業界ウォッチ 2022年1月11日

【データから読み解く】世界のデジタルヘルススタートアップ投資動向

今回は「世界のデジタルヘルススタートアップ投資動向」を取り上げてご紹介いたします。

2022年に入り、国内でも新型コロナウイルス・オミクロン株の感染者が増えてきました。国内で最初に新型コロナ感染者が確認されて、2年近く経とうとしていますが、変異株が広まり、未だ収束の時期が見通しにくい状況となっています。海外では、日本よりも感染者拡大規模が大きい状況となっています。

こうした状況下で、世界でヘルスケア関連のスタートアップへの投資が伸びているようです。バイオテクノロジー等のスタートアップもありますが、コロナ禍でヘルスケア・医療領域のデジタル化が進んでおり、とりわけデジタルヘルス領域のスタートアップへの投資が増えているようです。

それでは、どの位デジタルヘルス関連のスタートアップ投資が伸びているのでしょうか。デジタルヘルス関連のユニコーン企業数はどのように伸びているのでしょうか。また、デジタルヘルス関連の中でも、どういう分野・カテゴリーへの投資が大きいのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

世界のデジタルヘルススタートアップ投資動向

 まず、デジタルヘルス関連スタートアップの資金調達額の推移を見てみます。2015年は104億ドルでしたが、そこから増加トレンドで18年には約250億ドルに達します。19年に206億ドルと一度落ち込みます。新型コロナの感染拡大が始まった20年に311億ドルと再び拡大し21年には約570億ドルに達すると推計されています。21年の第三四半期(Q3)時点で約400億ドルと20年通年を超える規模となっています。

世界のデジタルヘルス関連のユニコーン企業数を見てみると、2015年第一四半期(Q1)では5社でしたが、16年Q1に15社と3倍にまで増加しています。そこから一度横ばいになりますが、17年Q2(22社)から再び増加に転じ、20年Q1(52社)まで増加トレンドとなっています。20年に入り、しばらくは世界でパンデミックによる都市封鎖などの影響もあり経済活動が停滞したこともあり20年Q1~20年Q3まで横這いとなりますが、20年Q4から増加ペースが拡大し、21年Q3時点では75社となっています。デジタルヘルスケア関連ユニコーン企業数が5年前の5倍にまで拡大したことになります。

次に、デジタルヘルス関連スタートアップの中で、どういう分野・カテゴリーの資金調達額が大きいのか見てみます。

CB Insightsの「Digital Health 150(2021)」に掲載されているスタートアップをカテゴリー別に資金調達額を集計してみると、最も大きかったのは「バーチャル&対面ケア」で約21億ドルとなっています。次いで「バーチャルケア」(17億ドル)、「コンピュータ支援画像」(約15億ドル)、「ワークフローのデジタル化・自動化」(13.6億ドル)、「スクリーニング、モニタリング、診断」(約12億ドル)と続きます。

ちなみに、図表には示してありませんが、国別で見ると最も大きいのは、やはり米国で約14兆ドルとなっています。次いで大きいのは英国(約4900億ドル)で、以降中国(約3700億ドル)、アイルランド(約2600億ドル)、インド(約2100億ドル)と続きます。まさに米国は桁違いの大きさになっています。また、2021年の同デジタルヘルス関連スタートアップ150社のリストには日本企業は入っていませんでした。

こうしてみると、パンデミック以前からデジタルヘルス領域のスタートアップ投資が伸びていたものの、コロナ禍以降に投資(資金調達)の伸びが大きくなったことが良く分かります。同じデジタルヘルス関連カテゴリーの中でも、やはり新型コロナの影響もあり、「バーチャルケア」、「バーチャル&対面ケア」カテゴリーのスタートアップの資金調達額が大きくなっていることが特徴的だと言えます。

また、デジタルヘルスのカテゴリー別資金調達額を見ると、医療行為そのものに関するデジタル化だけでなく、ワークフローのデジタル化・自動化や、アプリ開発、データ統合・分析、ナビゲーションといった、いわゆる医療ヘルスケア以外でも取り入れられるようなデジタル・トランスフォーメーション関連のカテゴリーも多いことが分かります。

ヘルスケア・医療領域というと参入ハードルが高い印象がありますが、業務プロセスのDXという観点考えると、ヘルスケア・医療のど真ん中でなくとも関わることが出来るため、異業種からの参入機会も十分にありそうですね。

出典:
CB Insights, “State Of Venture Q3’21 Report”

CB Insights, “The Digital Health 150: The Top Digital Health Companies Of 2021”

The Economist, “How health care is turning into a consumer product” Jan 9th 2022