに提供したいですね。

柴田:浜村さんの素晴らしいところは、日本発のスタートアップは国内に閉じていることが多く海外の市場を取っていくことが難しい中、創業直後にフランスなどグローバルに展開できる戦略を立ててこられたことですよね。2022年の末にはドイツに拠点を移し開拓されるとのことですが、尽きることのない起業家エネルギーを感じます。そういったものはご自身のDNAにあるのか、BBT大学院で培ったものなのか、あるいは社会の課題を解決したいという強い思いが突き動かすのか、いかがですか?

浜村:もちろん、BBT大学院で学んだことが大きく影響していますね。在学中の2016年頃から「日本経済はこれからシュリンクしていくので外貨獲得できるビジネスや自己防衛を」と強く言われていました。そのため、海外で活躍する形を強く思うようになったんです。あとは父が自ら会社を立ち上げ、モーターボート関係の仕事で船や設備を作るようなことをしていて、それを間近に見ていたので、影響を受けたのもありますね。

柴田:お子さんもお父さんの楽しそうな顔をみていて惹きつけられるのではないですか?

浜村:そう思います。1人で始めた会社が資金調達を経て8人、2回目の資金調達も終わって資金を倍増させる計画をしています。最初は妻も「馬鹿じゃないの」と言っていましたが、今はサポートしてくれています。この対談のお話をいただいた時も妻と共有し、「すごいことじゃない」と小さな喜びを共有している姿を子どもが見ていたので、彼にとってとても良い瞬間なんじゃないのかなと。記憶に残ってくれればいいなと思いますね。

柴田:「卒業研究」の審査員として浜村さんをみてきた私が鮮やかに覚えているのは、ビジネス・インキュベーション・コンテストでピッチなどをされて、グランプリを受賞されたこと。その時々で「課題はこうです、次はこうです」と自分がどのような一歩を歩み出すべきかを知っていて、覚悟もある。上の方だけを見ながら歩むのではなく、足元を見てしっかりと一歩一歩を踏み出している方、という印象です。その流れが現在も続いていて、パワーアップしていると感じますね。

世界で共感を呼び、チャンスを手繰り寄せた


柴田:日本の再生可能エネルギーは、これまで石炭・石油や原子力で発電して、2011年以降は太陽光、最近になって風力発電ができてきましたよね。浜村さんのような地に足がついた経営者の方が日本のエネルギー地図を塗り替えようと乗り込んでいるので、非常に頼もしいと感じます。日本のエネルギーについて、経営者の1人としてお考えをお聞かせください。

浜村:風力発電等、再生可能エネルギーは発電所に比べてキャパが少なく、数をたくさん設置しなければならないため、再生可能エネルギーだけでやっていくのは難しいとは思っています。しかしながらそこに向けて資金投下して、解決する術を開発していく、多産多死で技術開発をしていくことが大事なんですね。「できるのでしょうか?」という問いに対しては「やるしかない」と考えています。例えば、北海道は風車が建てられる環境ですが、電力を必要とする東京などへは、電線問題で届かないという課題があります。これに関しては、民間が電線を引くというプロジェクトが進んでいます。官がやらないのであれば、民間がやって、官を引っ張っていくということが大事ですね。

柴田:欧米ではどのような状況でしょうか?

浜村:最近、アメリカや欧州企業と話す機会があるのですが、向こうは民が動いて、楔を植えたところで「これに対して何かサポートできることはないのか」と官が付いてくるという動きがあるんです。日本も「官が動いていないからできない」ではなく、まずは動いてみて、それに対して「何かできませんか?」という働きかけることがとても重要なんだと、海外スタートアップと話して感じましたね。

柴田海外ピッチ・コンテストにも積極的に出場されて、商機開拓をしていると聞いています。最近のエピソードをお聞かせください。

浜村:先程もお話しましたが、FREE ELECTRONSという海外電力会社がスポンサーをしているアクセラレーター・プログラムがあり、こちらに申し込んだのですが、その発端となったのがアイルランドの電力会社のESBというところです。ESBに対して「ロボットを点検してください」と人伝てでお願いしたところ、「そういうことはできないが、アクセラレーター・プログラムを突破できたら、うちの会社でもデモをしましょう」という話をいただき、色々なプログラムに申し込むようになりました。そして、FREE ELECTRONSは1次、2次、3次、4次と、700社から15社までに絞られる中に残ることができました。

柴田:すごいですね!

浜村:最終決戦はサンパウロであったのですが、ESBの担当者がいらっしゃったので話をしたところ「1次・2次は花丸をつけた」と仰っていただいて。おもしろいと思ってくれる人がいて、引っ張り上げてくれた人がいたんですね。2次審査以降は、香港とアメリカの会社が二重丸を付けてくださりさらに進むことができました。すごく細いチャンスではありましたが、そうやってファイナリストに残ることができ、「アクションを起こせば、何とかすれば、何とかなる。」という体験もできましたね。

柴田:海外市場の方が風力発電は伸びているので、日本国内の市場のみならず海外で成長のエンジンを作ろうという戦略なのでしょうか?

浜村:風力発電の基数でいうと、世界は30-33万基に対して日本は2500基で1%にも満たないので、会社として成長を求めるのであれば風力発電機の多い欧州・アメリカ・中国・インドという4地域を目指していくのが鉄板だと思います。今まで、アメリカや欧州企業と直接コネクションを得ましたが、欧州事業者はメンテナンスに対する意識が高いんですね。

柴田:それは何が起因しているのでしょうか?

浜村電気代が市場連動価格になっているため、今持っているアセットを最大有効活用しなければ儲からないんです。そのためには何が必要なのかを考えるともちろん立地などもあるのですが、メンテナンスをしっかり行うプランニングをしなければなりません。3年くらい前までは、風車を立てることだけで精一杯で、O&Mに気を配っていなかったんですね。それが、コストを下げて利益を出していこうという視点が出てきており、「欧州でデモンストレーションをしてください」というご要望をいただくようになったため欧州の拠点を設けてお客様をフォローしていこうという決断をしました。

デュッセルドルフに拠点を移す理由


(デュッセルドルフの街並み)

柴田:次の拠点はドイツのデュッセルドルフですが、なぜ選んだのですか?

浜村:今一番コネクションが強いのが、RWEという大手電力会社です。ロンドン、パリなど大都市を調べたところ、デュッセルドルフは日本の製造業が多く出ているんですね。200社以上出ているのかな。日本の企業で働いたことがある現地の方が多くいて採用がしやすいこともあります。また士業、弁護士・会計士・税理士などの方が日本人であったり、日本語を話せる士業の方が多いという部分もあり、営業に100%軸足を移すことが可能なサポート体制があると考えて選びました。

柴田:「日本の市場はこうなっているだろうな」と半歩先を行っているような、例えば我々素人に対して「この国のこういう再生可能エネルギーの市場が日本の近未来なのでは」とエグザンプルになるような場所はありますか?

浜村:イギリスの東側、ドイツの北側である北海エリアが洋上風車で最も栄えている基地ですね。洋上風車は、着床式・浮体式など細かい形式があるのですが、洋上風車をしっかりコマーシャルで使っていることは非常に参考になります。現在、ニューヨーク沖、カリフォルニア沖、中国沖などで設置計画があるものの、しっかりコマーシャル化が進んでいる点では、北海が参考になりますね。

「やる」と決めてやり通すことが自信につながる


柴田:最後に、在学生の皆様やMBAを検討している方に、浜村さんの激励のお言葉をいただきたいと思います。

浜村:MBAを取るか悩んでいる方、会社に勤めていて独立することは考えていないという方、色々いらっしゃると思います。BBT大学院では、RTOCSに取り組むことで自分が普段関わることのない業界の情報を得られますので、ものの見方が大きく変わります。今後起こる環境変化に対して、自分で考え、自信を持ってアクションを起こすことができます。だまされたと思ってやってみてください。そして「やる」と決めたからには、やり通していただくことが自信に繋がります。在学生の方、これから入学するという方、みなさんぜひ頑張っていただきたいと思いますね。

柴田:1500名以上いる修了生の皆さんにもメッセージをお願いします。

浜村修了生の一人として、たくさんのご縁が持てていることを非常に心強く思っています。日本のサラリーマンとして働いているとあまり重要性を感じないかもしれませんが、例えば海外に出て行って90億人という人口の中に混ざった時、同じバックグラウンドをもった人には親近感や仲間意識を持ちます。それが非常に重要で、時には助けになると思います。せっかくの繋がりを皆で活かして、より良い世の中にしていければ。また、自分のやりたいことを実現するためにも活かしていけるといいですね。私も未熟ではありますが、引き続き、みなさんと繋がって頑張っていきたいと思います。

柴田:今回はご活躍する修了生との対談シリーズ第1回目でした。ご登壇いただく方を考えていた際、Forbes JAPANで200 SUPERSTAR ENTREPRENEURSに選出されたのを見かけ「浜村さんにしよう!」と思った次第です。多くのBBT大学院修了生がいますが、意義ある仕事を、それが注目される前から深く考察して、「自分でやる」「自分はこれをやるために会社を興す」という非常にシンプルだけど、強いステートメントを持つ方々ばかりです。我々としては、こういう方が修了生の1人として活躍していることを誇りに持っておりますし、ご活躍は大変うれしいです。日本に限らず、ドイツそしてアジア北米など、全世界で活躍されるのを応援したいと思います。浜村さん、本当に今日はありがとうございました。これからのご活躍についても楽しみにしております。

浜村:ありがとうございました。頑張ります。

浜村圭太郎さんプロフィール

立教大学経済学部卒業、2017年3月ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科修了。商社にて20年間化学品の貿易に従事。2010年に風力発電向け化学品事業を立ち上げ、発電事業者・風車メーカー等との取引を通じてロボット化のニーズを認識。2019年に同社を退社し、LEBO ROBOTICS株式会社を設立。

修了生対談企画 第二弾!

2017年3月にBBT大学院を修了した浜村圭太郎さんにお話をお伺いします。浜村さんは2018年にLEBO ROBOTICS株式会社を設立、風力発電機のブレードのメンテナンスロボットや、分析・管理を行うAI分析サービスを提供しています。雑誌『Forbes JAPAN』2023年1月号の企画「200 SUPERSTAR ENTREPRENEURS」にも掲載されました。今回の対談ではBBT大学院時代のエピソードはもちろん、起業の経緯や2023年からのドイツへの拠点変更など幅広くお話をお伺いしています。インタビュアーは株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役の柴田巌が務めます。

※こちらの記事はBusiness Breakthrough Ch(BBT Ch)にて公開予定の対談映像を特別に記事化したものです。

人を動かすための武器として、BBTで学ぶ


柴田:浜村さんはBBT大学院の科目「卒業研究」(註1)でビジネスプランを作られて、それが起業の原点になったようですね。まずは在学中のエピソードやその原点が今とどう結びついているのか。そして数々の難関を突破して現在地点に至っていると思いますが、そういったお話も聞いていきたいと思います。それでは最初に入学以前のことをお聞きしますが、MBAで学ぼうと思った理由は?

浜村:MBAを取った理由は、新規事業を進めていくために必要な武器だと思ったからです。新しいビジネスに取り組む際、自分の上司・銀行・コンサルなど、さまざまな人に自分の考えを説明し、納得してもらい、説得して突破していく必要があります。営業には自信がありましたが、ロジックで説明する部分に不安があり、そこをしっかり固めるため、MBA取得を考えました。

柴田BBT大学院のMBAプログラムは実践力が強みですよね。特にRTOCS(註2)は、BBT大学院の特色あるケーススタディですが、今の浜村さんにどのような影響をもたらしましたか?

浜村毎週データを調べ、自分の意見を表現しなければならないので非常に大変でしたが、それと同時に非常に価値のある作業でした。その週のお題が出た時に、その産業をまず調べます。例えば、造船業であれば中国や韓国の売上が日本に比べて大きいことを知って、その前提の中で、自分がその会社の社長であればどういう展開をするかということを考えます。それを毎週、2年間で約100ケース取り組むので考え方の基礎を作れました。

柴田:テキストディスカッション(註3)を通じて得られた力はありますか?

浜村テキストディスカッションは考え方をスムーズにする思考回路を作ってくれました。Face to Faceだと、何となく雰囲気や声が大きいことで説得力が出てしまう部分がありますが、文字に起こすとなると、非常に中身が問われるようになります。言葉の選び方、書き方のわかりやすさなど非常に求められる部分が大きく、大変ではありますが、それを繰り返し締め切りまでやったこと、それを経験したことが、思考回路の形成に役立ちました。

柴田:在学中は仕事も大変、勉強も大変だったかと思います。

浜村:はい、日々やっていることは地味でつらいし、RTOCSでも大前学長の立てた戦略を見て「おお!これかよ」となるのですが、それを続けていくと自然に頭の中に思考の型ができるようになります。日々面倒くさいと思っても、ちゃんとやれば違う世界が見えてくるんですね。なので当時の自分には「しっかりやりなさい」と声をかけたいですね。大前学長が以前、全ての情報が3Cの形で頭の中で整理される、と仰っていたのを聞いて、「ええ!」と驚きました。


(3C・・・3C分析のこと。大前研一学長が提唱した市場環境を把握するためのフレームワーク)

柴田:それは驚愕ですね。

浜村:ええ。私はそこまではいきませんが、ある程度自分の中で「こういう情報はこういう風に整理するべきだ」ということが分かるようになって、情報に溺れることが少なくなってきましたね。培った思考力は宝になります。

柴田:そういう自然体の「思考」という能力を従業員の方にも伝授したいと、経営者としても思われると思いますが、言葉で伝えることは難しいのでしょうか?

浜村:それは非常に難しいと思います。営業の部下が2名いますが、「どうしてこういう判断をしたのか?」と聞いても自分の取りやすい情報だけで判断していることがあります。「こっちはこうなっているけど、どうなの?」と言っても「いや、そこまで見ていませんでした」となるんですね。自分で「考える力」は必要だと思っていても、トレーニングを通じて習得していく必要があると思います。頭のいい人は別として、普通の人はトレーニングが必要だと思います。

編集者註
註1)「卒業研究」:2年次に取り組む必修科目。およそ1年かけ、経験豊富な担当教員との面談を交えながら、実戦で価値を生む新規事業計画を立案するカリキュラム。

註2)「RTOCS(アールトックス)」:「Real Time Online Case Study」の略称で、BBT独自のケーススタディ。答えの出ていない「現在進行形の企業課題」をケースとして扱い、当該企業に関する調査・分析・戦略立案を自ら実施。大前研一学長担当の科目にて、2年間毎週1ケース=合計約100ケースを繰り返し行います。

註3)テキストディスカッション:BBT大学院ではアウトプットの量・質ともに格段に高められるよう口頭のディスカッションではなくテキスト(文字)でのディスカッションを採用している。

命をかけて取り組みたい事業


柴田:御社の事業をご説明いただけますか?

浜村LEBO ROBOTICSは、風力発電機のメンテナンスに特化している企業です。主に3つの事業があります。1つ目は、風力のブレードを、ロボットを使ってメンテナンスする業務。2つ目は、風力発電機の羽根を撮影して、その画像をAI解析してダメージを分析するAI点検サービス。3つ目が、風力発電機の羽根を補修する薬品や補修材料の販売をする業務です。

柴田:卒業研究でそのビジネスモデルを作られていますが、事業内容とどの程度リンクしていますか?

浜村卒業研究は大きなきっかけになっています。在学中は会社員として、風力発電機のブレードの補修材の販売をしていました。在学中に卒業研究で新しいプロジェクトを考えなければならないというときに、現場でお客様に「風力発電機にこうやって塗ってください」と説明している中で、その作業はロボットで行なった方が安全かつ効率的だと考えていたことを思い出しました。この思いを形にしてみようと思い、卒業研究のテーマとして取り組みました。

柴田:その後の卒業研究をもとに起業しますが、修了時はまだ前職にお勤めでしたね。その後脱サラして起業に踏み込んだと思いますが、これはすごいピボットだと思います。安定したパスから、一寸先は闇。ビジネスにはお金も人も人脈・地脈も必要なのに、ベンチャーはそうしたものがないですよね。リスクが想定される中、どういう気持ちで飛び込んだのですか?

浜村:そもそも風力発電の事業に取り組んだ背景は、前職で化学品部に所属しており、再生可能エネルギーを促進する仕事をしたいと思ったことでした。まず化学品の販売を新規事業として開始し、さらにロボット化をすることになりました。東京都やNEDOの補助金をいただいていて、ある程度の形になったところで、会社から「上海に駐在しなさい」という指示があったんです。

柴田:いいところで辞令が下ったのですね。

浜村:そうなんです。そこで「ロボットは誰がやるのか」と聞いたところ、別の人への引継ぎをするように命じられたのですが、大変骨の折れる事業でしたので、このままでは誰も取り組んでくれないのではないか、なくなってしまうのではないかと心配になりました。「この事業に命をかけて取り組みたい」と思い駐在を断ったところ、ではどうするかと言われ、「私が会社を辞めて、この事業に取り組みます」とお伝えしました。

柴田:おおー。それでドアをあけたというか、ページをめくったというか、その世界に飛び込んだわけですね。その時は慰留や考え直しなどはなかったのでしょうか?

浜村下の子どもが産まれた時期だったので、「何をやっているんだ」と直属の上司には言われました。ただある程度大きな会社でいろいろと不満もあったこともあって、腹が決まったところがありましたね。幸い、直属の上司は非常にサポーティブで、最終的には「だったらやってみなさい」と言っていただけました。

柴田:そういったやりとりがあったものの、前職を退職されてから、前職で培っていたビジネスプランや取引先の関係も問題なく率いて、いまに至ったという訳ですね。

浜村:化学品販売を行っている会社は主に3社ありましたが、どれも継続して浜村経由でビジネスをすることができました。AI技術点検はフランスの企業の技術ですが、「浜村でやってよい」ということで日本の総代理店をさせていただけることになりました。ロボットに関しても補助金を引き継ぐことができて、円満に新しい会社をスタートすることができました。

起業直後は怒涛のような日々を過ごした

柴田:起業されたのが2018年で、怒涛のような日々を過ごされたかと思います。立ち上げ当初のエピソードなどをお聞かせください。

浜村これは起業した方共通だと思いますが、お金と人の問題はありました。お金に関しては銀行からの借り入れを想定していましたが、最初は事業を理解していただけず、借り入れができなかったんです。その後、さまざまな銀行さんをまわったところ運良くものすごく共感してくださる方がいて、紐付きなしの借り入れをさせていただくことができました。

柴田:諦めずに足を運んでみるものですね。

浜村それによって事業を進めることができて、さらなる資金調達にも繋がりましたね。採用に関しても四方八方に働きかけるわけですが、これも運良く弊社の技術に必要な技術を持っている方が現れて、2年ほど勤めていただいていますが、2022年12月に取締役に昇格してもらいました。

柴田:よくヒト・モノ・カネ、と言いますが、ベンチャーの成功はヒト・ヒト・ヒトなのかなと思いますね。投資家の方を説得する上で「こういう経営陣と一緒にやっていく」と言えることで天と地の差がありますよね。

代々引き継がれる起業家精神

柴田:その後、新型コロナウイルスの流行によって日本のエネルギーミックス、例えばどういう方法で電力を作り、気候問題やSDGs, COP26/ 27問題、脱炭素などの課題をどう解決していくかがさらに重要化していますね。日本が世界に向けて設定していく、コミットしていく上で風力発電が果たすべき役割はますます大きくなり、チャンスが到来して増えているのではないですか?

浜村:まさに仰る通りで、風力発電は再生可能エネルギーの中でも大きなシェアを占める可能性があり、グローバルに広がっていますし、非常に大きな可能性を秘めていますね。日本では洋上風力発電が非常に注目を浴びています。2022年の夏にたまたま海外電力会社主催”FREE ELECTRONS”というアクセレレーターというプログラムに選出いただき、ファイナリスト15社に残ったんです。それで欧州大手発電会社や風車1万機保有の風力発電会社と商談をさせていただくことになって。

柴田:素晴らしいチャンスを得ましたね。

浜村彼らは「先数年で設置機を5倍にする」と言うのですが、「メンテナンスはどうするか?」と聞かれると苦笑いをするような状況で、世界的にインフラのメンテナンスが課題なんです。我々が危惧していることは、「風力発電ってクリーンでいいよね」と次々に建てた後、メンテナンスが追いつかず、収益が伸びないという考えが広まり、結果的に頓挫してしまうことです。もちろん人の手によってメンテナンスされる部分もありますが、ある程度ロボットと協業することで最適なメンテナンスをしっかり提供できる体制をグローバルに提供したいですね。

柴田:浜村さんの素晴らしいところは、日本発のスタートアップは国内に閉じていることが多く海外の市場を取っていくことが難しい中、創業直後にフランスなどグローバルに展開できる戦略を立ててこられたことですよね。2022年の末にはドイツに拠点を移し開拓されるとのことですが、尽きることのない起業家エネルギーを感じます。そういったものはご自身のDNAにあるのか、BBT大学院で培ったものなのか、あるいは社会の課題を解決したいという強い思いが突き動かすのか、いかがですか?

浜村:もちろん、BBT大学院で学んだことが大きく影響していますね。在学中の2016年頃から「日本経済はこれからシュリンクしていくので外貨獲得できるビジネスや自己防衛を」と強く言われていました。そのため、海外で活躍する形を強く思うようになったんです。あとは父が自ら会社を立ち上げ、モーターボート関係の仕事で船や設備を作るようなことをしていて、それを間近に見ていたので、影響を受けたのもありますね。

柴田:お子さんもお父さんの楽しそうな顔をみていて惹きつけられるのではないですか?

浜村:そう思います。1人で始めた会社が資金調達を経て8人、2回目の資金調達も終わって資金を倍増させる計画をしています。最初は妻も「馬鹿じゃないの」と言っていましたが、今はサポートしてくれています。この対談のお話をいただいた時も妻と共有し、「すごいことじゃない」と小さな喜びを共有している姿を子どもが見ていたので、彼にとってとても良い瞬間なんじゃないのかなと。記憶に残ってくれればいいなと思いますね。

柴田:「卒業研究」の審査員として浜村さんをみてきた私が鮮やかに覚えているのは、ビジネス・インキュベーション・コンテストでピッチなどをされて、グランプリを受賞されたこと。その時々で「課題はこうです、次はこうです」と自分がどのような一歩を歩み出すべきかを知っていて、覚悟もある。上の方だけを見ながら歩むのではなく、足元を見てしっかりと一歩一歩を踏み出している方、という印象です。その流れが現在も続いていて、パワーアップしていると感じますね。

世界で共感を呼び、チャンスを手繰り寄せた


柴田:日本の再生可能エネルギーは、これまで石炭・石油や原子力で発電して、2011年以降は太陽光、最近になって風力発電ができてきましたよね。浜村さんのような地に足がついた経営者の方が日本のエネルギー地図を塗り替えようと乗り込んでいるので、非常に頼もしいと感じます。日本のエネルギーについて、経営者の1人としてお考えをお聞かせください。

浜村:風力発電等、再生可能エネルギーは発電所に比べてキャパが少なく、数をたくさん設置しなければならないため、再生可能エネルギーだけでやっていくのは難しいとは思っています。しかしながらそこに向けて資金投下して、解決する術を開発していく、多産多死で技術開発をしていくことが大事なんですね。「できるのでしょうか?」という問いに対しては「やるしかない」と考えています。例えば、北海道は風車が建てられる環境ですが、電力を必要とする東京などへは、電線問題で届かないという課題があります。これに関しては、民間が電線を引くというプロジェクトが進んでいます。官がやらないのであれば、民間がやって、官を引っ張っていくということが大事ですね。

柴田:欧米ではどのような状況でしょうか?

浜村:最近、アメリカや欧州企業と話す機会があるのですが、向こうは民が動いて、楔を植えたところで「これに対して何かサポートできることはないのか」と官が付いてくるという動きがあるんです。日本も「官が動いていないからできない」ではなく、まずは動いてみて、それに対して「何かできませんか?」という働きかけることがとても重要なんだと、海外スタートアップと話して感じましたね。

柴田海外ピッチ・コンテストにも積極的に出場されて、商機開拓をしていると聞いています。最近のエピソードをお聞かせください。

浜村:先程もお話しましたが、FREE ELECTRONSという海外電力会社がスポンサーをしているアクセラレーター・プログラムがあり、こちらに申し込んだのですが、その発端となったのがアイルランドの電力会社のESBというところです。ESBに対して「ロボットを点検してください」と人伝てでお願いしたところ、「そういうことはできないが、アクセラレーター・プログラムを突破できたら、うちの会社でもデモをしましょう」という話をいただき、色々なプログラムに申し込むようになりました。そして、FREE ELECTRONSは1次、2次、3次、4次と、700社から15社までに絞られる中に残ることができました。

柴田:すごいですね!

浜村:最終決戦はサンパウロであったのですが、ESBの担当者がいらっしゃったので話をしたところ「1次・2次は花丸をつけた」と仰っていただいて。おもしろいと思ってくれる人がいて、引っ張り上げてくれた人がいたんですね。2次審査以降は、香港とアメリカの会社が二重丸を付けてくださりさらに進むことができました。すごく細いチャンスではありましたが、そうやってファイナリストに残ることができ、「アクションを起こせば、何とかすれば、何とかなる。」という体験もできましたね。

柴田:海外市場の方が風力発電は伸びているので、日本国内の市場のみならず海外で成長のエンジンを作ろうという戦略なのでしょうか?

浜村:風力発電の基数でいうと、世界は30-33万基に対して日本は2500基で1%にも満たないので、会社として成長を求めるのであれば風力発電機の多い欧州・アメリカ・中国・インドという4地域を目指していくのが鉄板だと思います。今まで、アメリカや欧州企業と直接コネクションを得ましたが、欧州事業者はメンテナンスに対する意識が高いんですね。

柴田:それは何が起因しているのでしょうか?

浜村電気代が市場連動価格になっているため、今持っているアセットを最大有効活用しなければ儲からないんです。そのためには何が必要なのかを考えるともちろん立地などもあるのですが、メンテナンスをしっかり行うプランニングをしなければなりません。3年くらい前までは、風車を立てることだけで精一杯で、O&Mに気を配っていなかったんですね。それが、コストを下げて利益を出していこうという視点が出てきており、「欧州でデモンストレーションをしてください」というご要望をいただくようになったため欧州の拠点を設けてお客様をフォローしていこうという決断をしました。

デュッセルドルフに拠点を移す理由


(デュッセルドルフの街並み)

柴田:次の拠点はドイツのデュッセルドルフですが、なぜ選んだのですか?

浜村:今一番コネクションが強いのが、RWEという大手電力会社です。ロンドン、パリなど大都市を調べたところ、デュッセルドルフは日本の製造業が多く出ているんですね。200社以上出ているのかな。日本の企業で働いたことがある現地の方が多くいて採用がしやすいこともあります。また士業、弁護士・会計士・税理士などの方が日本人であったり、日本語を話せる士業の方が多いという部分もあり、営業に100%軸足を移すことが可能なサポート体制があると考えて選びました。

柴田:「日本の市場はこうなっているだろうな」と半歩先を行っているような、例えば我々素人に対して「この国のこういう再生可能エネルギーの市場が日本の近未来なのでは」とエグザンプルになるような場所はありますか?

浜村:イギリスの東側、ドイツの北側である北海エリアが洋上風車で最も栄えている基地ですね。洋上風車は、着床式・浮体式など細かい形式があるのですが、洋上風車をしっかりコマーシャルで使っていることは非常に参考になります。現在、ニューヨーク沖、カリフォルニア沖、中国沖などで設置計画があるものの、しっかりコマーシャル化が進んでいる点では、北海が参考になりますね。

「やる」と決めてやり通すことが自信につながる


柴田:最後に、在学生の皆様やMBAを検討している方に、浜村さんの激励のお言葉をいただきたいと思います。

浜村:MBAを取るか悩んでいる方、会社に勤めていて独立することは考えていないという方、色々いらっしゃると思います。BBT大学院では、RTOCSに取り組むことで自分が普段関わることのない業界の情報を得られますので、ものの見方が大きく変わります。今後起こる環境変化に対して、自分で考え、自信を持ってアクションを起こすことができます。だまされたと思ってやってみてください。そして「やる」と決めたからには、やり通していただくことが自信に繋がります。在学生の方、これから入学するという方、みなさんぜひ頑張っていただきたいと思いますね。

柴田:1500名以上いる修了生の皆さんにもメッセージをお願いします。

浜村修了生の一人として、たくさんのご縁が持てていることを非常に心強く思っています。日本のサラリーマンとして働いているとあまり重要性を感じないかもしれませんが、例えば海外に出て行って90億人という人口の中に混ざった時、同じバックグラウンドをもった人には親近感や仲間意識を持ちます。それが非常に重要で、時には助けになると思います。せっかくの繋がりを皆で活かして、より良い世の中にしていければ。また、自分のやりたいことを実現するためにも活かしていけるといいですね。私も未熟ではありますが、引き続き、みなさんと繋がって頑張っていきたいと思います。

柴田:今回はご活躍する修了生との対談シリーズ第1回目でした。ご登壇いただく方を考えていた際、Forbes JAPANで200 SUPERSTAR ENTREPRENEURSに選出されたのを見かけ「浜村さんにしよう!」と思った次第です。多くのBBT大学院修了生がいますが、意義ある仕事を、それが注目される前から深く考察して、「自分でやる」「自分はこれをやるために会社を興す」という非常にシンプルだけど、強いステートメントを持つ方々ばかりです。我々としては、こういう方が修了生の1人として活躍していることを誇りに持っておりますし、ご活躍は大変うれしいです。日本に限らず、ドイツそしてアジア北米など、全世界で活躍されるのを応援したいと思います。浜村さん、本当に今日はありがとうございました。これからのご活躍についても楽しみにしております。

浜村:ありがとうございました。頑張ります。

浜村圭太郎さんプロフィール

立教大学経済学部卒業、2017年3月ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科修了。商社にて20年間化学品の貿易に従事。2010年に風力発電向け化学品事業を立ち上げ、発電事業者・風車メーカー等との取引を通じてロボット化のニーズを認識。2019年に同社を退社し、LEBO ROBOTICS株式会社を設立。