業界ウォッチ 2025年12月2日

【データから読み解く】主要国GDPと一人当たりGDP

今回は「主要国GDP・一人当たりGDP」を取り上げてご紹介いたします。

国際通貨基金(IMF)が10月14日に発表した推計によると、2026年にはインドに抜かれ、日本は世界第5位に後退する見通しとなっています。2026年の日本の名目GDPは4兆4636億ドルと予測されていますが、高成長が続くインドは4兆5056億ドルとなり、日本を上回るとされています。また、日本のGDPは、既に2023年にはドイツに抜かれ、世界第3位から第4位へと転落しています。来年2026年にインドに抜かれると、世界第5位へとさらに順位を落とすことになります。

それでは世界の主要国のGDPは、どのように推移しているのでしょうか。その中で日本のGDPはどのくらいの規模感で、どのように推移しているのでしょうか。2030年までの予測では、日本はさらに順位を下げることがあるのでしょうか。

また、一人当たりGDPでみると、GDP規模上位の国と比べると、日本の一人当たりGDPはどの位の水準なのでしょうか。他の主要国と比べるとどのような違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
gdp per capita

まず、GDP規模上位国の、GDPの推移を見てみます。2030年(予測)時点でGDP規模が最も大きいのは米国となっています。米国は、2000年は10.3兆ドルでしたが、そこから拡大トレンドで2025年には30.6兆ドル、2030年には36.8兆ドルに拡大することが予想されています。次いで大きいのは中国で、2000年は1.2兆ドルでしたが、以降拡大トレンドで2010年には6.1兆ドルと日本のGDP(5.8兆ドル、2010年)を超え、2025年に19.4兆ドル、2030年には26.3兆ドルへと拡大することが予想されています。

インドは、2030年には、米中に次いで3番目のGDP規模(6.6兆ドル)となっています。2000年は4684億ドルでしたが、以降拡大トレンドとなり、2026年には4兆5056億ドルと日本のGDP(4兆4636億ドル)を上回ります。2029年には、約6兆ドルとドイツのGDP(5.8兆ドル)を上回る見通しとなっています。

ドイツは、2030年にはインドに次いで世界4位の6兆ドルとなる見通しです。2000年は約2兆ドルでしたが、以降緩やかな拡大トレンドとなっており、2023年に4.6兆ドルと日本(4.2兆ドル)を上回り世界3位の規模となります。2029年にインドに抜かれ世界4位となる見通しです。

英国は、2000年は1.7兆ドルでしたが、2007年(3.1兆ドル)まで拡大トレンドとなっています。以降拡大・縮小を繰り返しながら、2022年頃までほぼ横ばいトレンドが続きますが、以降は再び拡大トレンドとなり、2030年に5.2兆ドルと日本の5.1兆ドルを抜いて世界5位となる見通しとなっています。

次に、一人当たりGDPの推移を見てみます。2030年時点で最も高いのは米国で10.6万ドルとなる見通しです。米国は2000年からほぼ一貫して増加トレンドとなっています。2030時点で米国に次いで高いのは英国です。2005年から2023年にかけて、ほぼ4万ドル代で増減しながらほぼ横ばいでしたが、2023年以降は増加トレンドとなり、2030年には7.23万ドルとなっています。2030年時点で英国に次いで高いのはドイツで、英国同様2005年から2020年頃まで4万ドル台で増減しながらほぼ横ばいでしたが、2020年以降は増加トレンドとなります。2029年までは英国を上回っていましたが、翌2030年に英国に抜かれています。

日本の一人当たりGDPは、2012年ごろまでは4万ドル前後で、米国、英国、ドイツと大きな差はありませんでしたが、2013年以降は減少傾向となります。2024年に3.2万ドルにまで落ち込みますが、以降は増加トレンドに転じ2030年は4.3万ドルとなっています。

こうしてみると、日本のGDP規模は、人口規模の大きい中国・インドに抜かれるだけでなく、日本よりも人口規模の小さいドイツだけでなく、英国にも抜かれる見通しとなっていることが分かります。また、一人当たりGDPでみると、同じ先進国であるドイツ・英国と比べると、2010年代以降、増加し続けたドイツ・英国に対し、日本は減少トレンドにあったため、ドイツ・英国と大きな差がついていることが分かります。

かつて世界第2位の経済大国であった日本のGDPですが、円安へと転換した2012年ごろから、成長し続ける主要国にGDP規模で抜かれ、一人当たりGDPでは、他の先進主要国と差が大きく開いています。

人口規模の大きな拡大見込みが小さい日本は、生産性を高めるなどして一人当たりGDPを高めるための施策に真剣に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。

資料:
IMF October 2025, the World Economic Outlook database