業界ウォッチ 2021年11月16日

【データから読み解く】東南アジアのデジタル経済規模

今回は「東南アジアのデジタル経済規模」を取り上げてご紹介いたします。

前回、世界のICT普及状況から新興国での普及状況が高まっていることを確認しました。その中で、特に伸びが大きかったアジアのうち、東南アジアに注目してみます。

東南アジアでは、GrabやGoto(ゴジェックとトコペディアが経営統合)などのスーパーアプリを提供する企業がユニコーン企業として注目されています。こうした背景には、東南アジアに限った話ではありませんが、ICTが普及したことに加え、新型コロナの影響もあり、デジタルサービスを活用したライフスタイルに移行しているものと想定されます。

それでは、東南アジアの経済規模は各国でどの位の規模で、どのように伸びているのでしょうか。また、どのような分野で利用が伸びているのでしょうか。またデジタル金融サービスでは、どの分野がどのくらい伸びているのでしょうか。

先日、米グーグル、シンガポールの政府系投資会社テマセク、米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが共同で東南アジア(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国)のデジタル経済を調査したレポート「e-Conomy SEA 2021」が公表されましたので、これをもとに、実際に数字を確認したいと思います。

まず、東南アジアのデジタル経済規模を見てみます。デジタル経済規模の指標として、インターネット流通取引総額の規模を用いて、その推移を確認してみます。2019年は990億ドルでしたが、21年には1740億ドル、25年には3630億ドル、2030年には最大で約1兆ドル(9800億ドル)に達すると予想されています。

国別で見ると、インドネシアが最も大きく2030年で3300億ドル、次いでベトナム(2200億ドル、2030年)、タイ(1600億ドル、同)、フィリピン(1500億ドル、同)と続きます。

次に分野別のデジタル経済規模を見てみます。最も大きいのはECで2019年は380億ドルでしたが、2025年には2340億ドルに拡大することが予想されています。次いで大きい分野はオンライン旅行ですが、19年は340億ドルでしたが、新型コロナの影響で20年に120億ドル、21年に130億ドルと落ち込みますが、25年には430億ドルにまで拡大することが予想されています。オンラインメディア、交通・フード分野は19年から増加トレンドで、25年にはそれぞれ430億ドル、420億ドルへと拡大することが予想されています。

次に金融サービスの分野別市場規模推移を見てみます。最も大きいのはデジタル決済で19年の5970億ドルから25年に1兆1690億ドルにまで拡大することが予想されています。次いで大きいのが融資・ローン(19年:230億ドル~25年:1160億ドル)で、さらに投資(19年:100億ドル~25年920億ドル)、送金(19年:110億ドル~25年330億ドル)、保険(19年:15億ドル~25年90億ドル)と続きます。

こうしてみると、国別、分野別、デジタル金融サービスのいずれの数字で見ても、東南アジアのデジタル経済規模は今後、2025年、2030年にかけて大きく伸びることが分かります。

国別では、やはり人口規模の大きいインドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンといった国のデジタル経済規模が大きいことが分かります。分野別では、ECが突出して大きいことが分かります。デジタル金融サービスでは、デジタル決済が突出して大きいことが分かります。

東南アジアは、人口規模が大きいことに加え、スマホを中心としたICTツールが普及したことによって、経済のデジタル化が急激に拡大していることが良く分かります。

また、所得が向上していくと、同じデジタルサービスでも、消費支出にかかわる分野だけでなく、デジタル金融サービスの需要が高まることも良く分かります。

このように、東南アジアの所得向上速度に、デジタル化の進展速度が掛け合わさることで、デジタル経済の加速度合いが増していくことが想定されます。東南アジアのデジタル経済化は、事業機会でもあり、投資機会であるとも言えそうですね。

出典:”e-Conomy SEA 2021” Google, TEMASEK, Bain&Company (November 10, 2021)
https://economysea.withgoogle.com/
https://services.google.com/fh/files/misc/e_conomy_sea_2021_report.pdf