BBT大学院修了後、欧州メーカーの執行役員・営業本部長を務める益山さん。技術系キャリアからはじまり、MBAを学び、執行役員として成果を出されるまでに試行錯誤の道のりがありました。益山さんは「経営者としてのアウトプットには『知る・やる・できる』の3段階がある」といいます。そんなお話をZoomで伺いました。

修了生プロフィール

益山 進さん
2012年ビジネス・ブレークスルー大学大学院(BBT大学院)修了。欧州メーカーの執行役員・営業本部長として産業機械のプロダクトマネジメント、マーケティング・営業の統括を担う。

マーケティング、プロダクトマネジメント、営業責任を負う執行役員としての業務

ーー今の仕事内容について教えてください。

現在、欧州系メーカーの執行役員・営業本部長を務めています。主に産業機械を日本で開発し、日本市場のみならず海外市場にも販売していくことを日本拠点で担当しているんですね。その開発の方向性、市場のニーズなどを考えながら営業活動に取り組む必要があります。

最前線の営業担当者、エージェントは日々競合他社と戦っています。中国メーカーと競合して、3分の1の価格を出されて負けてしまったとか、ドイツやフランス、デンマークなどの他社と競合していて、こういう点で競争力がないから困っているなど、現場からの要望や称賛の声に対して、じゃあこういう方向にしましょうと解決策を考える立場です。

当社にも商品ポートフォリオが存在しますが、市場ごとに売れる商品は違います。競争力は相対的な需給バランスで決まるので、陳腐化した技術であっても特定の領域で需要があることも少なくありません。たとえば、COVID-19が大流行したのでマスクが急にほしいというニーズがある場合、納期が最重要なのですぐに納めることができれば、競争力があるといえますよね。

このように、ある領域に対して競争力が持てることはなんなのかを考え、仲間たちと一緒に戦略を決めて戦う、ということを日々やっています。

わたしは営業責任を負っているので、受注金額を仲間と追いかけていくというのがひとつの仕事ですし、他にもマーケティング、プロダクトマネジメントも担当しています。

マーケティングでいえば、Webマーケティングでも取り組みがあります。コンテンツを制作し、YoutubeやLinkedinにアップしたりもしています。南米などの新興市場だと検索エンジン経由でお問い合わせを獲得することも多く、商談数を増やすという目的でWeb上でのプレゼンスを上げる試みに取り組んでいます。

PRに関しても、日本のみならずグローバルでもプレスリリースを配信しています。たとえば今年、世界初のディープラーニングを搭載した産業機械を開発した、というリリースを出しました。欧州でプレスリリースを出したところ、色々な国に拡散し、中国語の記事として中国でも話題になりました。

ーー市場ごとにプロダクトの競争優位を見出し、施策に落とし込んでいく、マーケティング施策も取り組まれているのは非常に高度な業務のように思います。

そんな凄いものでもないですよ。昔は色々手広く手掛けていたようなのですが失敗も多くしたので、一点集中しないとなかなか勝てないというだけです。

当社が開発・販売している産業機械は大量生産品と違い、開発に資金を投じすぎると回収が難しいんです。むやみやたらに広げすぎると、開発費だけで何億円もかかって、赤字を生んでしまうという魔のサイクルに陥ります。ですので、どの領域にコミットする、しない、というフィルタリング機能を毎週働かせています。

それにマーケティングといえばかっこいいのですが、様々なチャネルで情報提供をすることにより、お客様が用事を思いついたとき、心のなかに当社が思い浮かぶことを目的としています。聞いたことがあるな、そういえばあそこはこういうことをやっているよなと認知されることで、はじめてお客様の心の中に独自のポジショニングが取れるわけです。

ーーまさに経営者の視座のお話ですね、ありがとうございます。

経営の学びは「知る」が1割、「やる・できる」が9割

ーー執行役員として経営者の視座をもって業務に取り組まれていますが、どのように今の視座を得られるようになったのでしょうか?

わたしはもともと技術系のキャリアを歩んできたんですね。2012年時点では営業やマーケティングは一度もやったことがありませんでした。とはいえ今まで色々な経験をしてきたこともあり、2014年から営業を担当することになりました。その後、2017年からマーケティング、プロダクトマネジメントに携わっています。

ですので、経営、マーケティング領域の経験としてはMBAの古典的な「マーケティング・経営とは何か?」という学びを2012年にBBT大学院で学んだだけでした。実際にマーケティング責任者となって、実践の場に身をおいたときBBT大学院の同期である藤原さん(元・コメ兵執行役員 マーケティング統括部長)に「マーケティングを理解する30冊を教えてくれ」と頼み、紹介してもらい、改めて最新のマーケティング手法について勉強をしました。あとは今まで、実験し、検証するの繰り返しをして今に至ります。

ーーBBT大学院で学んだことは役に立ちましたか?

BBT大学院で経営の基本的なフレームワークや知識を学んだことはとても重要なことでした。土台がわからないと、最新のマーケティング手法についての30冊があっても理解ができません。

ただ、その後実践の場に直面すると、やったけどできなかった、という状況が起きるわけじゃないですか。経営者としてのアウトプットにおいて、「知る・やる・できる」という3段階があると思うんですね。やってみて、実際にできるというのは相当なステップが必要です。

ーーBBT大学院で学ばれたことで、その3段階において今に活きていることはありますか。

RTOCS(※注)は衝撃的でしたね。1週間で経営戦略のプランニングができるのか、自分が感じている時間の密度とは全然違うと衝撃を受けました。仕事のスピード感向上には相当つながったと思いますよ。多くのビジネスマンはRTOCSのような経営戦略のプランニングは1ヶ月くらいかけてやるようなものだと考える人が多いんじゃないでしょうか。でも、プランニングに1ヶ月かけるなんて長すぎる、1週間でも十分に長いと今では思います。

現場では1週間かけてなにかに取り組むと、色々な人との調整もあり結局1ヶ月くらいかかるんですよ。ということは、最初のアクションに1ヶ月もかけたら、1年、2年かかります。僕なんかはまだまだ遅いと思っているくらいです。経営戦略の立案は、いわばプランニングです。プランニングは最短で行い、実行以降に時間をかけるべきです。

本当に難しいのはプランを実行して、実際に成果を上げるということです。いくら良い戦略を練っても、実行できないと意味がないし、実行できても成果につながらないと意味がありません。プランニングが1割、実行以降が9割ですよね。その9割が一番難しく、失敗するステージだと思います。

話は逸れますが、BBT大学院で得た一番の財産はやはり藤原さんをはじめとする同級生でした。彼らを見ていると、うまくいっている人は圧倒的に実行しているんですね。実行している人と実行していない人との壁はものすごく厚くて、実行している人だけが成功に近づけるのだなといつも肝に銘じています。

戦略に限らず、何事も実行が大事だと思います。昨年末に簿記を学びはじめ簿記3級を取得したのですが、最初に問題に取り組んでみたら、仕訳が全然できなかったんです。BBT大学院で簿記の5要素とか仕訳の基礎を学んだのですが、「知る」に留まっていたんでしょう。

経営者の成果は、数字として賃借対照表と損益計算書に結果が出るじゃないですか。簿記的に意味のある行動をし、それが積み重なって成果に繋がります。これがまさに経営者の成果じゃないか、と腹落ちしました。なんでもっと早く簿記の勉強をやらなかったのかと反省しましたね。

ーーまさに実行してみてわかることが多いんですね。そんな実行家の益山さんにとって、実行してみての失敗事例はどのようなものがありましたか。

私の業界で儲けるためには、受注のたびに新しい図面を描かずに、過去の失敗を乗り越えた図面を繰り返し使うことです。その為には顧客の要望の共通項をまとめて、そのコアの部分の図面を繰り返し使えるような企画にしておくことで、顧客の個別の要求に応える余力を残して置く必要があったのですが、その共通項をまとめる事に時間を使わずに、技術チームに標準化をやるように働きかけ続けた事でした。

しかし、技術チームにはそれをする動機はなく、言い争いをして何年も遅れてしまい、競合に対する競争力を失い続けてしまいました。

結果的に一番顧客のことを知っている、営業チームが過去の納入事例や引き合いの要求の中から共通項を括り出すことで、事実上の標準化を進めることができたのですが、それを自分ごととして進められなかったことが、大きな失敗の一つだったと思います

編集者註
※「RTOCS(アールトックス)」:「Real Time Online Case Study」の略称で、BBT独自のケースメソッドです。答えの出ていない「現在進行形の企業課題」をケースとして扱い、当該企業に関する調査・分析・戦略考案を自ら実施します。大前研一学長の戦略系科目において、卒業までに2年間毎週1題=合計約100題を繰り返し行います。

社長をやらないとわからない世界がある。経営者ジャーニーは長い、時間をかけすぎてはいけない

ーーこの失敗体験から、やはり経営者としての当事者意識を学ばれたのでしょうか。

当事者という意味でいうと、社長の当事者意識を100だとしたら、No.2、No.3の当事者意識は10くらいだと思うんですよ。未だに社長との意識の差を感じますね。私が負う責任なんて、社長が負っている重荷に比べればまったく軽いです。そういうレベルなんですよ。

以前ビジョナリーホールディングスの星崎社長が「経営者として『流さないこと』が大事」だとおっしゃっていたんですね。まさにそれが経営者だと思いました。そういう意味では、失敗体験をしたとき、私は流してしまっていたんだなあと本当に思ったんですよね。

日々のルーティンのなかで、流さずにちゃんと止められるのがオーナー意識を持つ社長しか今のところはいないのかなと。やはり当事者意識において、10倍以上の差がついていると思います。

ーー経営者の道を歩まれている益山さんとしては、道は長い、ここまでやってまだ10だぞ、というご心境なのでしょうか。

そうですね。しかも、残り時間もそんなにありません。だから、時間をかけすぎちゃいけないんですよね、この経営者ジャーニーに。社長をやらなければダメだと思いますよ。

それに、どれだけ成果を出したとしても、結局は社長の成果ですからね、客観的に見たら。やっぱり100を背負っているから、10しか背負っていない者の成果になるわけがないんですよね。

ーー厳しいお言葉です。でも、たしかにそうなのかもしれません。

どういう規模の組織であれ、やっぱり1度、社長をやらないとわからない世界は必ずあるなと思います。

BBT大学院で学べることは、企業参謀を目指す上でのベーススキル

ーー経営人材になるというビジョンを持ち、BBT大学院をご検討されている方々に対してメッセージをいただけるとしたら、いかがでしょうか?

色々とお話しましたが、全員が経営者を目指す必要はないと思っています。学長の大前研一さんの著書に「企業参謀」があるように、まずは企業参謀を目指すのがいいのではないかと思います。今の私が担っているような、経営幹部、社長のブレーンとして動ける人物。企業参謀としてトップと一緒に戦略を考え、実行もともにやっていく人材を目指すであれば十分可能です。

そのためにまずは「知る・やる・できる」のうち、「知る」ことから始めるのが良いです。実際、当社でグローバルにビジネスをやっている者たちのなかに、BBT大学院で私が学んだことを全然知らないという人はあまりいないんですね。

たとえば、世界の拠点メンバーが集まる会議などで、海外の同僚と話ししていても、BBT大学院で学んだフレームワークがわかっている前提で話が進んでいくんですよ。パワーポイントの作り方ひとつをとってもそう。たとえばトップ・マネジメントにプレゼンするときに、何枚もスライドを使っていたら冗長すぎて、要するに何が言いたいんだと突っ込まれます。

ある程度以上のポジションについている方にとっては、MBAはベーススキルで、その上でなにか得意分野がある。そういう人が多いです。

ーー企業参謀になるために、まずはベーススキルを学べ。とても強いメッセージですね。まずは知る、そして早く戦場に行って、戦えと。

そうですね、戦っていないひとになにか言う資格はありませんから。


BBT大学院修了後、欧州メーカーの執行役員・営業本部長を務める益山さん。技術系キャリアからはじまり、MBAを学び、執行役員として成果を出されるまでに試行錯誤の道のりがありました。益山さんは「経営者としてのアウトプットには『知る・やる・できる』の3段階がある」といいます。そんなお話をZoomで伺いました。

修了生プロフィール

益山 進さん
2012年ビジネス・ブレークスルー大学大学院(BBT大学院)修了。欧州メーカーの執行役員・営業本部長として産業機械のプロダクトマネジメント、マーケティング・営業の統括を担う。

マーケティング、プロダクトマネジメント、営業責任を負う執行役員としての業務

ーー今の仕事内容について教えてください。

現在、欧州系メーカーの執行役員・営業本部長を務めています。主に産業機械を日本で開発し、日本市場のみならず海外市場にも販売していくことを日本拠点で担当しているんですね。その開発の方向性、市場のニーズなどを考えながら営業活動に取り組む必要があります。

最前線の営業担当者、エージェントは日々競合他社と戦っています。中国メーカーと競合して、3分の1の価格を出されて負けてしまったとか、ドイツやフランス、デンマークなどの他社と競合していて、こういう点で競争力がないから困っているなど、現場からの要望や称賛の声に対して、じゃあこういう方向にしましょうと解決策を考える立場です。

当社にも商品ポートフォリオが存在しますが、市場ごとに売れる商品は違います。競争力は相対的な需給バランスで決まるので、陳腐化した技術であっても特定の領域で需要があることも少なくありません。たとえば、COVID-19が大流行したのでマスクが急にほしいというニーズがある場合、納期が最重要なのですぐに納めることができれば、競争力があるといえますよね。

このように、ある領域に対して競争力が持てることはなんなのかを考え、仲間たちと一緒に戦略を決めて戦う、ということを日々やっています。

わたしは営業責任を負っているので、受注金額を仲間と追いかけていくというのがひとつの仕事ですし、他にもマーケティング、プロダクトマネジメントも担当しています。

マーケティングでいえば、Webマーケティングでも取り組みがあります。コンテンツを制作し、YoutubeやLinkedinにアップしたりもしています。南米などの新興市場だと検索エンジン経由でお問い合わせを獲得することも多く、商談数を増やすという目的でWeb上でのプレゼンスを上げる試みに取り組んでいます。

PRに関しても、日本のみならずグローバルでもプレスリリースを配信しています。たとえば今年、世界初のディープラーニングを搭載した産業機械を開発した、というリリースを出しました。欧州でプレスリリースを出したところ、色々な国に拡散し、中国語の記事として中国でも話題になりました。

ーー市場ごとにプロダクトの競争優位を見出し、施策に落とし込んでいく、マーケティング施策も取り組まれているのは非常に高度な業務のように思います。

そんな凄いものでもないですよ。昔は色々手広く手掛けていたようなのですが失敗も多くしたので、一点集中しないとなかなか勝てないというだけです。

当社が開発・販売している産業機械は大量生産品と違い、開発に資金を投じすぎると回収が難しいんです。むやみやたらに広げすぎると、開発費だけで何億円もかかって、赤字を生んでしまうという魔のサイクルに陥ります。ですので、どの領域にコミットする、しない、というフィルタリング機能を毎週働かせています。

それにマーケティングといえばかっこいいのですが、様々なチャネルで情報提供をすることにより、お客様が用事を思いついたとき、心のなかに当社が思い浮かぶことを目的としています。聞いたことがあるな、そういえばあそこはこういうことをやっているよなと認知されることで、はじめてお客様の心の中に独自のポジショニングが取れるわけです。

ーーまさに経営者の視座のお話ですね、ありがとうございます。

経営の学びは「知る」が1割、「やる・できる」が9割

ーー執行役員として経営者の視座をもって業務に取り組まれていますが、どのように今の視座を得られるようになったのでしょうか?

わたしはもともと技術系のキャリアを歩んできたんですね。2012年時点では営業やマーケティングは一度もやったことがありませんでした。とはいえ今まで色々な経験をしてきたこともあり、2014年から営業を担当することになりました。その後、2017年からマーケティング、プロダクトマネジメントに携わっています。

ですので、経営、マーケティング領域の経験としてはMBAの古典的な「マーケティング・経営とは何か?」という学びを2012年にBBT大学院で学んだだけでした。実際にマーケティング責任者となって、実践の場に身をおいたときBBT大学院の同期である藤原さん(元・コメ兵執行役員 マーケティング統括部長)に「マーケティングを理解する30冊を教えてくれ」と頼み、紹介してもらい、改めて最新のマーケティング手法について勉強をしました。あとは今まで、実験し、検証するの繰り返しをして今に至ります。

ーーBBT大学院で学んだことは役に立ちましたか?

BBT大学院で経営の基本的なフレームワークや知識を学んだことはとても重要なことでした。土台がわからないと、最新のマーケティング手法についての30冊があっても理解ができません。

ただ、その後実践の場に直面すると、やったけどできなかった、という状況が起きるわけじゃないですか。経営者としてのアウトプットにおいて、「知る・やる・できる」という3段階があると思うんですね。やってみて、実際にできるというのは相当なステップが必要です。

ーーBBT大学院で学ばれたことで、その3段階において今に活きていることはありますか。

RTOCS(※注)は衝撃的でしたね。1週間で経営戦略のプランニングができるのか、自分が感じている時間の密度とは全然違うと衝撃を受けました。仕事のスピード感向上には相当つながったと思いますよ。多くのビジネスマンはRTOCSのような経営戦略のプランニングは1ヶ月くらいかけてやるようなものだと考える人が多いんじゃないでしょうか。でも、プランニングに1ヶ月かけるなんて長すぎる、1週間でも十分に長いと今では思います。

現場では1週間かけてなにかに取り組むと、色々な人との調整もあり結局1ヶ月くらいかかるんですよ。ということは、最初のアクションに1ヶ月もかけたら、1年、2年かかります。僕なんかはまだまだ遅いと思っているくらいです。経営戦略の立案は、いわばプランニングです。プランニングは最短で行い、実行以降に時間をかけるべきです。

本当に難しいのはプランを実行して、実際に成果を上げるということです。いくら良い戦略を練っても、実行できないと意味がないし、実行できても成果につながらないと意味がありません。プランニングが1割、実行以降が9割ですよね。その9割が一番難しく、失敗するステージだと思います。

話は逸れますが、BBT大学院で得た一番の財産はやはり藤原さんをはじめとする同級生でした。彼らを見ていると、うまくいっている人は圧倒的に実行しているんですね。実行している人と実行していない人との壁はものすごく厚くて、実行している人だけが成功に近づけるのだなといつも肝に銘じています。

戦略に限らず、何事も実行が大事だと思います。昨年末に簿記を学びはじめ簿記3級を取得したのですが、最初に問題に取り組んでみたら、仕訳が全然できなかったんです。BBT大学院で簿記の5要素とか仕訳の基礎を学んだのですが、「知る」に留まっていたんでしょう。

経営者の成果は、数字として賃借対照表と損益計算書に結果が出るじゃないですか。簿記的に意味のある行動をし、それが積み重なって成果に繋がります。これがまさに経営者の成果じゃないか、と腹落ちしました。なんでもっと早く簿記の勉強をやらなかったのかと反省しましたね。

ーーまさに実行してみてわかることが多いんですね。そんな実行家の益山さんにとって、実行してみての失敗事例はどのようなものがありましたか。

私の業界で儲けるためには、受注のたびに新しい図面を描かずに、過去の失敗を乗り越えた図面を繰り返し使うことです。その為には顧客の要望の共通項をまとめて、そのコアの部分の図面を繰り返し使えるような企画にしておくことで、顧客の個別の要求に応える余力を残して置く必要があったのですが、その共通項をまとめる事に時間を使わずに、技術チームに標準化をやるように働きかけ続けた事でした。

しかし、技術チームにはそれをする動機はなく、言い争いをして何年も遅れてしまい、競合に対する競争力を失い続けてしまいました。

結果的に一番顧客のことを知っている、営業チームが過去の納入事例や引き合いの要求の中から共通項を括り出すことで、事実上の標準化を進めることができたのですが、それを自分ごととして進められなかったことが、大きな失敗の一つだったと思います

編集者註
※「RTOCS(アールトックス)」:「Real Time Online Case Study」の略称で、BBT独自のケースメソッドです。答えの出ていない「現在進行形の企業課題」をケースとして扱い、当該企業に関する調査・分析・戦略考案を自ら実施します。大前研一学長の戦略系科目において、卒業までに2年間毎週1題=合計約100題を繰り返し行います。

社長をやらないとわからない世界がある。経営者ジャーニーは長い、時間をかけすぎてはいけない

ーーこの失敗体験から、やはり経営者としての当事者意識を学ばれたのでしょうか。

当事者という意味でいうと、社長の当事者意識を100だとしたら、No.2、No.3の当事者意識は10くらいだと思うんですよ。未だに社長との意識の差を感じますね。私が負う責任なんて、社長が負っている重荷に比べればまったく軽いです。そういうレベルなんですよ。

以前ビジョナリーホールディングスの星崎社長が「経営者として『流さないこと』が大事」だとおっしゃっていたんですね。まさにそれが経営者だと思いました。そういう意味では、失敗体験をしたとき、私は流してしまっていたんだなあと本当に思ったんですよね。

日々のルーティンのなかで、流さずにちゃんと止められるのがオーナー意識を持つ社長しか今のところはいないのかなと。やはり当事者意識において、10倍以上の差がついていると思います。

ーー経営者の道を歩まれている益山さんとしては、道は長い、ここまでやってまだ10だぞ、というご心境なのでしょうか。

そうですね。しかも、残り時間もそんなにありません。だから、時間をかけすぎちゃいけないんですよね、この経営者ジャーニーに。社長をやらなければダメだと思いますよ。

それに、どれだけ成果を出したとしても、結局は社長の成果ですからね、客観的に見たら。やっぱり100を背負っているから、10しか背負っていない者の成果になるわけがないんですよね。

ーー厳しいお言葉です。でも、たしかにそうなのかもしれません。

どういう規模の組織であれ、やっぱり1度、社長をやらないとわからない世界は必ずあるなと思います。

BBT大学院で学べることは、企業参謀を目指す上でのベーススキル

ーー経営人材になるというビジョンを持ち、BBT大学院をご検討されている方々に対してメッセージをいただけるとしたら、いかがでしょうか?

色々とお話しましたが、全員が経営者を目指す必要はないと思っています。学長の大前研一さんの著書に「企業参謀」があるように、まずは企業参謀を目指すのがいいのではないかと思います。今の私が担っているような、経営幹部、社長のブレーンとして動ける人物。企業参謀としてトップと一緒に戦略を考え、実行もともにやっていく人材を目指すであれば十分可能です。

そのためにまずは「知る・やる・できる」のうち、「知る」ことから始めるのが良いです。実際、当社でグローバルにビジネスをやっている者たちのなかに、BBT大学院で私が学んだことを全然知らないという人はあまりいないんですね。

たとえば、世界の拠点メンバーが集まる会議などで、海外の同僚と話ししていても、BBT大学院で学んだフレームワークがわかっている前提で話が進んでいくんですよ。パワーポイントの作り方ひとつをとってもそう。たとえばトップ・マネジメントにプレゼンするときに、何枚もスライドを使っていたら冗長すぎて、要するに何が言いたいんだと突っ込まれます。

ある程度以上のポジションについている方にとっては、MBAはベーススキルで、その上でなにか得意分野がある。そういう人が多いです。

ーー企業参謀になるために、まずはベーススキルを学べ。とても強いメッセージですね。まずは知る、そして早く戦場に行って、戦えと。

そうですね、戦っていないひとになにか言う資格はありませんから。