業界ウォッチ 2026年1月13日

【データから読み解く】世界のロボット市場規模

今回は『世界のロボット市場規模』を取り上げてご紹介します。

生成AI(Generative AI)の衝撃が世界を駆け巡って数年、次なるテクノロジートレンドとして「Physical AI(フィジカルAI)」への注目が急速に高まっています。これは、AIがデジタル空間を飛び出し、物理的な身体性を持って現実世界に作用することを意味します。

今年1月6日から米国で開催されたCES 2026では「フィジカルAI(Physical AI)」が大きなテーマになりました。半導体・自動車・IT各社がロボティクス領域に資源を寄せています。たとえばArmは「Physical AI」部門を新設し、ロボット×自動車を成長領域として前面に出しました。

少子高齢化と労働力不足が深刻化する先進国において、ロボットは単なる「工場の自動化機械」から、人々の生活や業務を支える「パートナー」へと役割を変えつつあります。

それでは、世界的に見てロボットの市場規模はどのように推移しているのでしょうか。産業用ロボット、サービスロボットなど用途別で、どのような違いがあるのでしょうか。また、サービスロボットの中でも、分野別に大きい用途はどの用途なのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
Global robot market

まず、世界のロボット市場の推移を見てみます。ロボット市場全体(産業用+サービス)は2016年247.6億ドルから2029年730.1億ドルへ拡大しています。単純な規模拡大以上に重要なのは、内訳の変化です。2016年時点ではサービスロボットが市場の約59%でしたが、2029年には約84%まで上昇します。これはロボット市場の重心がサービスロボット側へ移行していることを意味しています。

産業用ロボットは2016年101.3億ドルから2020年に81.1億ドルまでいったん落ち込み、その後は持ち直して2029年113.9億ドルへ緩やかに増えます。2020年前後の一時的な谷は、設備投資サイクルや景気要因の影響を受けやすい産業用の性格を示唆します。一方で、サービスロボットは2016年146.3億ドルから、2020年234.0億ドル、2025年405.8億ドル、2029年616.2億ドルと、トレンドとしては一貫して上向きです。

次に「サービス」の中身を見ます。商業用サービスロボット(農業・物流・医療・その他)は2016年7.87→2029年32.93と約4倍強に拡大します。注目は医療領域で、2016年38.3億ドル→2029年210.9億ドルと、絶対額でも伸びが大きく、商業用サービス内の構成比も約49%→約64%へ上昇します。高齢化・医療人材不足・ケア需要の増加といった構造要因に、センサー・認識AI・操作支援などの技術進展が重なると読み取れます。物流サービスロボットは、2016年15.9億ドルから伸びつつも、2020年に14.7億ドルといったん低下した後、2029年32.9億ドルへ回復・拡大します。Eコマース拡大や倉庫自動化の潮流は強い一方で、景気・投資タイミングの影響を受け得ることも示しています。農業は2016年9.2億ドル→2029年22.6億ドルと伸びますが、商業用内での比率は相対的に低下します。

消費者向けサービスロボット(家庭用・エンタメ)も構造変化が見えます。合計は2016年67.6億ドル→2029年287億ドルへ拡大しますが、牽引役は家庭用です。家庭用は2016年41.9億ドル→2029年235.1億ドルと大きく伸び、消費者向け内の比率も約62%→約82%へ上昇します。エンタメは2016年25.7億ドル→2029年51.9億ドルと増えるものの、相対的には家庭用ほどの伸びではありません。ここからは、「人型ロボット」など話題性の高い領域だけでなく、実際の市場拡大は“生活・ケア・家事支援”側に厚みが出てくる可能性が高い、と考えられます。

こうして見ると、産業用ロボットの停滞とサービスロボットの躍進は、求められる価値の変化を意味します。これまでの「決まった作業を高速でこなす(自動化)」ニーズは飽和しつつあります。代わって、医療や家庭といった「不確実な環境で人間を支援する(拡張・共生)」能力に価値が移っています。「医療用」と「家庭用」の突出した伸びは、高齢化社会というマクロトレンドと直結しています。ここに、昨今のAIブームが重なります。高度な頭脳(AI)を持ったロボットが、介護や家事といった複雑なタスクをこなす「Physical AI」市場は、今後最も有望な投資領域の一つといえそうです。

特に、日本の得意とするハード技術(センサー、アクチュエーター)と、最新のAIモデルを統合できる企業には、グローバルな勝機がありそうです。産業用ロボットで高いシェアを持つ日本企業ですが、市場データを見る限り、産業用だけに固執するのはリスクと言えそうです。成長著しいサービスロボット、特に医療や生活支援分野へ技術転用を進めることが急務で、成熟した産業用ロボットの技術資産を、いかに成長市場であるサービス分野へブリッジできるかが、重要になるものと考えられます。

資料:
Statista
Revenue in the robotics market for different segments worldwide from 2016 to 2029
Revenue in the commercial service robotics market worldwide from 2016 to 2029, by segment
Revenue in the consumer service robot market worldwide from 2016 to 2029, by segment