業界ウォッチ 2025年10月21日

【データから読み解く】世界の留学生移動

今回は「世界の留学生移動」を取り上げてご紹介いたします。

前回は、主要国の人口増減率から、社会増減率(移民による増減率)の動きを見てみました。今回は、移民にカウントされる人数のうち「留学生」の動向を見てみたいと思います。
留学生という点では、トランプ大統領が米国の名門ハーバード大学に対し、留学生の受け入れ資格を停止すると通達したことで、大きな問題として報道がされました。

ハーバード大学に限らず、米国の大学は世界中から数多くの留学生を受け入れてきました。米国への留学生としては、中国やインドなどのアジアから数多く留学しているとの話を聞きます。日本にとっても米国は、留学先の候補として最初にあげられる国だと思います。米国以外にも人気の高い留学先として挙がるのは、カナダ、オーストラリアなどがあげられると思います。

それでは世界的に見て、留学生数はどのくらいの規模で、どのように推移しているのでしょうか。留学生は増えているのでしょうか。また、留学生を多く送り出している(アウトバウンド)国はどの国で、どのくらいの規模で留学生を送り出しているのでしょうか。留学生を受け入れている国でみると、どの国が多くの留学生を受け入れているのでしょうか。受け入れている留学生数は、どのくらいの規模なのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
foreign students

まず、世界の留学生数の推移を見てみます。

2000年は211万人でしたが、そこから増加トレンドで2020年に657万人となっています。翌2021年は644万人と新型コロナの影響で、一旦落込みますが、以降は再び増加トレンドとなり、2023年は729万となっています。

そのうち、OECD加盟国へと留学した留学生数の推移を見てみます。2000年は74.2%でしたが、しばらく2007年まで横ばい傾向でしたが、2008年71.7%と大きく落ち込み、以降は概ね低下トレンドとなっています。2023年は若干上昇し68.5%となっています。

次に、国別の留学生アウトバウンド(送り出し)数を、2023年時点のデータで見てみます。最も多いのは中国で107.6万人となっています。次いで多いのはインドで83.4万人となっています。以降、ナイジェリア(14.6万人)、ドイツ(12.8万人)、ベトナム(12.8万人)、ウズベキスタン(12.1万人)、米国(11.8万人)と続きます。図を見て分かるように、中国・インドと、3位(ナイジェリア)以下の国とで、留学生アウトバウンド数に大きな差があることが分かります。

次に、国別の留学生インバウンド数(2023年)を見てみてみます。最も多いのは米国で95.7万人となっています。次いで多いのが英国で、74.8万人となっています。以降は、オーストラリア(46.7万人)、ドイツ(42.3万人)、カナダ(38.9万人)、ロシア(33.6万人)と続きます。図を見て分かるように、留学生インバウンド数は、留学生アウトバウンドのような極端な違いがなく、なだらかになっていることが分かります。

こうしてみると、世界的に留学生数が増えており、OECD諸国への留学生数も増加していることが分かります。一方、OECD諸国向けの留学生の割合が低下トレンドにあることから、OECD諸国以外の国への留学も増えていることが分かります。

また、インバウンド数の上位国を見ると、ロシア、UAE、中国、アルゼンチン、マレーシアなど、OECD非加盟国がランク入りしていることが分かります。

留学受け入れ(インバウンド)が多い国は、その国の大学等が世界的にも高水準の大学であり、世界の学生がその国の大学等に行きたいと思っている国であると言えます。
米国、英国、オーストラリア、カナダなどは英語圏でもあり、大学の水準も高いため、留学生インバウンドの数が多くなっていると言えます。

非OECD加盟国への留学生が増えているのは、世界的に留学生数自体が多くなっており、OECD非加盟国の国々にも留学生が回るようになっていることが要因として考えられます。また、非OECD加盟国自体の大学等の水準も上昇し、世界の他の国々からも、ロシア、UAE、中国、アルゼンチン、マレーシアといった国々に留学すると、その先の就職などに有利になることから増えているものと考えられます。

日本は、現在留学生を増やすべく政府も目標を立てているようですが、簡単に大学に入れるようにして安易に留学生を増やすのではなく、日本の大学等の魅力を高めたうえで、世界の学生が日本に留学したいと思ってもらえるような方向に取組んでもらいたいですね。

資料:
* UNESCO Institute for Statistics (UIS) – Education
* UNESCO Institute for Statistics (UIS) – International mobile students