実践ビジネス英語 2020年1月11日

仕事に効くビジネス英語講座〈第9回〉その英語、相手にササりますか?(電話対応編)



執筆者:PEGL事務局清水

Face-to-faceで会話できれば、話している相手の表情を読み取りながらコミュニケーションできます。
咄嗟に英語が出て来なかったり、言葉で伝え切れないところは、身振り手振りやメモ書きを交えれば、相手に真意を伝えやすくなりますが、表情やジェスチャーやメモ書きが使えないのが、電話によるコミュニケーションです。電話によるコミュニケーションでは、相手が電話口で耳にする言葉だけで、こちらの意図を伝えなければなりません。それだけに、言葉使いが重要になります。

前回のコラムに引き続き、実践ビジネス英語講座でも初級・中級コースで科目を担当している関谷英里子先生の著書『その英語 こう言いかえればササるのに!』(青春出版社)から、“日本では電話口で良く使うのだけれど、日本語の言い回しに引きずられて間違いやすい英語表現”を詳しく解説します。

1.今、よろしいですか?

直訳すると、Now, are you OK(all right)?となります。この英語表現には二つの問題点があります。

まず一つ目は、Are you OK(all right)?という表現です。日本語では「良いですか?」と言うのでそのように聞きたくなりますが、英語では「(体調や具合は)大丈夫?」という相手を気遣うニュアンスで相手に伝わってしまいます。相手は唐突な問いかけに「(体調や具合は)何ともないですよ」という怪訝そうな反応で返してくることでしょう。

二つ目は冒頭の「Now,」という表現です。日本語では「今」ですが、「Now,」と切り出すのは、話題を変える時に良く使います。「さて」「では」「で」という意味に捉えられてしまいます。

Is it okay(all right) to talk now?
という英語表現がしっくりきます。YouではなくItが形式主語になるところがポイントです。

ほかの表現には以下のようなものがあります。どれも同じ意味ですが、バリエーションとして覚えておくと良いでしょう。

Is it a good time to talk?
Is now okay?
Can we talk now?
Are you busy right now?

2.電話で失礼します

Excuse me in telephone.という英語でも意図は何とか伝わるかもしれませんが、文法的には前置詞のinが不適切ですのでそのような英語はありません。over the phoneあるいはon the phoneが文法的には正しい用法です。

「本来ならば会って、face-to-faceで話さなければならないところを、電話で済ませてしまって失礼します」と意訳すると、以下のような英語になります。

I’m sorry we can’t discuss this face-to-face.
I’m sorry we aren’t discussing this face-to-face.

ただし、日本のビジネスシーンでいうところの「電話で失礼します」というニュアンスよりも大げさな印象を与えてしまうこともあります。既に電話で話を始めてしまっているのであれば、電話だから会うよりも失礼ということは必ずしもありません。「電話で失礼します」とわざわざ改まる英語文化は特にはないのだと言う風に『その英語 こう言いかえればササるのに!』では言っています。

3.いただいたお電話で失礼します

直訳したExcuse me in your phone.という英語は相手に意味が伝わりません。電話機の中に入ってしまうというのも不可解な話です。

これはいかにも日本的な表現で、英語ではあまり使わない言い回しです。ただ、相手がかけてきた電話なのにもかかわらず、こちらの用件を後から追加することによって、電話時間が長くなるのは避けられません。「こちらからの用件は、なるべく手短に済ませますね」とことわることによって、マナーの良い人、相手の時間を大切にしてくれる人という印象を得られることでしょう。以下の表現です。

I know you’re the one calling me, so I’ll try to make it brief.
あなたからもらった電話なので、こちらからの用件は手短に済ませます。

4.復唱します

例えば、不在の同僚に後ほど、電話を相手へ掛け直させるとき、相手から聞いた電話番号を念のために確認するのがマナーです。

「I repeat.」というと、何かの警告や緊急事態発生を知らせるアナウンスに使う「繰り返します」という消防や警察の決まり文句です。

例えば、地震や火事が発生した時、「Don’t use the elevator. I repeat. Don’t use the elevator.」と言ったアナウンスに使います。I repeat.と聞くと、相手は「何か緊急事態でも発生したのか」と少し身構えることもあります。

もう1つ言いがちな表現が「I will repeat after you.」です。英語の授業やラジオ講座で先生が「Repeat after me」(後に続いて言ってみましょう)と言うのに聞き慣れているので、つい使ってしまいがちな言い回しです。相手に対しても同様に「語学の授業でもあるまいし」と思わせてしまいますので、ここでは以下の表現を使います。

Let me repeat that (just in case).
(念のため、)復唱させてください。

Let me repeat that.で通じますが、just in caseを付け加えることで、「取り間違えない目的で」復唱していることが相手にはっきり伝わります。確認することで、仕事上のミスも防げます。電話口に出ている相手に対しても間違いなく伝わっている安心感を与えます。

5.そろそろ電話を切りましょうか

「終わりにしましょう」を直訳したLet’s finish.は、何かを完全に終わらせるというニュアンスがあります。プロジェクトを終わる時などには使う場合もありますが、電話を切る時には使わない表現です。

Let’s hang up.とも言いません。hang upはガチャンと切るイメージがあるので、Let’sとは一緒には使いません。「こちらの用件で、相手の時間をちょうだいしてしまっている」という気持ちを込めて、以下の表現を良く使います。

I should let you go.
そろそろ電話を切りましょうか。

電話をそろそろ切ったほうが良いかもしれない場合、「私が切りたいと思っている」ことを表には出さないほうが望ましいです。「この電話からあなたを解放しないと」と自分の都合ではなく、相手の都合を尊重しているという心遣い を表すこの表現を使うことで、印象を良くすることができます。

いかがでしたでしょうか。

電話だと、話し相手が不可解な表情をしていても、こちらではその表情を見ることができません。その結果、「自分が話している英語が、どこか変なのかな」と気が付かないまま、自己流の電話英語を修正しないで過ぎてしまうおそれがあります。「自分もやってしまっているかも」と思った方は、ぜひ今回紹介したフレーズを練習してみてはいかがでしょうか。

ビジネスパーソンとして、かっこよく、正しい英語の決まり文句が使えるようにしたいものですね。

【参考】その英語 こう言いかえればササるのに!pp.169‐177,187-188(最終アクセス:2020年1月11日)
http://www.amazon.co.jp/dp/4413044053

※この記事は、ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ講座「実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-」で毎週木曜配信中のメルマガ「グローバルリーダーへの道」において、2015年2月12日に配信された『今週のコラム』を編集したものです。


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ナビゲーター:清水 愛(しみず めぐみ)
PEGL[ペグル] 英語教育事務局 マーケティング/PEGL説明会、個別ガイダンス担当。前職は海外留学カウンセラー。2012年BBT入社。これまで6,000人を越えるビジネスパーソンと接し、日々ひとりひとりの英語学習に関する悩み解決に向き合いながら、世界で挑戦する人たちの人生に関わる。