業界ウォッチ 2022年1月25日

【データから読み解く】マイクロソフトによるゲーム会社買収

今回は「マイクロソフトによるゲーム会社買収」を取り上げてご紹介いたします。

2022年に入り、ゲーム業界で大型買収が話題となっています。先日(1月18日)、米マイクロソフトが米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表しました。マイクロソフトにとって過去最大規模の買収となるそうです。

1月10日に米国で別の大型買収(米テイクツー・インタラクティブ・ソフトウェアによる米ジンガの買収)があり、総額127億ドル(約1兆4600億円)と、その時点ではゲーム業界で最大のM&Aとされていました。今回の米マイクロソフトによるゲーム会社の買収は、それを大きく上回る規模となっています。

マイクロソフトが有力ゲームを取り込むことで、ゲーム機、PC、クラウド、スマホ等にまたがってゲーム事業を拡大するものと見られています。さらに、「仮想空間・メタバース」の普及を見据えた投資であるとも見られています。

それでは、今回のマイクロソフトの買収は、過去のマイクロソフトの買収案件とどのくらいの規模の違いがあるのでしょうか。買収することによって、ゲーム業界の中でどのくらいの売上規模になるのでしょうか。また、買収先のアクティビジョン・ブリザードの業績(売り絵が)はどのように推移しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

マイクロソフトのゲーム会社買収

まず、マイクロソフトのこれまでの主な買収案件と、買収額規模を見てみます。最も大きいのは、今回のアクティビジョン・ブリザードの買収(687億ドル)となっています。次いで大きい案件がリンクトイン(2016年、262億ドル)で、以下ニュアンス(2021年、197億ドル)、スカイプ(2011年、85億ドル)と続きます。

次に、世界のゲームソフト関連事業の売上規模(2021年Q2)で比較してみます。最も大きいのは中国テンセントで79.3億ドルとなっています。次いでソニーグループで41.5億ドルとなっており、以降アップル(36億ドル)、マイクロソフト(29.2)億ドル、グーグル(27.5億ドル)と続きます。アクティビジョン・ブリザードは21.6億ドルと全体の7位に位置付けています。マイクロソフトとアクティビジョン・ブリザードを単純に合計すると、50.8億ドルとなり、ソニーを抜いて世界2位となります。

さらに、アクティビジョン・ブリザード社の売上推移を見てみます。現時点で21年Q3の売上高が直近の数値となっているため、各年のQ1-3期の合計数値の推移を見てみます。08年は13.9億ドルで、11年(33.5億ドル)まで増加トレンドとなっています。以降14年(28.3億ドル)まで減少トレンドとなりますが、15年から18年(51.2)にかけて再び増加トレンドとなっています。19年に一度落ち込みますが、新型コロナ感染拡大が始まった20年から21年(66.4億ドル)にかけて増加トレンドとなっています。

こうしてみると、マイクロソフトがゲーム事業に対して大きな期待をしていることが分かります。単純にゲームソフト事業としても、世界2-3位の水準に達することとなり、新型コロナ以降大きく成長しているゲーム会社を買収していることが分かります。

しかも、買収金額の大きさからすると、2番目に大きかったリンクトインの2.6倍規模の買収となっています。

マイクロソフトは、ゲーム機のXboxの他、ホロレンズなどのVR関連事業にも取り組んでおり、AI、音声認識などの要素技術を多数持っています。こうした要素技術や、既存事業・顧客基盤などを活用して、最近話題となっている「メタバース」事業を強化していく方向を考えていることは、容易に想像できます。

ゲームソフトビジネス上位企業を見ると、テンセントがトップとなっていますが、今後、中国本土のゲーム規制がどう影響するのか、アップル、グーグルなどの大手が、ゲーム事業に対してどう動くのか、その中でソニー、任天堂などの日本のゲーム会社が同対抗していくのか、注視していく必要がありそうです。

また、米テイクツー・インタラクティブ・ソフトウェアによる米ジンガの買収のように、10位以降のゲームソフト会社の統合が起きるのかどうか、その中でサイバーエージェント、スクウェア・エニックスなどのゲーム会社がどうなるのか、どうするべきなのか、今後の再編の可能性を見据えた動きを考えておく必要がありそうですね。

出典:
Newzoo, “Top 25 Public Companies by Game Revenues”

ACTIVISION BLIZZARD ANNOUNCES THIRD-QUARTER 2021 FINANCIAL RESULTS