業界ウォッチ 2018年7月9日

教員のちょっと気になる「食肉の一人当たり消費量」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「食肉の一人当たり消費量」を取り上げてご紹介いたします。

しばらく前から、毎月29日は「肉の日」などと言われ、恋愛に消極的な男子を意味する「草食系男子」に対する「肉食系女子」という用語が、本当に肉を食べる「肉食」の意味で使われるなど、「肉」への関心が高まってきています。この数年で、「熟成肉ブーム」や、野生肉を食する「ジビエブーム」なども話題になっています。

それでは、日本人は本当に肉をたくさん食べるようになったといえるのでしょうか。食べている肉は、牛肉でしょうか、豚肉でしょうか、鶏肉でしょうか、それともほかの肉でしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

農林水産省の食糧需給表では、国民一人当たりの消費量を食品品目ごとに確認することが出来ます。ここでは、1960年から同統計で最新の2016年までの数字で確認してみたいと思います。

肉類の一人当たり消費量は、1960年に5.2kgでしたが、1995年に28.5kgとほぼ一貫して増加トレンド出来ましたが、そこからしばらく28kg前後で横這いとなり、2010年からまた緩やかに増加トレンドとなっています。2016年には31.6kgと過去最高となっています。

参考までに、魚介類の一人当たり消費を見てみると、1960年に27.8kgで、増減を繰り返しながら緩やかに増加トレンドを示し、2001年に40.2kgとピークを示します。そこからは減少傾向となり、2011年に28.5kgと肉類に逆転され、2016年には24.6kgと統計期間内で最も少ない消費量となっています。

このように、魚介類と対比すると、明確に肉中心の食事に代わってきていることが分かります。

それでは、肉類の中でも、どの種類の食肉消費が多いのか見てみたいと思います。

牛肉の一人当たり消費量は、1960年に1.1kgで増加トレンドを続け、1995年に7.5kgとなり2000年の7.6kgまでほぼ横這いとなります。2000年をピークに、減少トレンドとなり、BSE(牛海綿状脳症)問題もあって2006年の5.5kgまで落ち込みますが、そこからほぼ横ばい~微増となり、2016年には6kgとなっています。

豚肉消費は、1960年は1.1kgでしたが、1979年の9.6kgまで急増します。そこから増加トレンドが緩やかになり2016年には12.4kgと過去最大の消費となっています。

鶏肉消費は、1960年は0.8kgと豚肉よりも少ないものの、1984年の8.9kgまで急増しています。そこから増加トレンドが緩やかになり、90年代後半から2000年ごろまで10kgを超えていましたが、2004年には鳥インフルエンザ問題で一時9.8kgに落ち込みます。ですが、それ以降は増加傾向が加速しており、2012年に12kgと豚肉消費を上回り、2016年に13kgと過去最高を記録しています。

このように、最近の数年の鶏肉消費の増加ペースが加速していることが分かります。

確かに、肉食ブームとは言っても、ヘルシー志向の人も多く、コンビニの「サラダチキン」などヒット商品も生まれています。低カロリー、高たんぱくということで、女性や中高年にも人気があるといわれています。また、筋トレなどで筋肉をつけたい人にも、鶏「むね肉」や「ささみ」など脂質の少ない部位の人気が高まっているようです。

「肉ブーム」というと、つい「牛肉」をイメージしてしまいますが、の実際の消費量で見ると「鶏肉」が最も多いということが分かります。

たまに外食などでガッツリ食べる時は牛肉で、普段はヘルシーに鶏肉ということなのかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)