業界ウォッチ 2019年12月16日

教員のちょっと気になる「世界の軍事企業売上高」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「世界の軍事企業売上高」を取り上げてご紹介いたします。

先日(12/9)、スウェーデンの「ストックホルム国際平和研究所」(SIPRI)が、2018年の軍事企業の売上高上位100社(中国を除く)を発表しました。同発表によると100社の総売上高は4203億ドル(約46兆円)と対前年比4.6%増となっています。

確かに、近年トランプ大統領の動きをみていると、安全保障面での交渉で、防衛費負担を求めたり、各国首脳との会談で戦闘機等の契約をこぎつけたりする等の報道を見かけることが多くなったように思います。日本からすると、アジア近隣の情勢から気になる点もありますし、世界的には中東問題や、欧州やNATO、ロシアなどの動きなどの報道もあり、軍事面での動きが活発化しているようにも思えます。また米国の政権は、軍事ロビーの支援を受けているため、次の選挙を有利にするためにも、米国の軍事企業のための行動をとることが求められているという報道も見かけます。

それでは、実際に軍事企業の売上高はどのように推移しているのでしょうか。また、どの国の企業の割合が高く、上位企業にはどのような企業がランク入りしているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、軍事企業上位100社の総売上高の推移を見てみます。2002年は2862億ドルでしたが、そこから増加トレンドで10年には4554億ドルと過去最高に達しています。以降減少に転じ、14年に3918億ドルと4000億ドル台を割り込んでいます。そこから微増・横ばい傾向となっていましたが、18年に4203億ドルと再び増加ペースが高まっています。

国別の構成比をみると、18年はトップが米国で59%、次いでロシア(8.6%)、英国(8.4%)、フランス(5.5%)と続きます。ちなみに日本は2.4%で7位となっています。

次に、売上高上位10企業(18年)を見ると、トップがロッキード・マーティン(米)、次いでボーイング(米)、ノースロップ・グラマン(米)、レイセオン(米)、ゼネラル・ダイナミクス(米)と、上位5社を米国企業が占めていることが分かります。ちなみに日本企業では三菱重工が25位にランク入りしています。

また、この図表には示されていませんが、SIPRIの資料を見ると武器輸出(14-18年)の上位国は米国、ロシア、フランスの順で、武器輸入(14-18年)の上位はサウジアラビア、インド、エジプトの順となっています。

こうしてみると、やはり米国軍事企業の存在感が圧倒的であることが分かります。

軍事ビジネスに直接かかわることは少ないかもしれませんが、近年ビジネス環境が政治リスクを伴うことが多くなっているように思います。その背景や、国際情勢・安全保障・軍事・防衛に関する報道の裏側にこうした企業が存在していることを知っておくと、世界の動きを理解する一助になるかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)