
「ものづくりは演歌だ」——そんな熱い信念を胸に、売上100億・取引100カ国を目指す「ビジョン300」を掲げる経営者がいます。Forbes JAPAN主催のアワードでグランプリを受賞し、世界53カ国に製品を輸出する株式会社筑水キャニコムの代表取締役社長、包行良光(かねゆき・よしみつ)さんです。
2013年にBBT大学院を修了した包行さんは、いかにして同社を「超一流のグローバル中小企業」へと導いてきたのでしょうか。ユニークな製品開発の裏側から、自身の経営を支えるBBTでの学びまで、インタビュアーの柴田巌(株式会社Aoba-BBT代表取締役)がたっぷりと紐解きます。
※こちらの記事はYouTube「Aoba-BBT ビジネスチャンネル」にて公開中の対談を特別に記事化したものです。

🎤柴田:まずは御社の事業概要と、包行さんご自身についてご紹介いただけますでしょうか。
💡包行:弊社、株式会社筑水キャニコムは、主に農業用機械や、土木建設・林業向けの運搬車を製造している会社です。おかげさまで業績は順調に推移しており、今期は売上87億円を見込んでいます。現在は国内に8拠点、海外に4拠点を構え、福岡県うきは市という人口3万人弱の町から、世界53カ国へ製品を輸出しています。2023年度は売上100億円を目標に掲げており、海外売上比率も53%で推移しています。
事業の大きな特徴は、私がBBTで学んだ「デザイン経営」を活かし、デザインに特化したものづくりを推進している点です。また、大前(研一)先生も大好きな”ダジャレ”を効かせたユニークなネーミングにもこだわっています。「草刈機まさお」や「三輪駆動静香(さんりんくどうしずか)」など、お客様にクスッと笑っていただけるような製品づくりを大切にしています。
こうした独自の取り組みをご評価いただき、Forbes JAPAN様からの表彰や、中小企業庁のグッドカンパニー大賞特別賞など、数々の賞もいただきました。これからも、次世代の農業や、土木建設現場の「省力化」に向けて邁進していく所存です。
🎤柴田:創業者はご家族の方だと伺っています。包行さんが現在の社長職に就かれたのはいつ頃でしょうか?
💡包行:祖父の包行良人が創業し、現在68年目です。私自身は、2015年1月1日に現職に就任しまして、今年で8年目を迎えます。

🎤柴田: 包行さんがBBT大学院に入学されたのは2010年ですね。入学のきっかけや動機についてお聞かせいただけますか?
💡包行: 私は2004年に、創業家として筑水キャニコムに入社しました。「将来社長になるために、まずは何をすべきか」と考えていたところ、現在の会長である父から大前(研一)学長の本を手渡されたのが最初のきっかけです。
翌2005年からは、BBTの『LTE(問題解決力トレーニングプログラム)』を受講し、ロジカルシンキングなどを学び始めました。ただ、実を言うと最初は長続きしなかったんです。その後アメリカへ渡ったのですが、海外でビジネスを経験する中で「もう一度しっかり学び直す必要がある」と現場で痛感しました。
そんな折、2010年に父からBBT大学院を勧められました。出張の飛行機の中や仕事の合間など、オンラインでどこでも授業を受けられる点にすごく魅力を感じたんです。「2年間で無事に卒業できるか」という不安はありましたが、まずは挑戦してみようと入学を決意し、2012年に無事2年で卒業することができました。
🎤柴田: 2010年といえば、まだ大学院が開学して間もない頃ですね。当時はオンライン学習の環境も現在とはかなり違っていたと思いますが、記憶に残っているエピソードはありますか?
💡包行: とにかく「ネットが繋がらないこと」が大変でしたね。ちょうど卒業研究(註2)に取り組んでいた頃、私は南米のチリにいたんです。現地の空港はWi-Fiの電波が弱く、容量の重い課題ファイルを送信するだけで1時間もかかってしまいました。
当時はまだ4Gもなく3Gの時代でしたから、ネット環境が十分に整っておらず、時間が決められている試験を受けるのも一苦労でした。iPadのようなタブレット端末もまだ普及していなかったので、常にパソコンを持ち歩いて受講していましたね。
🎤柴田: 今のインターネット環境は映像もスムーズに閲覧できますから、当時と比べると隔世の感がありますよね。「今の学生は恵まれている」とおっしゃる修了生(アルムナイ)の方もいらっしゃいます。ところで、当時のチリへは、やはり農業機械の営業や販路開拓で行かれていたのでしょうか?
💡包行: はい、チリへ赴いたのには大きく2つの理由がありました。 1つは、すでにフランスのワイナリーへ草刈り機を輸出していた実績があったので、「ワインの名産地であるチリでも販売できるのではないか」と考えたためです。 もう1つは、2011年の東日本大震災の際、津波がチリの沿岸にも到達し、現地でインフラ整備の必要性が高まっていたためです。弊社の強みであるコンクリート関連の工事向け機械で何か貢献できるのではないかと考え、現地へ向かいました。
編集註:
註1)「AirCampus」:MBA講義映像の配信、双方向テキストディスカッションの機能を有する、BBT大学院独自のオンデマンド学習システム。
註2)「卒業研究」:2年次に取り組む必修科目。およそ1年かけ、経験豊富な担当教員との面談を交えながら、実戦で価値を生む新規事業計画を立案するカリキュラム。

■ 「行動に移してこそ問題解決」——今も社内で活きるBBTのメソッド
🎤柴田:BBT大学院で学んだことは当時のお仕事の役に立ちましたでしょうか。
💡包行: 当時だけでなく、今でも大いに役立っています。ものづくりや仕事には必ず「ストーリー」があり、それを具現化する上でBBTでの学びが活きているんです。現在も、社内のプレゼンテーションや会議ではBBTのメソッドが頻繁に使われています。
特に大きかったのは「問題解決」の考え方ですね。英語では「Problem, Solving, Action(PSA)」と言いますが、日本では問題を提起して終わってしまうケースが非常に多いんです。しかし、本当に重要なのは「アクションを起こすためにどう労力を使うか」です。我々のようなものづくりの現場では、行動に移さない限り問題解決にはなりません。その実践的な姿勢について、ものすごく学ばせていただきました。
また、私が入学した2010年頃は「クレド(企業信条)」などのビジネスエシックスが注目されていた時期でした。「会社としてどういう考え方を持つべきか」という問いは、現在のESG(環境・社会・ガバナンス)にも通じるテーマです。ガバナンスの根幹はどこにあるのか、その基礎の基礎をしっかりと勉強させてもらいました。それから、野田(稔)先生の組織論の授業もものすごく面白く、印象に残っています。

■ オンライン上で丁々発止の議論を交わしたからこそ、一生モノの絆ができる
🎤柴田: オンライン学習というと、どうしても孤独に学ぶ印象を持たれがちです。しかしBBT大学院では、ネット上で日々丁々発止の議論を交わしているため、オフ会などで直接会うとすぐに打ち解け、非常に密な人間関係が築けるとよく伺います。当時の同期の方々とは、現在も交流が続いているのでしょうか?
💡包行: はい、続いています。同期が福岡に来てくれたり、私が東京へ行った際に一緒に食事をしたりと、今でも10人以上と深く繋がっています。SNSなどを通じて日常的に連絡を取り合い、お互いのビジネスの課題について相談し合うことも多いです。実は、先日上場された鳥生(とりお)さんも同期なんですよ。ネットチャットが普及し始めた頃に「同期で集まろう」と声を掛け合った仲です。
🎤柴田: 鳥生さんには、この対談企画にも以前ご登壇いただき、大変エキサイティングなお話を伺いました。ぜひ今後、お二人の対談企画なども実現できればと思います。
💡包行: 鳥生さんも非常に面白い方ですからね。しばらくお会いできていないので、私もぜひご一緒したいです。
■ 「ものづくりは演歌だ」——大前学長の教えが息づく独自のPR戦略
🎤柴田: 続いて、御社のユニークな取り組みについて伺います。「ものづくりは演歌だ」という非常にインパクトのあるキャッチコピーや、ダジャレを巧みに織り交ぜたPR活動が印象的です。これらがForbes JAPAN主催の「SMALL GIANTS AWARD 2022-2023」でグランプリを受賞された要因の一つだと感じているのですが、この独自のスタイルは包行社長が考案されたのでしょうか?
💡包行: いえ、これは元々、現在の会長である父が考案したものです。「ものづくりを面白くするために、どう製品を光らせるか」「ただモノを作るだけでなく、お客様により密接に、俊敏に行動しよう」という考えは父のアイデアですね。そしてその根底には、BBTや大前先生の教えが父に与えた影響も非常に大きいと感じています。

■ あの「日産サクラ」を抑えてネーミング大賞を受賞!? グッズに込めた熱い想い
🎤柴田: 御社からは、ユーモアあふれる販促グッズの帽子やタオル、扇子などを本学にもお送りいただきました。こうしたユニークなグッズにまつわるエピソードも、ぜひお聞かせいただけますか?
💡包行: 例えば、この赤い帽子に書かれている「りんごブラッサムまさお」というのは、弊社の草刈機の製品名なんです。元々「草刈機まさお」という主力製品がありまして、それをシリーズ化しています。刈幅が1000ミリだから「1000MASAO」、一人で草に立ち向かうから「侍まさお」といった具合です。
今回の「りんごブラッサムまさお」は、シーズンごとに草の刈り方が変わるリンゴ農家さんに特化した草刈機です。実はこのネーミング、日刊工業新聞社様の「ネーミング大賞」を受賞しまして。なんと、あの「日産サクラ」を抑えての受賞だったんです。「リンゴの花が桜に勝った!」と嬉しくなりまして、記念にこの帽子を作りました(笑)。
もう一つの黄色いグッズ「鷹になれ」についてですが、弊社は2021年に約42億円を投じて新工場を建設しました。その所在地が「鷹取」という地名だったことにちなみ、「鷹のように世界の大空を駆け巡るものづくりをしよう」という思いを込めて作ったノベルティです。実は、黄色というのは非常に塗装が難しい色なんです。しかし、「だからこそ外観品質にも徹底的にこだわったものづくりをしていこう」という決意表明として、あえてド派手な黄色を採用しました。
🎤柴田: まずは名前やビジュアルで覚えてもらい、そこから商品やサービスを想起してもらうのがマーケティングの基本だとすれば、これほどインパクトのあるアプローチはありませんね。このユニークなグッズやネーミングは、海外の方に対しても直感的に訴求でき、コミュニケーションのきっかけとしても非常に有効だと感じます。
💡包行: おっしゃる通りです。元々、農業機械の業界は緑色など、目立たない色が主流でした。そこであえて独自のデザインやカラーリングを打ち出している背景には、BBTの講義映像でも紹介されていたダニエル・ピンク氏の『モチベーション3.0』や、大前先生が翻訳された書籍にある「デザインは機能の一部である」という考え方が、我々に強く影響を与えています。

🎤柴田: 今後5年間の経営方針については、どのようにお考えでしょうか。
包行: 正直なところ、「がむしゃらに行動する」ことさえできれば、売上100億円という数字は意外と到達できるものだと思っています。しかし、その先の200億、300億といった目標になってくると、明らかに今の行動や組織のあり方を変えなければ達成できません。
そこで重要になるのが、リスキリングやリカレント教育です。同じ学びを共有し、同じ考え方を持った人材を社内にどれだけ増やせるかが今後の鍵になります。現在、社内でも数名にBBTのリーダープログラムを受講させていますが、「次世代のコアとなるリーダーを誰にするか」が一番の課題ですね。
弊社では2040年までの「ものづくり」の方針はすでに決まっています。だからこそ、それに伴う「組織づくり」が重要です。後継者の育成も含め、人を育てるために今後どう動いていくべきか、日々模索しているところです。
■ 逆風のコロナ禍でも歩みを止めず、業績アップへ
🎤柴田:2000年以降のコロナ禍では大きく働き方や生活、社会や世界そのものが変わらざるを得ない時期だったかと思います。この期間を振り返ってみていかがですか。
💡包行: コロナ禍の3年間は、改めて自社の組織をじっくりと振り返る良い機会になりましたね。あとは……私自身は思いのほか体が丈夫なもので(笑)、結局1回も自粛することなく海外へ飛び回っていました。帰国後の待機期間中も、ずっと機械の運転をして過ごしていたくらいです。 実は、会社としての業績はこの期間に逆に伸びたので、経営的な苦労というものはあまり感じませんでした。
🎤柴田: 世の中全体がスローダウンし、自粛を余儀なくされている間も歩みを止めず、前進し続けたことが、逆に大きなチャンスとなって業績アップに繋がったのですね。
💡包行: ええ、ものすごく業績が伸びました。コロナ前は売上が大体60億円くらいで、3年ほど踊り場を迎えていたんです。実は、会社としてはコロナをあまり気にせず、リモートワークも一切導入しませんでした。九州はみんな車通勤ですし、「田舎だから空気が綺麗で大丈夫だろう」と勝手に勘違いして(笑)。逆に、これまで通り出社を続けたことで、社内の雰囲気はかえって良くなりましたね。
🎤柴田: 地方ならではの車社会ということもあり、密な通勤を避けつつ、配慮しながら従来の働き方を維持できたのですね。 さて、次の5年間に向けた次期経営チームの育成という観点で伺います。御社において、これからのリーダーにはどのような素養が重要になるとお考えですか。
■ 「知識」が自信を生み、行動を変える——次世代リーダーに求める素養
💡包行: 「学び」というのは、結局のところ「自信をつけるため」にあると思っています。アメリカのビジネスではよく「ASK(Attitude:態度、Skill:スキル、Knowledge:知識)」と言われますが、私はこの中で「知識(Knowledge)」が本当に重要な部分だと考えているんです。
知識がないから、自信が生まれない。自信がないから、行動に移せない。行動しないから、経験が積めない——。これが私の根幹にある考え方です。ですから、社員にそうした知識を学ぶ機会や場を与えることがすごく重要になってくるのです。ただ単に「リスキリング」という言葉だけで済ませられるものではありません。経営者や上司として、学びに向かう若い人たちの背中を押してあげること。それが今の僕の役割だと思っています。次世代に経験を積ませるための最短距離は「学び」だと信じているので、意欲ある若手は全力で後押ししていきたいですね。
■ 「私が一番失敗している。全部責任は取るから挑戦しろ」
🎤柴田: 若手からすると、「行動して失敗するのが怖い」「上司や経営陣に怒られるのではないか」と心配する人も多いと思います。具体的にはどのように背中を押していらっしゃるのでしょうか。
💡包行: 私自身が失敗ばかりですからね(笑)。アフリカに行って失敗しましたし、南米でもそこまで成功したわけではありません。結局、いろいろな経験をさせてもらい、社内で一番失敗しているのが私なんです。ですから若手には、「あまり気にするな。全部責任は取るから」と伝えています。
それに、今は就業期間が70歳、75歳と延びており、若手が上のポストに上がるチャンスがどんどん狭くなっています。そのチャンスを自ら掴み取るためにも、やはり「学び」が重要になります。 学ぶことに年齢は関係ありません。私のBBTの同期にも60歳で入学された方がいて、10年以上経った今でも連絡を取り合う仲です。思い立ったらいくつになっても学び直せるんです。
■ 「自分を信じてやりなさい」

🎤柴田: もしBBTに入学された2010年に戻れるとしたら、当時のご自身にどのような声を掛けますか?
💡包行: 私は元々経営の素養がなかったので、BBTの講義に触れること自体が毎日楽しくて、時間を忘れて視聴していました。ですから、「自分を信じてやりなさい」と声をかけたいですね。BBTに出会えたことで会社が変わり、今の実績に繋がっているので、あの時諦めずにやり遂げて本当に良かったと思っています。
■ 劇的な変化を迎える業界。今後の事業戦略は
🎤柴田: 最後に、事業戦略面では今後5年、10年とどのような戦略を考えていらっしゃいますか。
💡包行: 環境問題への対応などもあり、業界自体が今、劇的に変化しています。弊社のこれまでのものづくりはエンジンが主体でしたから、ガソリンや軽油を使用する点で、環境面への対応が急務となっています。今後のインフラが電動化へと向かう中、まさにESGの「E(環境)」が最大の課題です。
例えば、来年のカリフォルニア州では新規でエンジン車を販売できなくなります。このように激変していく世界の中で、我々がどう事業戦略を立てて入り込んでいくか。やはり市場の中心はアメリカになりますので、私自身、11月から毎月アメリカへ足を運んでいます。法規制を先取りし、世界で勝負していくために、すぐに行動に移して自社の事業環境をガラリと変えていく。これが今後の最も大きな戦略です。
🎤柴田: 地球規模の経営テーマを克服しなければグローバル競争には勝てないという、強い覚悟を感じました。ぜひこれからも突き進んでください。

■ 迷える社会人へ「学ぼうと思ったその瞬間がスタート」
🎤柴田: 最後に、「自分も学ばなきゃ」と思いつつ一歩を踏み出せずにいる、迷える社会人の方々へメッセージをお願いします。
💡包行: ズバリ、MBAは持っているといいですよ(笑)。「思い立ったらすぐ行動」というのが、BBTの基本的な学びの姿勢です。ですから、学ぼうと思ったらぜひ「今日」行動に移してほしいですね。
もちろん、費用や時間はかかりますが、それ以上に得られるもの、後から返ってくるものは莫大です。学ぼうと思ったその瞬間がスタートラインですので、ぜひ今日からスタートを切っていただきたいと思います。
🎤柴田: 力強いお言葉に、私も身が引き締まる思いです。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
💡包行: こちらこそ、ありがとうございました。
福岡県にある農機具製造・販売の株式会社筑水キャニコム代表取締役社長。
大学卒業後の2004年3月に同社に入社。2006年4月に営業本部マーケティング副本部長に就任した後、単身渡米。CANYCOM USAの社長としてアメリカの市場を開拓。2008年4月からグローバル・マーケティング本部長に就任し、国内外の営業を陣頭指揮。2009年6月取締役に就任。2015年1月から現職。
「ものづくりは演歌だ」の精神で「ビジョン300」(売上100億、取引100ヵ国、100年企業)を掲げ、“超一流のグローバル中小企業”を目指している。
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 経営学研究科 経営管理専攻に2010年4月入学、2012年3月修了。Forbes JAPAN主催のSMALL GIANTS AWARD 2022- 2023にて“グランプリ”を受賞。

「ものづくりは演歌だ」——そんな熱い信念を胸に、売上100億・取引100カ国を目指す「ビジョン300」を掲げる経営者がいます。Forbes JAPAN主催のアワードでグランプリを受賞し、世界53カ国に製品を輸出する株式会社筑水キャニコムの代表取締役社長、包行良光(かねゆき・よしみつ)さんです。
2013年にBBT大学院を修了した包行さんは、いかにして同社を「超一流のグローバル中小企業」へと導いてきたのでしょうか。ユニークな製品開発の裏側から、自身の経営を支えるBBTでの学びまで、インタビュアーの柴田巌(株式会社Aoba-BBT代表取締役)がたっぷりと紐解きます。
※こちらの記事はYouTube「Aoba-BBT ビジネスチャンネル」にて公開中の対談を特別に記事化したものです。

🎤柴田:まずは御社の事業概要と、包行さんご自身についてご紹介いただけますでしょうか。
💡包行:弊社、株式会社筑水キャニコムは、主に農業用機械や、土木建設・林業向けの運搬車を製造している会社です。おかげさまで業績は順調に推移しており、今期は売上87億円を見込んでいます。現在は国内に8拠点、海外に4拠点を構え、福岡県うきは市という人口3万人弱の町から、世界53カ国へ製品を輸出しています。2023年度は売上100億円を目標に掲げており、海外売上比率も53%で推移しています。
事業の大きな特徴は、私がBBTで学んだ「デザイン経営」を活かし、デザインに特化したものづくりを推進している点です。また、大前(研一)先生も大好きな”ダジャレ”を効かせたユニークなネーミングにもこだわっています。「草刈機まさお」や「三輪駆動静香(さんりんくどうしずか)」など、お客様にクスッと笑っていただけるような製品づくりを大切にしています。
こうした独自の取り組みをご評価いただき、Forbes JAPAN様からの表彰や、中小企業庁のグッドカンパニー大賞特別賞など、数々の賞もいただきました。これからも、次世代の農業や、土木建設現場の「省力化」に向けて邁進していく所存です。
🎤柴田:創業者はご家族の方だと伺っています。包行さんが現在の社長職に就かれたのはいつ頃でしょうか?
💡包行:祖父の包行良人が創業し、現在68年目です。私自身は、2015年1月1日に現職に就任しまして、今年で8年目を迎えます。

🎤柴田: 包行さんがBBT大学院に入学されたのは2010年ですね。入学のきっかけや動機についてお聞かせいただけますか?
💡包行: 私は2004年に、創業家として筑水キャニコムに入社しました。「将来社長になるために、まずは何をすべきか」と考えていたところ、現在の会長である父から大前(研一)学長の本を手渡されたのが最初のきっかけです。
翌2005年からは、BBTの『LTE(問題解決力トレーニングプログラム)』を受講し、ロジカルシンキングなどを学び始めました。ただ、実を言うと最初は長続きしなかったんです。その後アメリカへ渡ったのですが、海外でビジネスを経験する中で「もう一度しっかり学び直す必要がある」と現場で痛感しました。
そんな折、2010年に父からBBT大学院を勧められました。出張の飛行機の中や仕事の合間など、オンラインでどこでも授業を受けられる点にすごく魅力を感じたんです。「2年間で無事に卒業できるか」という不安はありましたが、まずは挑戦してみようと入学を決意し、2012年に無事2年で卒業することができました。
🎤柴田: 2010年といえば、まだ大学院が開学して間もない頃ですね。当時はオンライン学習の環境も現在とはかなり違っていたと思いますが、記憶に残っているエピソードはありますか?
💡包行: とにかく「ネットが繋がらないこと」が大変でしたね。ちょうど卒業研究(註2)に取り組んでいた頃、私は南米のチリにいたんです。現地の空港はWi-Fiの電波が弱く、容量の重い課題ファイルを送信するだけで1時間もかかってしまいました。
当時はまだ4Gもなく3Gの時代でしたから、ネット環境が十分に整っておらず、時間が決められている試験を受けるのも一苦労でした。iPadのようなタブレット端末もまだ普及していなかったので、常にパソコンを持ち歩いて受講していましたね。
🎤柴田: 今のインターネット環境は映像もスムーズに閲覧できますから、当時と比べると隔世の感がありますよね。「今の学生は恵まれている」とおっしゃる修了生(アルムナイ)の方もいらっしゃいます。ところで、当時のチリへは、やはり農業機械の営業や販路開拓で行かれていたのでしょうか?
💡包行: はい、チリへ赴いたのには大きく2つの理由がありました。 1つは、すでにフランスのワイナリーへ草刈り機を輸出していた実績があったので、「ワインの名産地であるチリでも販売できるのではないか」と考えたためです。 もう1つは、2011年の東日本大震災の際、津波がチリの沿岸にも到達し、現地でインフラ整備の必要性が高まっていたためです。弊社の強みであるコンクリート関連の工事向け機械で何か貢献できるのではないかと考え、現地へ向かいました。
編集註:
註1)「AirCampus」:MBA講義映像の配信、双方向テキストディスカッションの機能を有する、BBT大学院独自のオンデマンド学習システム。
註2)「卒業研究」:2年次に取り組む必修科目。およそ1年かけ、経験豊富な担当教員との面談を交えながら、実戦で価値を生む新規事業計画を立案するカリキュラム。

■ 「行動に移してこそ問題解決」——今も社内で活きるBBTのメソッド
🎤柴田:BBT大学院で学んだことは当時のお仕事の役に立ちましたでしょうか。
💡包行: 当時だけでなく、今でも大いに役立っています。ものづくりや仕事には必ず「ストーリー」があり、それを具現化する上でBBTでの学びが活きているんです。現在も、社内のプレゼンテーションや会議ではBBTのメソッドが頻繁に使われています。
特に大きかったのは「問題解決」の考え方ですね。英語では「Problem, Solving, Action(PSA)」と言いますが、日本では問題を提起して終わってしまうケースが非常に多いんです。しかし、本当に重要なのは「アクションを起こすためにどう労力を使うか」です。我々のようなものづくりの現場では、行動に移さない限り問題解決にはなりません。その実践的な姿勢について、ものすごく学ばせていただきました。
また、私が入学した2010年頃は「クレド(企業信条)」などのビジネスエシックスが注目されていた時期でした。「会社としてどういう考え方を持つべきか」という問いは、現在のESG(環境・社会・ガバナンス)にも通じるテーマです。ガバナンスの根幹はどこにあるのか、その基礎の基礎をしっかりと勉強させてもらいました。それから、野田(稔)先生の組織論の授業もものすごく面白く、印象に残っています。

■ オンライン上で丁々発止の議論を交わしたからこそ、一生モノの絆ができる
🎤柴田: オンライン学習というと、どうしても孤独に学ぶ印象を持たれがちです。しかしBBT大学院では、ネット上で日々丁々発止の議論を交わしているため、オフ会などで直接会うとすぐに打ち解け、非常に密な人間関係が築けるとよく伺います。当時の同期の方々とは、現在も交流が続いているのでしょうか?
💡包行: はい、続いています。同期が福岡に来てくれたり、私が東京へ行った際に一緒に食事をしたりと、今でも10人以上と深く繋がっています。SNSなどを通じて日常的に連絡を取り合い、お互いのビジネスの課題について相談し合うことも多いです。実は、先日上場された鳥生(とりお)さんも同期なんですよ。ネットチャットが普及し始めた頃に「同期で集まろう」と声を掛け合った仲です。
🎤柴田: 鳥生さんには、この対談企画にも以前ご登壇いただき、大変エキサイティングなお話を伺いました。ぜひ今後、お二人の対談企画なども実現できればと思います。
💡包行: 鳥生さんも非常に面白い方ですからね。しばらくお会いできていないので、私もぜひご一緒したいです。
■ 「ものづくりは演歌だ」——大前学長の教えが息づく独自のPR戦略
🎤柴田: 続いて、御社のユニークな取り組みについて伺います。「ものづくりは演歌だ」という非常にインパクトのあるキャッチコピーや、ダジャレを巧みに織り交ぜたPR活動が印象的です。これらがForbes JAPAN主催の「SMALL GIANTS AWARD 2022-2023」でグランプリを受賞された要因の一つだと感じているのですが、この独自のスタイルは包行社長が考案されたのでしょうか?
💡包行: いえ、これは元々、現在の会長である父が考案したものです。「ものづくりを面白くするために、どう製品を光らせるか」「ただモノを作るだけでなく、お客様により密接に、俊敏に行動しよう」という考えは父のアイデアですね。そしてその根底には、BBTや大前先生の教えが父に与えた影響も非常に大きいと感じています。

■ あの「日産サクラ」を抑えてネーミング大賞を受賞!? グッズに込めた熱い想い
🎤柴田: 御社からは、ユーモアあふれる販促グッズの帽子やタオル、扇子などを本学にもお送りいただきました。こうしたユニークなグッズにまつわるエピソードも、ぜひお聞かせいただけますか?
💡包行: 例えば、この赤い帽子に書かれている「りんごブラッサムまさお」というのは、弊社の草刈機の製品名なんです。元々「草刈機まさお」という主力製品がありまして、それをシリーズ化しています。刈幅が1000ミリだから「1000MASAO」、一人で草に立ち向かうから「侍まさお」といった具合です。
今回の「りんごブラッサムまさお」は、シーズンごとに草の刈り方が変わるリンゴ農家さんに特化した草刈機です。実はこのネーミング、日刊工業新聞社様の「ネーミング大賞」を受賞しまして。なんと、あの「日産サクラ」を抑えての受賞だったんです。「リンゴの花が桜に勝った!」と嬉しくなりまして、記念にこの帽子を作りました(笑)。
もう一つの黄色いグッズ「鷹になれ」についてですが、弊社は2021年に約42億円を投じて新工場を建設しました。その所在地が「鷹取」という地名だったことにちなみ、「鷹のように世界の大空を駆け巡るものづくりをしよう」という思いを込めて作ったノベルティです。実は、黄色というのは非常に塗装が難しい色なんです。しかし、「だからこそ外観品質にも徹底的にこだわったものづくりをしていこう」という決意表明として、あえてド派手な黄色を採用しました。
🎤柴田: まずは名前やビジュアルで覚えてもらい、そこから商品やサービスを想起してもらうのがマーケティングの基本だとすれば、これほどインパクトのあるアプローチはありませんね。このユニークなグッズやネーミングは、海外の方に対しても直感的に訴求でき、コミュニケーションのきっかけとしても非常に有効だと感じます。
💡包行: おっしゃる通りです。元々、農業機械の業界は緑色など、目立たない色が主流でした。そこであえて独自のデザインやカラーリングを打ち出している背景には、BBTの講義映像でも紹介されていたダニエル・ピンク氏の『モチベーション3.0』や、大前先生が翻訳された書籍にある「デザインは機能の一部である」という考え方が、我々に強く影響を与えています。

🎤柴田: 今後5年間の経営方針については、どのようにお考えでしょうか。
包行: 正直なところ、「がむしゃらに行動する」ことさえできれば、売上100億円という数字は意外と到達できるものだと思っています。しかし、その先の200億、300億といった目標になってくると、明らかに今の行動や組織のあり方を変えなければ達成できません。
そこで重要になるのが、リスキリングやリカレント教育です。同じ学びを共有し、同じ考え方を持った人材を社内にどれだけ増やせるかが今後の鍵になります。現在、社内でも数名にBBTのリーダープログラムを受講させていますが、「次世代のコアとなるリーダーを誰にするか」が一番の課題ですね。
弊社では2040年までの「ものづくり」の方針はすでに決まっています。だからこそ、それに伴う「組織づくり」が重要です。後継者の育成も含め、人を育てるために今後どう動いていくべきか、日々模索しているところです。
■ 逆風のコロナ禍でも歩みを止めず、業績アップへ
🎤柴田:2000年以降のコロナ禍では大きく働き方や生活、社会や世界そのものが変わらざるを得ない時期だったかと思います。この期間を振り返ってみていかがですか。
💡包行: コロナ禍の3年間は、改めて自社の組織をじっくりと振り返る良い機会になりましたね。あとは……私自身は思いのほか体が丈夫なもので(笑)、結局1回も自粛することなく海外へ飛び回っていました。帰国後の待機期間中も、ずっと機械の運転をして過ごしていたくらいです。 実は、会社としての業績はこの期間に逆に伸びたので、経営的な苦労というものはあまり感じませんでした。
🎤柴田: 世の中全体がスローダウンし、自粛を余儀なくされている間も歩みを止めず、前進し続けたことが、逆に大きなチャンスとなって業績アップに繋がったのですね。
💡包行: ええ、ものすごく業績が伸びました。コロナ前は売上が大体60億円くらいで、3年ほど踊り場を迎えていたんです。実は、会社としてはコロナをあまり気にせず、リモートワークも一切導入しませんでした。九州はみんな車通勤ですし、「田舎だから空気が綺麗で大丈夫だろう」と勝手に勘違いして(笑)。逆に、これまで通り出社を続けたことで、社内の雰囲気はかえって良くなりましたね。
🎤柴田: 地方ならではの車社会ということもあり、密な通勤を避けつつ、配慮しながら従来の働き方を維持できたのですね。 さて、次の5年間に向けた次期経営チームの育成という観点で伺います。御社において、これからのリーダーにはどのような素養が重要になるとお考えですか。
■ 「知識」が自信を生み、行動を変える——次世代リーダーに求める素養
💡包行: 「学び」というのは、結局のところ「自信をつけるため」にあると思っています。アメリカのビジネスではよく「ASK(Attitude:態度、Skill:スキル、Knowledge:知識)」と言われますが、私はこの中で「知識(Knowledge)」が本当に重要な部分だと考えているんです。
知識がないから、自信が生まれない。自信がないから、行動に移せない。行動しないから、経験が積めない——。これが私の根幹にある考え方です。ですから、社員にそうした知識を学ぶ機会や場を与えることがすごく重要になってくるのです。ただ単に「リスキリング」という言葉だけで済ませられるものではありません。経営者や上司として、学びに向かう若い人たちの背中を押してあげること。それが今の僕の役割だと思っています。次世代に経験を積ませるための最短距離は「学び」だと信じているので、意欲ある若手は全力で後押ししていきたいですね。
■ 「私が一番失敗している。全部責任は取るから挑戦しろ」
🎤柴田: 若手からすると、「行動して失敗するのが怖い」「上司や経営陣に怒られるのではないか」と心配する人も多いと思います。具体的にはどのように背中を押していらっしゃるのでしょうか。
💡包行: 私自身が失敗ばかりですからね(笑)。アフリカに行って失敗しましたし、南米でもそこまで成功したわけではありません。結局、いろいろな経験をさせてもらい、社内で一番失敗しているのが私なんです。ですから若手には、「あまり気にするな。全部責任は取るから」と伝えています。
それに、今は就業期間が70歳、75歳と延びており、若手が上のポストに上がるチャンスがどんどん狭くなっています。そのチャンスを自ら掴み取るためにも、やはり「学び」が重要になります。 学ぶことに年齢は関係ありません。私のBBTの同期にも60歳で入学された方がいて、10年以上経った今でも連絡を取り合う仲です。思い立ったらいくつになっても学び直せるんです。
■ 「自分を信じてやりなさい」

🎤柴田: もしBBTに入学された2010年に戻れるとしたら、当時のご自身にどのような声を掛けますか?
💡包行: 私は元々経営の素養がなかったので、BBTの講義に触れること自体が毎日楽しくて、時間を忘れて視聴していました。ですから、「自分を信じてやりなさい」と声をかけたいですね。BBTに出会えたことで会社が変わり、今の実績に繋がっているので、あの時諦めずにやり遂げて本当に良かったと思っています。
■ 劇的な変化を迎える業界。今後の事業戦略は
🎤柴田: 最後に、事業戦略面では今後5年、10年とどのような戦略を考えていらっしゃいますか。
💡包行: 環境問題への対応などもあり、業界自体が今、劇的に変化しています。弊社のこれまでのものづくりはエンジンが主体でしたから、ガソリンや軽油を使用する点で、環境面への対応が急務となっています。今後のインフラが電動化へと向かう中、まさにESGの「E(環境)」が最大の課題です。
例えば、来年のカリフォルニア州では新規でエンジン車を販売できなくなります。このように激変していく世界の中で、我々がどう事業戦略を立てて入り込んでいくか。やはり市場の中心はアメリカになりますので、私自身、11月から毎月アメリカへ足を運んでいます。法規制を先取りし、世界で勝負していくために、すぐに行動に移して自社の事業環境をガラリと変えていく。これが今後の最も大きな戦略です。
🎤柴田: 地球規模の経営テーマを克服しなければグローバル競争には勝てないという、強い覚悟を感じました。ぜひこれからも突き進んでください。

■ 迷える社会人へ「学ぼうと思ったその瞬間がスタート」
🎤柴田: 最後に、「自分も学ばなきゃ」と思いつつ一歩を踏み出せずにいる、迷える社会人の方々へメッセージをお願いします。
💡包行: ズバリ、MBAは持っているといいですよ(笑)。「思い立ったらすぐ行動」というのが、BBTの基本的な学びの姿勢です。ですから、学ぼうと思ったらぜひ「今日」行動に移してほしいですね。
もちろん、費用や時間はかかりますが、それ以上に得られるもの、後から返ってくるものは莫大です。学ぼうと思ったその瞬間がスタートラインですので、ぜひ今日からスタートを切っていただきたいと思います。
🎤柴田: 力強いお言葉に、私も身が引き締まる思いです。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
💡包行: こちらこそ、ありがとうございました。
福岡県にある農機具製造・販売の株式会社筑水キャニコム代表取締役社長。
大学卒業後の2004年3月に同社に入社。2006年4月に営業本部マーケティング副本部長に就任した後、単身渡米。CANYCOM USAの社長としてアメリカの市場を開拓。2008年4月からグローバル・マーケティング本部長に就任し、国内外の営業を陣頭指揮。2009年6月取締役に就任。2015年1月から現職。
「ものづくりは演歌だ」の精神で「ビジョン300」(売上100億、取引100ヵ国、100年企業)を掲げ、“超一流のグローバル中小企業”を目指している。
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 経営学研究科 経営管理専攻に2010年4月入学、2012年3月修了。Forbes JAPAN主催のSMALL GIANTS AWARD 2022- 2023にて“グランプリ”を受賞。